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45.2度目の約束

「きひひっ。あの2人、上手くいくかな」


「だといいな。アイツの事だからパレード見てる最中もきっと頭ん中は夢ちゃんでいっぱいいっぱいなんじゃねえかな。それにしても木葉ちゃん、ナイス作戦だったね。自然な流れで上手く2人交代にして席取りを仕切ってくれて…もしかして木葉ちゃん、キューピッドとかって呼ばれてない?」


「うん? 言ってる事はよくわかんないけど、あそこは私の超オススメスポットなんだ! あそこで告白すると大概の女の子は落ちちゃうっていう噂があって、女の子に告白するなら絶対ハズせないってスポットだから!」


「あの2人は幼馴染とはいえ、っていうかそれが故に一線越えるのが難しいって所もあるんだろうけど、悟が多少、しどろもどろでも夢ちゃんはきっとその辺りわかってるだろうから、後は悟次第だな」


「悟君はきっと大丈夫だよ? 

 あの人はいろいろと〈持ってる〉しね!」


「だな。まあ一筋縄ではいかねえかも知れんが、後はアイツら次第だ。まあ、とにかく俺は木葉ちゃんも同じ事を考えてくれてたって事が嬉しいね。これもやっぱ俺と木葉ちゃんのディスティニーってやつ?」


「うん。やっぱり言ってる事はよくわかんないけど、とにかく後はもう2人にお任せするしかないね」


「まあ、一応〈保険〉を持たせたけど、アイツいっぱいいっぱいになって変な使い方してなきゃいいけどな」


「保険?」


「あ、いやまあ、ちょっとしたな」


「とにかく、私達は出来る事はやったんだから後は2人にお任せしよう! さっ! パレードパレード! ほらっ、楽しむよ〜っ!!」


「だな。……でも、ひょっとすると夢ちゃんはアイツの事……ってか、アイツの相手をする夢ちゃんが、俺は心配になってきた」



 もう木葉は金田の言葉には耳を傾けず、パレードに没頭し初めていた。


 




 カチッ ー。「ブッ。ずっと大好きだったよ」




 えっ ー?

 何で? 何で今こいつが…


 ヤバい。思わず夢に見惚れながら握りしめちまってた。


 しかも、よりにもよってこんなセリフ。


 いやいや、タイミング良過ぎるだろう。まさか金田が何かしらセッティングを……いや、言葉はランダムに出るって言ってたしな。


 マジかよ。どんな偶然だよ。

 



 俺はこんなの ー 選択してねえぞ ー!!




「えっ? 何? 何か言った?」



 ー?


 えっ?


 夢は俺を見つめながらきょとんとしている……。

 

 聞こえては……いないのか?



「何か変な声したけど、何て言ったの?」



 そうか……きっと夢は理解してない。今のは聞こえてない。ノーカンだ。



 今は、今はそのほうが……



「いや…金田からさっき土産を預かってポケットに入れてて、それが何か喋ったというかあの……何かしらスイッチでも入ったのかな」



 情けない言い訳しか思い付かない。



 いくら夢への気持ちを封印した(?)とは言え、こんなシチュエーションで、しかも神がかり的なタイミングからのこの子ブタのクリティカルヒット。こんな思ってもみなかった展開を無駄にしたくはないが、やはり俺は今、夢への気持ちはまだ伝えられない……いやいや! っていうか、俺はただ夢のそばにいられればいいんだ! 夢の力になっていられればいいんだ! 俺の気持ちとかそんなん今はどうでもいい! 


 これ以上、夢に自分の想いを伝える事で夢との距離が離れるのは嫌だ、せっかくの再会を台無しにしたくない。例えまた昔のように夢に片想いをするだけの俺になったとしても ー。




 しかし…このクリティカルなルートには、正直乗っかりたい。乗っかってみたい。




 いつか、俺が夢へ自分の気持ちを伝えられるような事があったら、その時、今のようなこんなお膳立てのされた状況に、またなると思うか? ……いや、そうそうないだろう。こんな…金田や木葉ちゃん、そしてウィッキーとこのシチュによる、おせおせいけいけのバックアップ体勢が整っているのは、恐らくもうないだろう。




