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55.ロックオン


  私は桜川さくらがわ 美優みゆ。まだまだ親にも社会にも、従姉妹のひなたお姉ちゃんにも甘えたい現在高校2年生の17才。そんな私が2次元の世界に連れ去られてからはや3年……今日もまだ見ぬ美少女達を追い求めて、日々更新されるアニメやラノベ、美少女ゲームのリサーチに、毎日2時間PCとにらめっこして調査し、この今をときめく10代の輝きの全てを捧げてるの。そして私の作り上げた2次元美少女コミュニティには日々、新たな美少女を求めて情報交換をし合う者が集まり、管理者としての私の業務はもはや生きがい。



 えっ? 美少女に魅せられたきっかけ? 



 それはあれよ、私の世界にいる獣(男)共があまりにも汚くいやらしく、そして幼稚な存在だったからよ。

 小さい頃からアタシの後ろをついてきて頭をたたいたり、スカートをめくったりアタシが砂場でお城を作っていたら、きったない素足で粉々にするし、鼻くそは投げるわ、突然意味もなくう◯こう◯ことわめき出し自分達で笑ってるわ、そんなバカみたいな許されざる悪行を重ねておきながら、2月には何故か妙に大人しくなってソワソワし出すわ、3月にはしらばっくれるわ、好きな女の子をいじめるわ、弱い者をあざけるわ、強い者には巻かれるわ、ダサいわ、汚いわ、バカだわ、やたらうるさいわで、本当にあの獣共は私にとって何の利益ももたらさない、なのにこの世界を牛耳っているという、目障りな存在以外の何者でもない。




 ……そんな世界に絶望している時、私はある日、ふと付けたテレビから流れた美少女達に釘付けになった…いや、美少女達から放たれる眩しい光にブッ刺されたとでも言おうかしら。


 テレビの中に映る美少女達は、みんな可愛いくも美しい衣装をまとい、どう考えても悪い、ぶっ◯されてもおかしくない悪の存在達を、美しい見惚れるような魔法を駆使してバッタバッタと倒していった。


 美少女達が悪をやっつけるその場面を観てからというもの、それ以降、獣共に嫌なことをされるたび、ああ…現実でも、悪い男共を美少女達が魔法でえいっ! なんてやっつけてくれないかな…って、そんな事ばかり考える日々を送っていた。



 

 ……そしてそのうち私は、その悪をぶっ倒す爽快感よりも、その美しい美少女達に、より大きな思いを馳せるようになっていた。




 美しさが全て ー

 可愛さが全て ー

 なの。




 男が駄目なら、男をやっつけるのではなく、女がもっと綺麗に、美しくなればいい。この汚らわしいバカ共が跋扈ばっこする世界で、何より綺麗で、美しく、可愛い存在を私は大切にするようになった。




 そんな私の最近のお気に入りは美少女ゲーム。

 

 アニメ産業が飽和状態になりつつある今、次のアニメのあるべきスタイルを模索しようとした結果(高2の意見)、美少女ゲームのアニメ化という流れが今、2次元を崇拝する者達から注目を浴びている。



 その流れに、私も乗っていた。



 まだまだアニメ化されている美少女ゲームは少ないが、今のこの黎明期に、元の美少女ゲームを知る事は今後の私の美少女発掘活動にとってもきっと有用なはず。私は自分でも美少女ゲームをプレイ(年齢制限の為、PA5かスイッポで)し出して、シンプルな動きながらも、美しいグラフィック、そのシンプルな動きをカバーするかのような、表情豊かなボイス、綿密に作り上げられたシナリオと選択ルート、様々な感情を持ち、主人公と恋愛を繰り広げていく美少女達。どの女の子を選択したとしても、最後にはベースにある秀逸なストーリーのエンディングに一種のカタルシスを感じられ、アニメでは得られない、また独特の世界感を体感していた。



 

 次の美少女は、この中にいるかも知れない ー 。




 私はそれからというもの、すっかり美少女ゲームにハマっていた。沼っていた。


 まあ、主人公が男っていうのは演出上、いた仕方のない事なのかも知れないけど、まあ、美少女に囲まれる女主人公モノも、少ないけどあると言えばあるし…。



 えっ? 勉強は大丈夫か、ですって?



 そんな心配はいりません。ワタクシ、成績は学年4位のイヤミなデキル子ちゃんなので。ごめんあっさ〜せっ。



 そして。そしてなの。


 

 そんな美少女達を追いかける日々に、従姉妹のひなたお姉ちゃんから、衝撃の事実を知ったの……。



 私の今お気に入りの動画、「さと寸の美女ゲーチャンネル」の主と、従姉妹のひなたお姉ちゃんがリアルの知り合いだったなんて……。わたし…わたしビビりまくって興奮し過ぎて嬉しすぎて、たぎりまくってるの。


 あの、愚直ながらも真っ直ぐ過ぎる、いやらしさを通り越した、私ですらまだまだだと思わされるほどの美少女愛。昔の動画はフラフラと美少女をとっかえ引っかえして、だらしない印象だったけど、近頃のあの一途なまでの、もはや執着にも似た、狂ったような美少女達への愛情。あそこまでの想いをぶつけるその主は、私の獣に対する考えを覆そうとしていた。




 あんなにも、真っ直ぐに愛されたい。



 そうなの。私は愛されてみたい。




 私を苦しめる獣ではなく、ただひたすらに美少女へ溢れんばかりの想いを捧げるあの人の、そんな熱い愛情をこの身で感じたいの。


 もはや憧れにも似た、さと寸への感情。私はいつかあんな「男性」に出会ってみたい。そして私をみつけて、その愛に溢れる一途なあなたのルートに乗っけてほしい。



 夢は、叶うものね。

 そして、叶えるもの。

 


 私は今日もあなたの美少女愛溢れる動画を観ながら、あなたに愛される事を願ってる。


 憧れでも、何でもいい。


 きっとあなたはこの世界にはびこる獣たちとは違う。その純粋な愛情で美少女を愛するがごとく、私を愛してほしい。


 よくある乙女の若かりし妄想なんか……じゃない。

きっと…きっとこの想いは現実となって私を満たしてくれるはず。




 さと寸さん。

 あなたは私が選択した、唯一の男の人。



 私と一緒に、愛のルートを歩いていきましょ? ね?



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