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なげやりクリティカル  作者: さと丸


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43/113

43.俺はまだ、ルートにいる

「いや〜っ。もう大分乗れたんじゃね? こんなにも上手くホイホイと乗りたいアトラクションに乗れるとは思わなかったぜ」


「まあ、私のディスティニー愛からなる、緻密な計算のお陰かな? まあ、ブリキの海賊をあえて飛ばしてキタコレに向かうって判断した金田君のファインプレーのお陰ってとこもあるね! あの判断のお陰で、まさかのもっかいビッサンに乗れたのは正直デカかったよ!」


「いやいや、まあ、俺も楽しみながらも常に周りの状況を判断するこの鷹の目の能力? の甲斐あってか、木葉ちゃんにそこまで喜んでもらえるのは嬉しいよ。きっとこれも少なからず木葉ちゃんが俺にディスティニーを感じてくれちゃってるおかげかな?」


「うん。言ってる事はよくわかんないけど、とにかくありがと。この調子なら、あとはソアラン乗る前に、チャイニーズボニーの担々麺に寄れる時間あるね」



 俺の乗りたかったアトラクションはしばらくすると一つを除いて「運営再開」になり、それ以外の乗りたい物には全て乗れた。きっと金田と木葉ちゃんがいなかったらこうも上手く、みんなの乗りたかった沢山のアトラクションを網羅することは難しかっただろう。


 遊びとはいえ、頼りになる存在がいるというのは嬉しい限りだ。やっぱりいいよな、たまにはこういう所に来てみんなで遊ぶのも。



「あとは夢の乗りたかったソアランでおしまいだけど、閉園までは余裕あるから、何なら最後のパレード観ちゃおっか? なるべくいい席探して」


「いいね〜っ! ほぼ乗りたいものは乗れたし、やっぱそうなると後はパレードだな! な!」



 俺もみんなの満足している顔を見てうなずく。



「そうだな。今日の締めくくりにみんなで観るか」


「よっしゃ! じゃあまずは改めて腹ごしらえだ!」



 先行く金田と木葉に付いて行くように、俺と夢は示し合わせるでもなく、自然と少し離れて2人の後ろを歩く。



「今日は、どうして誘ってくれたの?」



 夢は今日買った、頭に掛けているキャラ物のサングラスをいじりながら俺に話し掛けてくる。



「ああ、その……行きたいかな? って。女子は好きだろ? こういう所。それに兄貴は4枚くれたけど、正直俺にはそこまで消化できる程の連れがいなくてな。まあ、あとあれだ……。この前の事…もし夢が俺に色々と気を遣ってたら、せっかく再会出来たのにあのまま、変な距離ができたら嫌だなって」


「そっか」


「……あれから、漫画描いてるのか?」


「うん。悟に読んでもらって、感想聞かせてくれた後、何かちょっと自信がついちゃって、アイデアもちょくちょく出て来て今は結構忙しい」


「よかったな。じゃあまた描き溜まったら見せてほしいな」


「う〜ん。悟はまあ、唯一見せた人だけど、そうやすやすと何度もは…」


「あ……ごめん。ちょっと調子に乗ってた。かも」


「嘘だよ。まあ、悟には何とか…免疫付きそうだし、また感想聞かせて欲しいから、いいよ。まあ、でも…」


「……何だ? …ひょっとして」


「条件付きで」


「やっぱそうかよ。…まあ、それはいいとして…何だ? 条件は」


「まだわかんない」


「えっ?」


「まだ、わかんない。だから出来たら、その時につける」



 どんどん先に歩いていく金田と木葉は、こちらに気付く様子もなく、仲良くいろんな景色の写真を撮りながら盛り上がっている。


 全く2人の事を知らない人が見たら普通にカップルに見えるだろう。



 少しずつ、夕日が沈んでいく ー



「そんな、無いなら無理して条件付けなくてもいいんだぞ? それこそ俺は無条件で何度でもお前の漫画を読む耐性は付きつつある。何せあれから少し…実は少女漫画を読んでみようと思って…読んでるんだ」


「えっ? そうなの?」


「ああ。なにも知らないよりはそういうジャンルを知っていた方が、夢の漫画に対してもっといいアドバイスが出来るかも知れないだろ? それに、まあ何だ…いざ読み始めると、確かにイマイチなのもあるがけっこうハマるものもあってな」



 俺は夢の力になりたい。


 少しでも夢のそばにいて、応援し、支えてやりたい。


 これは俺が夢にフラれてから決めた事だ。


 そこに駆け引きはない、と言えば嘘になるかも知れないがいつかきっと、夢にとって大切な、そして夢の事を支える事が出来る人が現れるまでは、俺はずっと夢のそばにいる。そう決めたんだ ー。

 

 悪あがきだろうが、カッコ悪かろうが、何だっていい。ただ俺は、このずっと恋焦がれていた無理目な美少女をそうそう忘れる事は出来ない。


 夢がもういいと言うまで。

 その時はきっと、離れるつもりだ。


 だから今、悔いのないよう、後悔の残る事がないよう、俺は精一杯、この美少女を愛する。

 


  それが今唯一、俺のできる選択だ。


 

「お〜い。入るぞ〜っ」



 先を歩いていた出来てホヤホヤの熱々カップルみたいな2人は、いつの間にか立ち止まり俺達に手を振って待っていた。夢は頭に掛けていたサングラスを目の前に下ろし、走り出しながら言った。



「次の条件思い付いた、私に勝ったら漫画読ませてあげる!」


「マジかっ! ずるいぞ!」




 のんびり歩いていた俺は不意をつかれながらも、必死に夢の後を追いかけた。




  今はまだ ー このままで。



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