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なげやりクリティカル  作者: さと丸


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40/117

40.これもディスティニー

「おっはよー! 悟君っ! 今日は誘ってくれてありがとうねっ! 今日は一緒にディスティニーな1日を過ごそうねっ! よろしくっ!」


「ああ、おはよう。元気だね、木葉ちゃんは。そんなテンションで一日持つか心配だな」


「いやいや、悟君、こんなのふっつ〜の朝のテンションでしょ? 逆に悟君こそ、大丈夫? そんなテンションで1日持つかな? 元気は出せば出すほど体中からみなぎるんだよ! ほら、出して出して!」


「う・ういっ! オラッ! オラオラッ!!」


「あははっ! 何でパンチ出してんの? しかもけっこう遅いし。やっぱウケる! 本っ当、悟君は最高だね! ねっ? 夢」


「2人とも朝から、しかも駅でそんなにはしゃがないで! 恥ずかしいから…悟もすぐ木葉に乗せられるんだから」



 俺は何故か幼馴染の悪ふざけよろしく、急に夢をからかいたくなり、



「え? そう? そんなにはしゃいでないけどな〜っ! 何なら、もうちょっとはしゃいでみようか?」

 


 俺は木葉ちゃんにそそのかされた時よりもっと、テンション高く拳を繰り出した。



「オ〜ラオラオラオラオラッ!!

  オラオラオラオラオラァーっ!」


「いや、だから遅いって!」



 木葉ちゃんは俺のオラオラパンチにやられたのか笑い転げてますますうるさくなる。



「もう……本当に勘弁して」



 ついにそっぽを向き他人のフリをし始めた夢は駅の時計に目をやり、すぐまたこちらに向き直した。



「ねぇ、悟の友達まだ来ないんだけど大丈夫? あと5・6分で電車来ちゃうよ?」


「ああ、普段バイトでも遅刻するような奴じゃないんだけどな……ちょっと連絡してみるか」



 俺はスマホを取り出しその「友達」に連絡しようとした所、奴がこっちに向かって走って来るのが見えた。



「あ、きた」



 必死になって走ってくる俺の今日の「友達」こと、金田。……いや、他にも俺の少ない友達候補からアテはあったのだか、みんなことごとく予定が合わず、最終的に困った俺はこの結婚相談所こと、キューピッド金田を誘った。


 二つ返事で行くと意気揚々としていたが、実はバイトの立山に無理くりシフトを変わってもらったらしく、そこまでこいつが意気込んで今日来た理由は2つだ。


 一つは「女子(美少女)2人付き」という、そうそう俺達には縁遠い組み合わせでディスティニーに行けるという極めて稀な機会である事。もう一つは、俺の無理目の幼馴染の夢を、一目見てお知り合いになる為だ。「類は友を呼ぶ」そう言う金田は、その無理目な美少女幼馴染の友達はきっと、美少女なはず! 故に「無理目はあえて眼中にない。お前の獲物だしな。俺はその、おこぼれというのもおこがましい、美少女という名のおこぼれに預かりたい!」との事で、自分の男としてのレベルは一切ド外視で今日ここにやってきた。

 

 まあ、その心意気は買おうではないか、しかし今日夢の連れてきたお友達は、脅威であり女神であり爆弾でもある、こちらも一筋縄ではいかない美少女だという事を、こいつはまだ知らない。


 確かに「類は友を呼ぶ」だが、見た目だけではなく、中身も色々とやっかいな所も同類の可能性があるんだぜ。



「ごめんお待たせ! 間に合った〜っ!!」


「おう、おはよ。おせーぞ。まあ間に合ったが」


「悪ぃ悪ぃ。 余裕持ってもって家出たつもりが途中で忘れ物に気付いて。とにかく、お待たせ。

……あ、どうも初めまして! 金田かねだ 智也ともやです! 今日はよろしくお願いします!」



「よろしくねっ! 私は桃野 木葉。木葉って呼んで? で、こっちが悟のいいなづけの夢っ!小山内 夢!」


「何でそうなるのよっ!……よろしくお願いします」


「じゃもう行こうか。電車が来るから」 



 4人は、改札を通りすぎ足早にホームに向かい、ちょうど来た電車に乗り込む。



 週末の朝早い時間はさすがに電車も空いていて、俺たちは向かい合う4人用の席に座り込んだ。



 席に着いて落ち着く間もなく、木葉ちゃんがウキウキルンルンのテンションで語りかけてくる。



「ねぇ、みんな乗りたいものはもう決めた? 私は絶対、スプラッシュボヘミアン! あとは宇宙ウォーズとポーさんの唐辛子ハント! ボヘミアンは少なくとも2回は乗りたい!」


