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47.もうお前しか見えないルート


 俺のチャンネルは…大分伸びてきた。


 もう一度言おう。

 俺のチャンネルは大分、伸びてきた。ふふ…。


 ここのところ落としたい美少女を一人に絞るスタイルを続け、何としてもその子と結ばれるよう、時には他の美少女からの半裸状態での魅力ある提案を切り捨て、そして今にも手を差し伸べてといわんばかりの、涙目ごっくん妹系キャラのお願いを無視し、途中参加してきた、ずっとあなたを見てました的な超絶美少女からの謎の告白をも断り、切磋琢磨、身を切るような一途な「もうお前しか見えない選択」をする事で、俺の動画に対するコメントも増え、特に美少女ゲームに対する熱い想いをもった視聴者からの励ましやアドバイス等が少しずつ増えてきた。


 コアなスタイルでありながらも勢いを増していく俺のチャンネルは、初見様達からの評判もよく、XOのつぶやきにもリプライ、フォロー、リツイート等も増え、俺の活躍の場が少しずつ広がって行くのを感じていた。



「いいぞいいぞ。この調子だと年内には登録者1000人を越えて収益化の資格が得られるかも知れない。そうなったら俺のチャンネル、もとい俺自身、何かしらの手応えを感じられるはずだ」

 


 しかし焦るな。しかし逃すな。今感じられるこの追い風に乗って、俺のチャンネルをもっともっと大きくしてみせる!



 しかし……ああ、わかってる。……わかってるってばよ!!



「ああ〜っ! だよなだよな! 夢との事もこれ位突っ走っていけたらな〜っ! あのディスティニーの夢の顔が忘れられねぇ〜っ! もう一度、また夢に会いたいし! でも今は事実、フラれたようなもんだし? 夢の漫画が描き終わるまで次、特に会う予定もないし? なんなら一瞬ブタに頼ろうとしたし? ある意味動画とバイト以外はヒマだし? 遅刻したし? 3枚目だし? スケベだしエロいし? まだ風呂入ってないからけっこう足臭いし? 入っても臭いし? 何なんだよ〜もうっ! 現実のルートはある意味ドン詰まりじゃねえかよっ! ……もっとこう、ただ待つんじゃなくて、せめて選択出来なくても何か自分から動き出せねぇかな〜っ。ちくしょっ!」



 ベッドにうつ伏せになり、暴れたい衝動を抑える。



「……どうすれば、どうすればまた夢に会える? 何かないか? 何でもいい! いや、何でもはだめだ! 何かこう、真っ当な…夢にとっても…っていうか、夢に直接関わるような………はっ!」



 相変わらずベッドで悶え続けていると、俺の頭の中でふと、ある考えが浮かんだ。



 先程のテンションとは妙に打って変わり、俺は冷静さを取り戻し、デスクの前に座り一考する。



「う〜ん………これか?」



 俺はスマホを取り、連絡先を選び相手の番号に発信する。



 ……いいのか悪いのか、とにかく出たとこ勝負だ。

 ビビリな俺でも、たまにはこうやって勢い任せで行くのもいいかも知れない。



 スマホの呼び出し音が数回鳴るも、一向に出ない。やばい……何か緊張してきた。



 やっぱ一旦電話を切ってもう一回頭を冷やして考えようかなと思った矢先 ー。



「もしもし」


「あ、夢か?」


「そうよ。誰に掛けてるつもりだったの?」


「いや、まあ…夢なんだけども」


「どうしたの? あっ、この前はありがとうね。ディスティニー」


「うん。こっちこそ、何か急に誘って悪かったけど、ありがとね」


「うん。楽しかったね」


「そうだな…」



 夢はきっと急な連絡で何だろうかと思ってるはずだ。言いにくくなる前にこのまま勢いで ー



「金田君と木葉、いい雰囲気だったね」



 あれ ー ?



「あ・ああ。そうだな。まあ、木葉ちゃんは人付き合い上手そうだし、金田も案外グイグイいっちゃう性格だからな。まあ気が合ったのかも知れんが」


「悟はあの2人、お似合いだと思った?」


「いやいや、金田と木葉ちゃんだと釣り合わないって! 木葉ちゃん、可愛くて明るいしけっこうモテるだろ? 金田はお調子モンだし、そんなに女の子の扱い慣れてそうじゃないしな〜っ」


「そう? 私はお似合いだと思ったけど? それに悟、勝手に金田君の事そういう風に言ったら失礼だよ? お似合いかどうかにモテるモテないは関係ないのっ。

 ……それに悟、木葉みたいな人がタイプなんだ? ふ〜ん…」


「えっ?何でだよ」


「さっき、可愛いって言ってたじゃん。まあ、木葉はモテるけどね」



 ……おいおい。ひょっとして、ひょっとしてだが……

 



 妬いてるのか? 夢は?




「いやいや、あんなの……ってか、失礼な言い方だけど、あんな娘はけっこう男からモテるぜ? あのルックスに性格、人当たりの良さ、どこに行っても引っ張っだこだって」


「ふ〜ん。そうなんだ。まあ、悟のタイプなんてどうでもいいけど」


「いや、だから一般論、ただ男性からみたらああいう娘はモテるだろうなって話しただけ!」


「そ。 何、必死になってんだか。別にいいけど」



 こいっつぅ〜っ!!

 もてあそんでやがる。



「まあ、また何かあったらみんなで遊びにでも行こうぜ」


「うん。そうだね」


「またどっか考えとくよ」


「うん…」


「………。」


「悟は……この前ディスティニーでさ……」


「…うん?」


「あの時…パレードの……」


「……パレードがどした?」


「その……振り返って…」


「ん? 何だって?」


「いや…何でもない」


「あ? おいおい。そりゃないぜ。何だよ?」


「いや、いいの。忘れて? 私の勘違いかも知れないし」


「何だよ、勝手に話し振っといて、勘違いかもって。

言いかけてそりゃないだろ」




 ー 何だ? 夢は、何を言いたかったんだ? ー




「いや、やっぱいい。本当、私の勘違いだから」



 こうやって一旦引っ込めるとよっぽどの事がない限り出してこない夢の頑固さはよく知ってる。それは俺の知ってる夢だ。



 しかし、こんな風に戸惑う夢は初めてだ。



「まあ、いいけど。いや、良くないけど。

 ……とにかく夢は、それこそあのパレードの時……」


「えっ?」


「……。」


「何……?」


「可愛かったなーっ」


「こらっ! 適当な事言わないのっ! ……あっ? 木葉ちゃんがタイプだって言われたから、照れ隠しにそういう事言ってごまかしてるんでしょ」



 俺は戸惑ってしまった夢を勝手にフォローしようと、今なら冗談で済むかと思い、何となく言ってみただけなんだが……だが……。



「もう、本っ当悟ってバカだよね? いつまでたっても子供みたいにそうやって人をからかって ー」




  夢、俺はもういつまで経ってもあの頃のままの、バカばっかりやってた子供じゃないんだぜ。




「男っていつまで経っても子供っていうけど、悟の場合はきっと持ち前の天性よね! いくら幼馴染だからってそんなにからかって良いもんじゃないんだか ー」


「いや、からかってないよ。」





 もう、どうにでもなれ ー


 



「えっ?」


「からかってなんか、ない」





 もう、抑えられないんだよ ー





「……ほら、また。そうやって私をバカにしてからかっ ー」


「からかってないよ。夢は ー」


「 ー?」


「夢は、本当に可愛いよ。俺の大好きな人だ」









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