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89.負けないからっ!



 つむぎ:『ねえ……。どっちなの?』


 翔:『えっ……? えっと……。』

 

 (俺は…… )



[つむぎさんにも渡す]

[渡さない。まどか一点張りで]



 「かぁ〜っ! 悩ましいなぁもう! ここでつむぎ姉さんにもホワイトデー渡しちゃっても、ただのお返しとして勘違いはされないと思うよ? むしろまどかちゃんとの事をフォローしてくれる強力な味方になってくれると思う! 思うけどしかし、ただまどかちゃんにこの事を知られたら、変な誤解を生まないかって所が心配だし……。いや、待てよ? そもそもつむぎ姉さんに渡したとしても、もしまどかルートに協力してくれなかったらどうすんの……? ああ……ここにきて俺の優柔不断さがまた……みんなごめん、もうちょっと待ってくれっ」



 悟のチャンネルは少しずつではあるが着々と登録者が増えており、最近はライブ中継での配信も増えてきた。おかげで視聴者とのやりとりも増えてきた。



 Ajo:つむさんにも渡しときな

 

 たろちん:ここはまどか一択でしょ〜っ


 g@ldess:久しぶりに選択肢で悩んでおるな 見物だぞ 期待してる


 Ricolico:さと寸さん、まどっちにフラれても平気 アタシがひろったげる



 沢山の、時には読み切れないコメントが来て、悟のチャンネルはますますの盛り上がりを見せている。



 「さと寸さんは……きっとこっちかな」



「この場合、どっちも真っ当な意見があるよな。うん、だから選択肢なんだけどね。とにかく……まどか一点張りは変わらないし、ここはひょっとしたらのつむ姉さんをアテにして逆に状況がややこしくなってしまうより、少々厳しくてもまどかちゃんだけに渡して自力で攻略するか。よし! 決めた! つむ姉さんには渡さず、まどか一点張りで!」



 Dearpon:おおっ!? いきますか!


 Morimori:あら つむ姉かわいそ


 paopanpding:いっけ いっけ


 tpmgdkaw:そうきたか



 「ああ。やっぱりそうよね。何となくだけど……さと寸さんの真摯さが伝わるわ」



 ルルーラ美少女図鑑のパトロールの合間、悟の配信に参加する美優。以前はちょくちょく配信にコメントを入れていたのだが、最近は視聴者も増え、リアルタイムで読まれない事もあり、配信後はコメントのチェックをしているかも知れないが何となく躊躇してしまいコメントを控えていた。


 最近は悟の動画の配信ペースが上がり、加えて最近始まった生配信をリアルタイムで見たいのもあり、そして自身のルルーラを管理しなければいけない為、もうゆっくり過去の動画を見る暇もなく、ある意味美優は悟のチャンネルベースの生活を送っていた。



 悟メインの日々。



 どうしてこうもこのロリータ美少女はこんなにも悟に惹かれているのだろうか。

 



 最近、悟の動画を見ている間は他の事が手につかない。勉強も家の事もルルーラも、新しい美少女を探し出す作業も全てストップし、いわゆる垂れ流しで見るという事はしない。



 いつ、どこで、悟攻略のヒントが隠されているかわからないからだ。 



 悟の恋愛に対する考え、趣味嗜好、どんな女の子が好きなのか、悟のふとした美少女に対するリアクションやアプローチの仕方を観察する事で、少しでも悟の事を知れるかもしれない。始めは楽しんで見ていた動画もいつからか、そんな姿勢で動画を見るようになっていた。何か、なにか悟攻略のヒントがないか、美優は食い入るようにパソコンの画面を見つめる。



 翔:『ありがとう。つむぎさん。でも……俺はやっぱりまどかちゃんだけを見ていたいんです。ごめんなさい』



「……さあ! どうでる? つむぎ姉さん!」



 つむぎ:『あら、そう……。まあ、私もあれは本命じゃなかったし、ただの気まぐれでもあったから。うふっ。ごめんなさいね、2人の恋路の邪魔しちゃって。もう横からチャチャを入れないようにするから。頑張って』



「うっ……。わかってはいたが、何かちょっと……切ない。本命じゃなかったってちょっと言い訳くさくない? いやいや、うぬぼれるな、俺。……しかしやっぱ協力はしてくれないか〜っ。まあ、このまま突っ走るしかないか」



 美優は悟の様子を観察しながらも、チャット画面の方もあわせてチェックしていたところ、



Kimera@224:さと寸さん、チャンネルバナーとアイコン変えました? すっげーいい



 「えっ ー ?」



「そうなんだよ。気付いてくれてありがとっ! めっちゃ良くない? 最っ高〜に気に入ってんだけど、とある絵師さん……というか知り合いの方なんだけど、その人に描いてもらいました!」



 その後、ぞくぞくとバナーとアイコンについてのコメントが入る。



 toshi:ほんとだ 何これ!? ヤバ過ぎる! めっちゃクオリティ高いじゃん! しかもめちゃかわ


 Shimazu:おいおいおいおい なんだよこれ バチクソ可愛い 以前のダサダサ手描きキャラはどこいった? 


