87.美少女ブースター
「こ……これは……」
夢から送られてきたファイルの中身は、夢の手で描かれた、夢に勝るとも劣らないレベルの美少女の絵が数点入っていた。
それらの絵は以前悟が夢に自分のゲーム動画のチャンネルバナーやアイコン用の絵を、是非夢に描いてほしいと依頼していたものだ。その時はあっさり断られたのだが、悟はいつか描いてくれるだろうと勝手に待っていた。しかし、まさかこんなタイミングでなんて思ってもいなかった。
「す、すげぇぞ……これ……」
ー ピピン。
あまりの嬉しさで興奮していると、
また夢からメッセージが。
「以前あなたが無理やり送ってきた参考画像をみながら描いたけど、もし気に入らないなら連絡して 直さないけどね 私なりの精一杯の絵だから でも、それでももし、気になるところがあったら遠慮なく言って」
「いやいや、気に入らないどころかどれもこれも凄いんですけど」
とは言いつつ、万が一何かしらの修正点がないかと、描かれた美少女達を細かくチェックするも、直してほしいところなど何も無い。沢山の美少女ゲームをプレイしてきた悟には、夢の漫画を見た悟の目論見通り、夢の絵のスタイルは美少女ゲーム向きで、こんなキービジュアルの美少女ゲームがあったら絶対売れるだろうと確信していた画風とクオリティ。
こんな才能ある人の絵を俺の動画チャンネルにつかえるなんて……。やっぱ凄いよな、夢は。そりゃそうだ。何つったって俺の幼馴染で無理目の美少女だもんな。俺の目にくるいはなかった。
いつまでも眺めていたいが、とりあえずは夢に返信だ。
「夢、ありがとう 何て言っていいかわからないくらい嬉しい」
ー ピピン。
すぐに返信が。
「もう言ってるでしょ」
「本当ありがとう めちゃくちゃ大事にする こんなクリスマスプレゼント、最高に嬉しいわ」
「たまたま漫画が描き終わったから、描いてみようかなって思ったの」
夢なりの、いつものツンデレな返信が返ってくる。
「このクオリティ、描いてみようかなって思って描けるレベルじゃねえぞ 凄すぎだ」
「実際描いてて、私も色々勉強になったから、こっちも多少感謝してます それにいざ描くとそれなりに楽しかったから
もうすぐ電車降ります 木葉寝ちゃってるから起こさなきゃ またね」
夢はふうっと、一仕事を終えたような、ほっとしたようなため息をつき、ふと、車内の向かいの窓越しに反射する木葉の寝顔を見つめる。
夢の肩に頭を乗せてすやすやと眠る木葉。
(木葉がいなかったら、私は今頃どうなってたんだろう……。学生の頃から背中を押してくれたり、駄目な時はちゃんと叱ってくれたり、いつもそうやって素直じゃない私のそばにいてくれてた……。
悟との事に関しても、木葉がいてくれるお陰で自分の想いに気付くこともあったな。
こんなツンデレ娘ですいません、木葉。
もうちょっと、自分に素直になって……そして、悟にも……。
いつもありがとね。木葉。そして、金田君とうまくいくといいね。応援してるから……)
肩に木葉の頭の重みを感じながら、夢は駅に着くまではそっとしておこうと思い、自分も目を閉じる。
冬の寒さとお酒が沁みたのか、夢と木葉は仲良くくっついて寄り添っていた。
夢は目を閉じながら、自然と悟の顔を思い浮かべていた。
(喜んでたな……悟。よかった……)
「おっしゃ〜っ! これで俺のチャンネルもますます箔がつくってもんだ! さっそく明日チャンネルを編集してまた動画上げるか!」
悟は一気に酔いが覚めたのか、意気揚々と興奮しながら家路へと向かった。
夢からの思わぬクリスマスプレゼントに浮かれていた悟はその時、兄の晶からのLaneに全く気づいていなかった ー 。
Lane ー 1件のメッセージがあります。
晶 「メリクリ 元気か?
晃弘と会ってみようかと思うんだが、近いうちちょっと都合付けてくれるか?」




