6.俺はクリエイター
家に帰るとさっそく風呂に入り、〈夢に出会えた祝い〉として、さっきコンビニで買ってきた社会的にまだ飲んじゃいけない缶ビールをプシュと開ける。
ビールは喉ごし!と言われてもよくわからない喉ごしを感じながら一気に3分の1ほど飲み込む。
「う〜ん…やっぱり味はよくわからん。しかしそんな事どうでもいい、今日は夢に会えた記念としてのこの祝杯、大いに楽しもうではないか」
一人バカ丸出しの風呂上がり半裸状態で、パソコンの前に座り、自分で上げた最新の動画をチェックする。
―「1番好きな動画は自分の動画です」
有名になった際、何かしらインタビューされたら俺はそう答えるつもりだ。実際、俺は自分の動画が一番好きだ。それは揺るがない。アンチでも誰でも何を言われようが。それは変わらないんだ。
動画に限らず、自身の作った作品、音楽でも芸術でもラノベでも、きっとクリエイターは自分の作った作品が一番のはず。そんな作品を自分が作らないと。誰も自分の本当の好きものは作ってくれない。作れるのは自分だけ。
それに、そうじゃないと、やっていけない。
「……視聴回数は…127回か。まずまずだな」
先立って言った通り俺は動画クリエイター、動画配信者だ。
実力はまだ……いや、ある。あるがしかし登録者数は300人ちょっと、平均視聴回数は200回前後、ひどい時は50回行かない位……いや、それはまあいい。今はまだ夢の途中、とにかく毎週3〜4回動画を上げている。
一番見られた動画、今のところのベスト動画は視聴回数3200回ほどで、タイトルは
「ガーリッシュクロスファンタジー・恋に恋するメイドちゃん」だ。
そう……俺はギャルゲーのゲーム実況配信者だ。
この「ガーリッシュクロス〜」こと「ガリクロ」、
「ガリ恋」、「ガリメイ」等と略されるゲームは、何をやってもモテないダメダメな負け組オタク主人公が、ふと足を踏み入れた喫茶店で出会ったメイドのランプリちゃんとの恋愛まで発展するラブストーリープラス、そこに介入する他オタクども、そしてランプリちゃんのライバルとの接客サービスバトル、何故かサービス業務研修の為の合宿に主人公も行くことになり、合宿先での告白バトルや浴衣野球拳卓球大会、天体観測&花火の夜、そして最高のライブをする為のランプリちゃんの身を投げ出すほどの渾身のサービスライブ等、数多あるテッパンシチュでのランプリちゃんとのハチャメチャイチャイチャが繰り広げられる、そんなささやかなギャルゲーであり、2年前に発売されたにも関わらず、繰り返される質の高いDLCサービスで未だ根強いファンを掴んで離さない、至極のクオリティのギャルゲーなのだ。
まあギャルゲーといえば、エロシチュ……いわゆるピーな部分が多分にある為、そのまま配信すると100%BANされるので、そういったシチュがあらかじめカットされたPA5やスイッポ版のソフトで配信している。
しかしとは言え、あなどるなかれ……。
昨今のギャルゲーはかなり良質な脚本構成がなされ、エロシチュなしでもただ純粋にギャル達と素敵な、そしてまだ見ぬ恋愛を体験する事が出来る。
それもこれも、昔から受け継がれたギャルゲー魂による、先人達の血の滲むような努力の甲斐あってのこそ。そこはハズせない。
しかも最近はギャルゲーそのものがアニメ化される現象が起きていて、いちギャルゲー崇拝者としての俺としてはこの上ない喜び、さしずめ圧倒的市民権を得た、忘れさられた洞窟よりの使者、といったところか。
ギャルゲーの歴史、そして今もなお続くこのギャルゲーワールドに感謝。
そんなこんなで俺は溢れ出すギャルゲー愛に突き動かされ、動画配信を初めた。もっと世界にギャルゲーの素晴らしさを知ってほしいから。
……いや、それは嘘ではない。
嘘ではないが、
本心は ー
「ずっと色んな美少女と恋愛して、それで生活できるなんて夢のよう」
だからだ。
それは嘘偽りない、俺の本心だ。
ひいては俺の生きる希望、生きる価値そのものだ。
一体この地球で何人の人間が心から、本心で願う自分の生き形を求め、それに向かって行動している人間がいるというのだろうか。
俺はそんな生き方をしたい。周りからどう思われようが、蔑まれようが、確かに傷つく時もあるだろうが、人間、生きてりゃ傷の一つも負うだろう。
俺はその、何の為に傷を負うのか、そこすらも自分の納得する所で受け入れて生きていきたい。
俺は何も間違ってない ー
何も ー
俺は恵まれている。自分の心から求める生き方を見つけられたから。
俺は自分の人生を作っていく、クリエイターだ。
でも、何か忘れている気がする。