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84.俺は無敵


 

 夢がずっと俺を許せなかった理由は、

 きっとそれだ。




  ー 俺が夢から逃げた事。




 はあ……。


 そりゃ誰だって怒るわな……。うん。

好きな相手が何も言わず、急に居なくなったら。


 例えその時の理由が母親の治療の為とはいえ、何かしこりのような物が俺にも、そして夢にも残っているなら、やはりその事が本当の理由じゃない。



 明らかに、俺が逃げた事が一番の理由なんだ。



 しかし……。



 それを立証する為には、

夢の本心に触れなきゃいけない。

 俺も、夢も。



 勝手に他人の心の内を覗き、触れるなんざ、神様じゃない限り到底無理な事だが、でも俺は知りたい。夢の本心を。



 木葉ちゃんが言った事が正しいなら。



それに何より、木葉ちゃんのその推測が何故か俺にはしっくりときたから。



 俺はそれを確かめたい。




 俺が1人、考えにふけっていると、



「まあそれでも、夢ちゃんがどう思ってようが、お前が夢ちゃんを好きな以上、アタックし続けるしかないな。さっきの話しが当たってるかそうじゃないかはともかく、お前は早く夢ちゃんと結ばれろ。そして早く俺の恋愛をサポートしろ。ね? 木葉ちゃん?」


「金田君のそういう話し、いつも何言ってるかわかんないけど。まあ、あくまでそうじゃないかな? って話しだから、それに夢としては勝手にこんな話しされても何だろうから、とりあえずこの話しはここまで。ねっ」




 俺はふと、夢の寝顔に目をやる。




 ……こんな無理目の美少女が俺の事を好きだったなんてな……いやいや! まだわからんぞ! それにもし、その時は本当に俺の事が好きだったとしてもだ、今もまだ俺の事が好きかはわからん……今の俺に対する夢のツンデレっぷりは元々の性格ってのも多少はあるだろうしな……。

 


 はぁ……。結局のところ、木葉ちゃんの意見や夢の気持ちをアテにするんじゃなく、自分で何とかしろって事だな。


 

ー ………。



 ……それにしても何だ?



 さっきから頭がずっとボーッとしてるぞ?

体も暑いし、何というか……気が緩んでるというか……。



 悟が何気に自分の飲んでいる缶を眺めていると、



「……うん? 糖……質……ゼロ? 何だそれ……」



 ようやく、長かったぜと言わんばかりに金田が、



「ぶぁっはははっ! そうだよ! お前の買ってきたビールはアルコールゼロパーセントじゃなくて、糖質ゼロパーセントなんだよ! 飲んでて気付かなかったか!? まあ、悟にしたらまだわかんね〜か! いやぁ〜っ! ははははっ! マジでお前、最高だわ!」


「ふふっ。私もあれっ? って思ったんだけど悟君が、俺にはこれがあるってドヤ顔で出してたからさ、もうほんっとおかしくなっちゃって、私、笑いを堪えるのに必死だったよ」



 な、何だ……何なんだチミ達は……。

そうだったのか……。さっきまで夢の話しで俺が真剣に悩んでいた所、コイツらは俺がいつ本当のビールだと気付くか待っていたのか……。


 本当コイツら、恐ろしい……。

 そして買ってきた俺も恐ろしい……。


 それに金田に言われた途端、俺はああ、これ酔ってるんだと認識した。




  ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡


 ※良識ある未成年の方は決してマネしないでください。あくまでこの物語はフィクションです。


  ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡




「まあ、しょうがねえからそれ飲むしかねぇな。夢ちゃんのシャンメリーはさっき自分で飲み切ったし。何なら今日は泊まってってもいいぜ? あ、でも木葉ちゃんが泊まるってんならタクシーで帰ってもらうけどな」


「だからわかんないって。悟君、ごめんね。何か酔った悟君も見てみたいな〜って。ほんの出来心ですっ。てへっ」



 木葉は先程の木葉ビームとまではいかないが、さしづめ木葉ビームver.2とでもいうような、ドジっ子感と多少のお色気感を混ぜたような目線で悟にウインクする。


 (なっ……!! またっ!? この視線……。騙されないぞ。……ってかもう、騙されてるが。俺自身に)



「わかったよわかったよ! 飲むよこのまま! 飲みゃあいいんだろ飲みゃあ!」



 悟は急に何かのスイッチが入ったのか、金田と木葉は目を丸くして悟を凝視した。



「はははっ! うける! 何で悟君、やけになってんの? いっちゃえいっちゃえ! 大丈夫! 君の面倒は金田君が見るから!」


「おいおいおい! 何言ってんの木葉ちゃん! 俺はもし君が泊まるってんなら悟の面倒は見ないぜ?」


「ほんとに訳わかんない事言うな〜っ。あなたは悟君の友達でしょ? 酸いも甘いもディスティニーも知った間柄でしょ? そんなつれない事言わないのっ! それに金田君も悟君が酔ったところ見たかったよね?」


「うっ……まあ……それはそうだが……。わかった。どんどん飲め、悟。しかばねは俺が拾う。じゃんじゃんやれ」




 (何だか……夢の事に対して少し前向きになれた気がする。っていうか何か俺、めっちゃ調子出てきた気がする……!! そりゃそうだ! 夢は俺の事を好きかもしれないんだもんな! いや、てか、好きなんだな! うん! これは酔ってんじゃねぇ!

 いやぁ、いい事聞いたぜ木葉ちゃん! ありがとうな! そっか! 好きなんだろ? 夢? だからずっと俺にツンデレな態度取ってたんだろ? それはきっと木葉ちゃんが言う所の好きだからこその態度だったんだな。……ちくしょう……可愛いぜ、夢。そしてごめんな。そんな健気な夢に気付かなくって……。俺、頑張るからさ! このビールを飲み干してもっともっと大人になって夢の事わかってやれる男になるからさ! もう、すぐだから! 待ってろ! 夢! 大丈夫! 俺は今……無敵だ!!)




 悟は調子に乗って残ったビールを一気に飲み干し、次の缶を開け何故か立ち上がって腰に手を当てそのままグイッと飲み始めた。



「おお〜っ! いいねいいね。やるじゃん悟」


「いやいや、何で腰に手を当ててんの? 本当ウケる悟君! きゃははっ!」



 俺が夢中で味もわからずただ勢いでビールを流し込んでいる所に ー




 「うう〜ん……うるさいなぁ。……何?」




 夢が目を覚まし、テーブルに突っ伏していた上半身を上げる。



 盛り上げていた金田と木葉もハッと一瞬、我に返るものの、調子に乗っていた悟はもう自分でも止められなかった。


 ビールを飲みながら夢の寝起きの視線と目が合う。




 ……何か……ヤバい。




 状況を察したのか、夢は寝起きの悪い様子で薄く目を開いたまま、



 「バッカじゃないの……未成年が」




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