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85.1話も起きてられません



 「バッカじゃないの……未成年が。……ほんっと、何やってんだか……」



 悟はいきなり目を覚ました夢の一言で急に苦しくなったのか、もう少しで空にする手前でビールを置き、夢の方へ向く。

 溢れ出そうなゲップを堪えながら、



「……な・なんだよ。別にいいじゃねえか飲んだってよ」


「大人ぶっちゃって」


「そんな変わんねえだろ!……げふっ」



 思わず堪えていたゲップが出る。



「もうっ、汚いわねっ。しかもそんな飲み方して。ガキね……」


「ぐっ……うるせえよ。お前こそまだこんな時間なのに寝ちまいやがって。ひょっとして俺がいなくて寂しかったのか?」



 悟は内心、夢の親代わりのようなお節介に苛立ちながら、いつも上からな夢の物言いに反抗期よろしくの未成年(実際そうなんだが)のような口ごたえをする。



「金田君、木葉、ごめん。寝ちゃったわ……。今何時なの?」



 悟の反抗期を無視して夢は辺りを見回す。



「まだ11時前だよ。夢があまりに可愛い寝顔で寝てたから悟君、気になってチラチラ見てたよ」

 

 

 木葉が、ねっ? っと言わんばかりに悟にウインクをする。



「えっ!? べ、別にそんな……。こいつ、だらしねえなって思って見てたんだよ」


「……やだ。キモっ。私が寝てるのをいい事にジロジロ見てたんだ」


「うっ……別にそんな……。じゃあ見られたくねえならこんな時に寝るんじゃねぇよ」


「まあまあ、夢ちゃんも起きた事だしこれでまた一旦仕切り直しだな……そういや冷蔵庫にケーキあるからそろそろみんなで食おうぜ」


「おっ。いいねーっ。食べよ食べよっ。夢、食べれる?」


「うん! お腹は減ってる。やった! ケーキだっ」



 夢は寝起きの子供みたいな笑顔ではしゃいでいる。



「へっ。ケーキケーキってうるせえな。ガキか」


「何のケーキ買ったっけ」


「………。」



 夢は相変わらず悟を無視する。



「あらら……。ふふっ。チョコだよっ。チョコケーキだよ。ねっ? 悟君?」


「うん? 何だ? いや、俺は買ってないからわからないぞ?」



 夢は何気なく悟を見つめている。



「俺は普段あんま甘いの食わねえが、こんな美少女がいる甘々な空間なら何かけっこう食えそうな気がするな」


「あ、金田君はいいよ? 無理しないで。食べられなかったら私達が全部たいらげちゃうから。ね? 悟君?」


「いや、だから何で俺に確認するの?」



 今度は木葉が悟を無視して、金田を連れてケーキがしまってある冷蔵庫に向かう。


「私も手伝う」


「じゃあ俺も……」


「あなたはおっちょこちょいだから何かあると困るから座ってなさい」


「……。」



 夢は立ち上がると台所の方へ向かい、金田からお皿とフォークを受け取っている。



 悟は3人のケーキの準備をする様子を見つめながら、



(……ふふ。俺は今、何を隠そう、めちゃくちゃテンションが上がっている……! 俺は無類の甘い物好きだ! しかもケーキ! しかもチョコときた! チョコは俺にとっては最高のスイーツだ……! まだ食べずにいてくれてありがとよ。そして金田よ……無理して食べなくていいぜ。お前の分も食べてやるから)


 

 3人がテーブルに戻ってきて、



「さあっさあっ、切りますかっ!」


「誰が切る?」



 金田が包丁を手にしながら尋ねる。



「あたし、切ろうか?」



 夢が名乗り出る。



「大丈夫かよ。寝起きで」


「うるさいわよ。悟のだけ小さく切っちゃうわよ」


「おいおい。あんまりだな。やっぱり信用できん。俺が切る。さっきから何もやってねえし」


「逆に何かやられると困るのよ。おっちょこちょいだから。だから悟はただ黙って座ってなさい」


「何だよ。別にケーキくらい切れるぜ? 何もそこまで子供扱いしなくても」


「あなたビール飲んじゃってんだから、うっかり自分の指切りかねないから。あたしのこの優しさがわからないかな」


「ぶあっははっ! ウケる。悟、やめとけ。何かあったら大変だ。ケーキを血で染めるな」


「ねぇっ。じゃあもう2人でケーキ切ったら? 『ウェディングケーキのご入刀で〜す!』 みたいな。練習にもなるじゃん?」


「やらないわよっ!」

「やんねえよっ!」



 2人して木葉にツッコむも、木葉は意に介さず、



「じゃあ私が切ったげる。夢に切らせると悟くんのを一番大きくしかねないから。まあ、それでもいいんだけどね」


「しないわよっ。こんな生意気な態度を取るなら一番小さくしてやりたいわ。せっかく私がこのケーキをえら……あっ」


「何だ?」


「あらっ? 夢ちゃん? ふふっ……。いいのかなっ?」 


 

 何故か木葉がニヤけている。



「いや……何でもないわよ」


「何だよ。言いかけて気持ちわりぃな」


「うるさいわね。……わかった。じゃあ木葉、切って。お願いします」


「う〜ん。どうしたもんかな〜っ。……いや、切ってもいいんだよ? いいんだけど、私も夢がさっき何を言おうとしたのか気になるな〜っ」


「こらっ。もういいのっ。何でもないから。早く切って」


「う〜ん。どうしょっかな〜っ。でも気になるな〜っ、やっぱ気になるな〜っ。ね? 悟君?」


「こらっ! 木葉っ!」


「お・おいおい。何だよ急に。何怒ってんだ夢? どうした?」


「木葉ちゃんも意地悪だな〜っ。夢ちゃんも困ってんだし……ってか悟、お前わかんねえ?」



 金田が間に入って誰に対してなのかわからないフォローをしてくる。



「あ? 何が?」


「悟君はわかんないよっ。だから私は夢から教えてあげてほしいな〜って」


「何だよ。どういう意味だよ」


「夢? 悟君わかんないってよ。困ってるってよっ」


「いや……もう知らない。私言わないから……。あっ! っていうか、知らないし」


「おいおい。急にとぼけちゃったよ……。夢ちゃんも案外、悟に似て嘘が下手だとみた」


「そうよ。夢も悟君もわかりやすいもん」



 夢は先程から顔を真っ赤にし、怒ってるのか照れてるのかよくわからない表情をしている。



「もういいから、そんな事より早く食べようぜ」



 早くケーキが食べたいと、痺れを切らした悟が木葉にせっつく。



「いいの? 何だったのか知ったらこのケーキは何倍にも美味しくなるんだよ?」


「ん? 何だそれ?」



 うつむいて恥ずかしそうにしている夢を尻目に木葉は、



「夢が選んだのは〜っ……さっきのシャンメリーだけじゃないんだよ。実はこのケーキも夢が選んだんだよ。悟君は甘い物が好きだし、チョコが大好物だから絶対このケーキがいいって……。ね? ……夢?」




 (そ、そうなのか……!?)




 3人揃って夢の方へ視線を向けると、夢は既にテーブルに再び上半身を突っ伏して寝たフリをしていた。




「……ん……すぅ〜っ。……すぅ〜っ……。」




「おいおい……。バレバレやんけ」



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