 しかし、やっぱり ー。




 いつか夢に自分の気持ちを伝えられる日が来たら ー。



 俺は自分で、自分の言葉で伝えたい。


 やはり、俺はそうしたい。




「ごめんな。何か」


「いや、いいんだけど。どうしたの? 何かあった?」


「いやいや、何でもない…。…ああ、夢は相変わらず可愛いなって」


「ばか。何言ってんのよ。思い付いたように言わないでよっ」


「……。」


「それより、ほら! 来たよ! デッキーが! ほらほらっ!」



 俺は夢に促されるまま、パレードの方に向き直り、恐らくディスティニー1番の人気者、デッキーとデ二ーの行進に目をやる。


 キラキラと輝く衣装をまとい、光の中で踊るデッキーとデニーは、まるでその空間は別世界とでもいうような、そして二人の愛が世界中に溢れているかのようなファンタジーの世界に、そこにいた観客、俺も含めみんな見惚れていた。




「綺麗だね。デッキーとデニー……」


「ああ……そうだな」


 


 俺はデッキーとデニーを見つめたまま、夢の言葉に相槌を打つ。





……いつの間にか俺は、見つめ合うデッキーとデニーの2人の世界に、俺と夢を重ね合わせていた。






 パレードが終盤に差し掛かる頃、ツンデレラ城がライトアップされ、様々なディスティニーのキャラクターによるプロジェクトマッピングが始まった。


 夢は登場するキャラクターを一人も逃さないように、スマホを向けて動画を撮り始める。


 そしてその後、城を囲むようにいくつもの盛大な花火が打ち上がりようやっと、今日のパレードイベントは終了した。



「ああっ! 最っ高に楽しかった! ディスティニー最高っ!」



 パレードイベントの終了と、そしてそれに伴い閉園のアナウンスが流れる中、興奮冷めやらぬ幸せそうな笑顔を浮かべる夢に俺は、



「よし、アイツらと落ち合うか。行けるか?」


「悟! 悟もすっごい楽しかったでしょ? もう一回観たい!」


「おいおい。無茶言うなよ。また今度だな」


「えっ? いついつ? いつにする?」



 夢はすっかり興奮し切っていて、まるで子供のような目で真っ直ぐ俺を見つめる。



「…じゃあ、夢の漫画が完成したら…かな?その時はご褒美に連れてきてやるよ」


「本当に!? わかった! 私、頑張るから! 悟、今の約束だからね! 絶対だよ!」


「ああ、大丈夫だって」



 何だよ……大丈夫って。



「言ったね? よしっ! やったっ! 

 ふふっ。嬉しいっ。好きな事やって、悟にディスティニー連れて来てもらえるなんて最高っ」



 夢は名残惜しいのか、また城の写真を撮り始めた。


 俺はスマホを取り出し、金田に電話する。



「もしもし?」


「おおっ、どうだ? バッチリ告れたか? それとパレードは楽しめたか?」


 

 俺は写真に夢中になってる夢から少し離れて、会話を続ける。



「いや、お前らが勝手にセッティングしてくれたとはいえ、なぜ告らにゃならん。まあ、とにかくパレードは楽しんだよ」


「何だよ〜っ。せっかく俺と木葉ちゃんのダブルキューピッドでセッティングしてやったのによ〜っ。

まあ、悟の事だからギリギリおじけづいたのか? ウィッキーは使ってねえのか?」


「いや、思わぬ所で勝手に鳴ったが…いや、それよりも、これから出口の方に向かうからよろしく。また着いたら連絡する」


「はいよっ。後日反省会だな」


「やかましいっ」



 俺は電話を切り、夢が気が済むまで写真を撮り終えるのを待ってから2人のいる出口の方へ向かった。




 2人と合流した後、俺達は立山への土産(?)しか買ってない事に気付きもう一度時間ギリギリまで、土産グッズの店に入り各々、早々に買い物を済ませ、名残惜しさを感じつつディスティニーランドを出た。

 



 今日の事を振り返りながら、はしゃぐダブルキューピッドと夢の後ろで、俺は何となく、ポケットに入っているウィッキーを呼び出した ー。



 


 カチッ ー。「ブッ。ずっとそばにいるよ」




「……ディスティニーだな」



 


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