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67.みつどもえ

 

 (えっ? あれ、さと寸さん……よね? どうして? ……そっか! さと寸さんもクリクロ買いに来たんだ! ……でも、まさかこんなところで会えるなんて……。うん、きっと運命よね……。声、掛けよっかな。でも、声掛けた後、どうしたらいいかわかんない……)



 悟は後ろを振り返る様子もなく、美優は必死に思考を巡らせる。



(今、列を離れられないし、私が買った後すぐ追っかけてみようかな……。どうしよう。ドキドキする……)



 じわじわと列が進み、少しずつ悟はレジに近づく。





 (う〜ん。何て声掛けよっかな……)


 ①偶然ですね! さと寸さんもクリクロ買いに来たんですねっ! あっ! もしよかったら可愛いうさぎのお店があるんですけどよかったらこれから一緒に行きませんか? ちょっと長くて大きいんですけど、とっても素敵なお店なので!(グイグイパターン)


 ②あっ……こんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。もし、お暇でしたら少々の間お付き合いしてあげてもよくってですよ?(ツンデレ何様パターン)


 ③さりげなくさと寸の目の前を行ったり来たりし、逆に見つけてもらうパターン(迷子風のかまってちゃんパターン)




 ついに悟の順番がまわってきて、悟は購入手続きを済ませ会計をし、そしてそのままアニャメイトの出口の方へ進んで行く。


 

 (待ってまって、さと寸さん! ああっ! もうっ

早く進まないかしらっ!)



 早くはやくと急かす気持ちをよそに、レジに並ぶ人達の購入手続きはのんびりと行われている。なかには予約バーコードを出して並ぶようにと指示があったのにも関わらず、レジに来てからスマホをもしもじ操作し始める輩もいて、美優はイライラしていた。



(もうっ! はっやくしなさいよっ! こっちは急いでんのっ! さと寸さん、待ってっ! 待ってっ!)



 ようやく自分の順番がまわってきて、美優は速やかに購入手続きを済ませ、ソフトを受け取ると急いで店を出る。



 「え〜っ!? どっちにいったんだろ? 右か左か……どうしよう……)


 

 店の外で大通りに面した歩道に立ち、辺りを見回すも既に悟の姿はなかった。



 「うえ〜んっ。運命の出会いルートだって思ったのにっ。……でも、さと寸さんはまだ近くにいる。それは確かな事よね……。Laneしようかしら……いやいや、それだと私の選択肢が狭められる気がする。あくまで私が直接見つけて選択肢を残しておかないとね……。探してみようかな。上手く行けば、そのまま一緒にうさぎのお店に行っちゃおう。……そうね、これはきっと運命の出会いによる、私達にとっての試練よね? 2人が出会う運命なら、きっと見つけられるはずっ」




 美優は胸の高鳴りと少しの緊張感を胸に、秋波原の街を彷徨い始めた。







 「……もしもし?」


「おはよ〜夢。今日は何してんの? ヒマ? よかったら会わない?」


「えっと今、用事があって買い物に来てるの」


「えっ? 秋波原?」


「うん」


「いいね〜っ。夢の住んでる所はどこも行かずとも何でも揃うもんね」


「何でもはないよ。ただちょっと、漫画の道具を見に来ようと思って」


「そっか。じゃあこのまま電話でいっか……。あのさ、夢はクリスマスの予定どうなってる?」


「えっ? クリスマス?」


「うん」


「特に……入れてないよ。多分、家で家族と過ごすと思う。毎年そうだから」


「そっかーっ」



(やっぱ悟君からは連絡きてないんだ。……よし)



「木葉は?」


「えっ? あたし? 私は……う〜ん、今年は夢と会おうかなって」


「えっ?」


「どう? 毎年家族と過ごすのも良い子ちゃんの夢ちゃんらしいけど、たまにはお友達と一緒に過ごさない? あ、あとちょっとエンタメ君も一緒だけど、どうかな?」


「……あっ、金田君?」



 街行く男共が通り過ぎる夢を振り返り、中にはカメラを持った青年から「写真撮らせてもらってもいいですか?」などと声を掛けられるも、夢はスマホを耳に当てたまま、結構ですのジェスチャーで断る。

 街に出るといつも何かしら声を掛けられる夢は、こういった輩の扱いに慣れていた。



「そっ。3人でさ、どっか行こうよっ」


「3人……で?」



(……くるか? くるかっ? 夢ちゃん)



「うん。どうかな。ダメ?」


「えっと……その、ダメじゃないけど……」


「なになに? 何かやだ? あ、金田君がやだ?」


「いや、その……」



(ほれほれっ。来なさいっ。夢ちん)



「何? 金田君が嫌なら2人で会う?」


「その、嫌なんじゃなくて……」


「………。」


「さ、悟は来ないんだーって思って」


「何よ……その棒読み感丸出しの感想は」


「べ・別に気にしてる訳じゃないけど、金田君一人なんだなって思って……それだけだよ」


「本当にっ? それだけ? でも、やっぱ会いたいよね〜っ、悟君にも。ねっ?」


「いや、だから私は別にそんなんじゃ……」


「なになに? また漫画の調子が悪くなったの? 会ってパワーチャージしとく?」


「だからそんなんじゃないって! いつも金田君と一緒にいるイメージがあったから、そう思っただけっ!」


「ふむふむ。そうか……じゃあ悟君にも合流してもらうかね?」


「えっ?……だから私は……何でそうなるのよ……」


「もう〜っ。しょうがないな〜っ夢ちゃんは。これだから素直じゃない子は大変だよ。わかったっ。じゃあ悟君も一緒にっ! でも悟君、その日はバイトが入ってるみたいだから、その後からの途中参加になると思うけど、良いかね?」


「良いもなにも、私は何も ー」


「はいはい。任せなさいっ。私から誘う事にしたって事にすればいいじゃん?」  


「っていうか実際、木葉から言ったんでしょっ!? 私は知らないからっ!」


「はいはい、知らない知らない。それで良い良い。とにかく24日は空けといてね、また連絡するから。お買い物中、失礼しましたっ。またねっ」



一方的に話を終わらせ木葉は電話を切った。



「もうっ。木葉ったら、何なのよ……まるで私が悟に会いたいみたいな風に言っちゃって……」



 (でも……そっか。悟バイト入ってるんだ。もうすぐ漫画が出来上がるから、ちょっと見てもらいたかったんだけど……。



 ……えっ? 

 私なんで ー ?



  漫画を読んではもらいたいけど、別にその日にこだわらなくてもいいじゃん? 何で私は……。

 でももし、悟と合流するならその日に渡して読んでもらってもいいけど……やっぱり木葉と金田君も一緒なら、別の日がいいかな……。それに悟がその日大丈夫なのか、まだはっきりしてないし……)




 そんな事を考えて交差点で信号待ちしていた夢は、ぼんやりと歩行者信号の赤ランプを見つめていた。





 ー その時、夢の待つ横断歩道の向こう側から、夢の無理目な美少女っぷりに見惚れている一人のゴスロリ少女がいた。





 ー えっ。 何? あの人……

 めっちゃくちゃに可愛いんだけど ー 。




 夢は、美優の美少女スカウターに引っ掛かってしまった。





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