「俺はそうっすね〜。アラドンとボヘミアン、あとブリキの海賊とあと、出来ればビッサンマウンテンにも乗りたいっすかね! あ、あと出来ればホウスのカレーが食いたいっすね!」


「そっか! じゃあそこらも行こう! ちなみに、金田君は悟君と同い年だよね? だからタメ口でいいよ? ウチらもおないだから」


「あっ? そうなの? じゃあそういう事で!」

 


 金田は今のところ、木葉ちゃんのヤバめには気付いていない。とはいえまあ、俺は夢の幼馴染という事もあってか色々とイジられただけかも知れないので、勝手にヤバいというのはある意味失礼か。ごめん、木葉ちゃん。こいつの事、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。



「夢は?」


「う〜ん。私は実は先々月、家族で行ったばっかだから、ある程度みんなに合わせるよ。あ、でもソアランと美男と野獣は乗れなかったから、出来れば乗りたいかも。あと、チャイニーズボニーで担々麺、それとワッフルは食べておきたいかな?」


「いいよいいよーっ。で、悟君は?」



 うん。きっとくると思ってた。


 こういうのって人とカブると何だかなって感じがして、なるべく後半の方になるのは嫌なのだが、まあしょうがない……が、しかし! 俺の好きなアトラクションはまだ出ていない…! フフ…朝からツイているとは。



「…まあ? イースタン鉄道に、ジャンゴークルーズ、それと魅惑のゴキゴキルームに? 後はキタコレ・スモールワールド…かな?」



 俺はドヤ顔で、みんなからの「あっ、そっか〜っ! そこもあったね! しまったっ! ちゃんと抑えとくべきだった! 悟君、言ってくれてありがとね!」ばりのリアクションを期待していたのだが。



「おいおいおい」


「おいおいおいおい」



 金田と木葉ちゃんが口をあんぐり開けて残念な眼差しを俺に向ける。



 しょうがないな、といった面持ちで木葉ちゃんが、



「いや、いいよ? いいんだけど、今みんなの希望を聞いてるのは人気アトラクションなの。いい? 人気アトラクションはただ乗りたいから並ぶんじゃ駄目。ちゃんと待ち時間の予想、回るルートを計画し、もし予想以上に混んでいたら次に回る予定のアトラクションを優先してそっち向かうか、とか色々と考えて行動しなきゃだめなの。悟君の言うアトラクションは全然いいよ? 行こうよ? でも今は何をおいても最優先に回りたいアトラクションを絞って効率よく回らないと、元が取れないってもんなの。いい? だから悟君もよく考えて? 何に乗りたい? 言ってみ?」


「……いや、だから計画も何も今言ったのが俺の乗りたいアトラクションなのだが」


「マジか」


「本当に?」


「マジけよ」



 おいおい…夢まで。


 なんか俺、変な事言ったか? あん?



「ま・まあ、そっか……それが悟の乗りたいアトラクションなら、当然そこも入れなきゃだな! じゃあそこもしっかりルートに入れて計画立てようぜ!」


 

 そう言い、金田はぼそっと木葉ちゃんに耳打ちをする。



「木葉ちゃん、よかったね。悟の意見はある意味()()()だ。これ以上、人気アトラクションが出てたら逆に大変だったかも。ここは悟のファインプレーってやつで」


「そうね、私もそう思った。これならみんなが満足するように回れるんじゃない?」



 何か、金田と木葉ちゃんが顔を近付けてヒソヒソと話している。何だ? もうそんなに仲良くなったのか?




 俺のそんな思案をよそに夢は、俺に口パクで「よかったね」と呟き、窓の外に目をやった。





 さて、今日はどうなる事やら。



 何も起こらず、無事に楽しい1日になればいいのだが。



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