 Daiken:ていうかもうこれ、何かの有名な美少女ゲーのパッケージでしょ


 Ololock:ヤバいよこれ なんだこの絵は……マジで綺麗すぎる


 だーくねす:こんなの、可愛い過ぎるって! 凄すぎて笑った


 poipoyomax:これ、絶対何かの有名な美少女ゲー描いてる人でしょ? 知り合いって有名な人?


 


 様々な高評価のコメントが怒涛の如く押し寄せ、流れるスクロールのスピードが早く、全て読めない。チャット欄は一時、悟の配信云々のコメントより夢の描いたビジュアルについてのコメントで埋まっていた。



 「なになに? 何なの?」



 美優はそのコメントの真意を確かめるべく、悟のチャンネルページのトップを開いた。




 「え……?」


 

 美優のマウスを持つ手が止まる。




「何なの……これ。何……このビジュアル……。

 すっっっごく綺麗!! 何? この美少女達……!!

 それに、絵のクオリティが高過ぎる……。これ描いた人は、他の美少女ゲームのビジュアルをやってる人じゃない……。こんなクオリティのもの、今までに出てたら私にだってわかるもん。それに他のとは違う……何かオリジナリティを感じる」



 夢の描いたチャンネルバナーの絵は、どこか秋波原の街を彷彿とさせる場所で、何人かの美少女がそれぞれ様々な表情で描かれている。歩いている美少女、膝を組み座ってこちらを見つめる美少女、美しいスタイルの立ち姿で、真っ直ぐな瞳を向けてくる美少女……。

 とにかく描かれている美少女全てが個性的なビジュアルで、その一人一人からストーリーを感じつつも、それらがぶつかりながらも上手く混ざり合い、全体としても一つの世界観を完成させている。

  

 カラフルで、繊細で、オリジナリティ溢れるその美少女達は、間違いなく見る者を魅力する力を持っていた。




 そして美優自身も、他の賛美のコメントを送った者達同様に、夢の描いたビジュアルに釘付けだった。




「こんな……こんな綺麗な美少女を描いたのって、一体……」



 美優は心底、夢の描いた美少女達に心を奪われてしまっていた。



「誰なんだろう……私は悟さんの交友関係はよく知らない。でも気になる……」



 美優はあまりにクオリティの高い美少女バナーのビジュアルを、細部まで眺めながら思案する。



 ………う〜ん……。




 ー !? ー




 ふと、美優の脳裏に秋波原の画材コーナーで、悟といた超絶美少女が脳裏によぎる。



 ……えっ!? 


 もしかして、あの人!?

 確か……夢って人……?

 あの人が……描いたの?



「そうよっ! きっとそうよっ!

 こんな絶世の美少女は絶世の美少女にしか描けないわっ(わかんないけど)! でもきっとそうよ。そしてこんな美少女を発掘できたのはルルーラ美少女図鑑にとっても喜ばしい事だわっ。メンバーのみんなにも知らせなきゃっ!

 

 ……でも、さと寸さんとあの夢って人、どういう関係なのかしら……。さっきは知り合いって言ってたけど、だとしてもここまでの絵を描くかしら……。でもまだ、この絵が本当にあの夢さんって人が描いたのかわからないし……。う〜ん。気になる。気になる気になる……。どうしよ……。もんもんもんもん……」




[さと寸に連絡して2人の関係を聞く]

[関係ないわっ そんなの知らないっ 私はわたしよ ふんっ]



 

「もう〜っ! 何で私の頭の中にまで選択肢が出てくるのよっ! 美少女ゲームのやり過ぎ見過ぎっ! さと寸さんの事考えすぎっ! そんな小さい事気にしてるからいつまで経ってもさと寸さんに子供扱いされるんだわ! ……そんなの……関係ないわっ。そんなの知らないっ。私はわたしよ。ふんっ。

 もう、残りの分は明日のアーカイブで見るとしてご飯食べてお風呂入って寝ましょ。そうしましょ。うん」






 ……パクパク。



「やっぱり成城石田のコロッケは本当に甘くて最高に美味しいわっ」



 ……シャーーーッ。



「やっぱりこのシャンプーに替えて正解ねっ。すっごい良い香り。ルンルルンッ♪」



 ……ガーーーーーーーッ。



「さあ、髪も乾かしたし、ベッドに入って……と。……はい、もう寝ましょ。おやすみなさい…………………」







「はぁ〜っ。配信終了っと。……やべぇ、大分時間かかったな。みんな飽きてなかったらいいけど。……とりあえず、風呂入るか」



 ピピン。



「ん? 何だ?」



Lane ー 1件のメッセージがあります。


- miyuco -




「おっ。美優ちゃんからだ。なになに……」




「今度 2人で会えませんか?」




「……えっ? 何これ……。これって、つまり……。いや……まさかな」




「……もうっ。 なんで私はこんなの送っちゃったのよっ。バカっ。ぐすん」



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