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4.時にあなたは…

 本当こんな会話、どうでもいい。しかし必要な時間なんだろうな、きっと。しかも周りの男共はこんな無理目の美少女と会話出来る事自体、羨ましいと言わんばかりに鋭い羨望まじりの視線を刺してくる。


 まあ、俺の目指してるステージはこんな所じゃないがなフフ……。


 夢と話しながら自分なりに沢山の情報を夢から入手する。出来てんのか知らんけど。


 ほんの少しアッシュに染まったような栗色の、ほどよくカールされたうるツヤセミロングの髪。眉と瞼の間に綺麗に収まった絶妙な長さの前髪。


 夢が少し体を動かす度に、シトラス系にほんの少し何かイチゴ?(よくわからん)の果実の香りが足された男心をくすぐる、女子ウケもしそうなズルい香水。

 淡いピンクの花柄ワンピの上に羽織る絶妙な色合いのジージャンがガーリーとボーイッシュ感を足した、可愛い過ぎずそして子供過ぎないファッションセンスのバランス感覚の良さ。よく見かけるファッションで、ちょっと前に流行ったスタイルなのだが、明らかに夢自身のセンスの良さが伝わってくる。あれだ、男女問わずよくある、ファッション雑誌に載ったコーデを真似てみたけど、やっぱり何か違う…あ、やっぱモデルが着てるからだ、と気付いたような感覚。


 そしてこの大きな瞳。丸く見開いてはいるが、どこかキツそうに見えて、しかし目尻が微妙に垂れて可愛気もあり、俺が一番好きなタイプの目。いやらし過ぎない程度にスッと筋の通った鼻、そしてちょっぴり膨らんだ頬。小さい口。何食べれるんだ、その口で。


 たまに髪を耳にかける仕草、その都度甘い香りが俺の鼻腔を通り過ぎて脳天に着き刺さってくる。色んな意味である種、夢の存在は暴力だ。


 なんせ夢は色々と全て整ってる。ファッション・スタイル然り、狙ってやってんのかどうなのか…多分狙ってないんだろうな。好きな事してそれが良い意味で周りを惹きつけてるんだろう。


 ただ、ネイルだけは本来の色なのか、特に主張してない、手入れしてるのかしてないかわからないくらいの抑えめの感じで、少し光っている。


 そういうとこ、好き。


 俺の視線がヤバかったのか、夢は目を逸らしながら、


 「いいよ。今日はカメラ買いに来たんでしょ?悟にとっても急だろうし、またよかったら今度兄貴に会って。是非にとは言わないけど、是非に」


 「どっちだよ」


 「会ってほしい」


 「何で俺なの?」


 「ピンときたから。それに久々に会ってみたいかなって」


 「それは俺が決める事だろ」


 相変わらず強引だ。でもまあ夢はそんなだったかな……。


ーしかし、何か引っかかるー


 (何で俺だ?ピンときたって何だ? ー 何か隠してるのか?)


 「わかったよ。会うよ。俺も久々に会いたいし。

それにー」


 「また私にも会えるしね」


 「ぐっ……」


 「ははっ。『ぐっ……』だって。漫画じゃなくて実際に言う人、初めて聞いた」


 「夢にとって……初めてのやつになっちゃったな」


 「は?バカなの?」


 「それは知ってるって!お前も知ってるだろ」



 俺はいつもバカにされてた気がする。

 いや、悪い意味じゃなくて。でもそれが何故かコンプレックスのような、何とも言えない悔しさのような行き場のない厄介なものとして、俺の心にいつもあった。

 こんな感情、久々に思い出した。いや、忘れようとしていただけか?


 「じゃあ連絡先、交換しようか」


 「よかろう。ありがたく思われよ」


 「はい」


 互いにスマホを取り出しあっさりと連絡先を交換する。



 ーなんとまあ、あっさりと。



  長年、思いに思いを馳せた幼馴染との念願の再会で、遂に連絡先を交換出来たのに、何故がそこに思った以上の感動はなかった。全然なかった。

 家族とか男友達とか、今更になって当たり前のように何の感慨もなくただやり取りをするような感覚。


 ーやっぱり俺達って、ずっと繋がってたからなのかな。そういう事なのかなー


 「よっしと……。ところで夢は今何してるの?大学?」


 「ううん。行ってない。私高卒」


 「そう?そうなの。そっか」


……なるべく平静を装うように、こちらから聞いておきながら、特に興味ないって感じで返答をした。

 別に俺は学力至上主義じゃない。しかし、何か思っていた、俺の夢のイメージじゃなかった。

 まあ、勝手にイメージだの何だの決め付けられたら相手にしてみりゃ失礼ってもんだが。


 「私、今やりたい事があって…っていうか、もうやってるんだけど、それをやりたくて大学には行ってないんだ」


 「そうなんだ?何やってんの?」


 「言わなきゃだめ?」


 「おいおい、今のそういう流れだろ」


 「……漫画」


 「へっ?」


 「漫画。漫画家目指してんの」


 「マジけ……」


 「何よ、そのダサい言い方」


 俺の友達のベトナム人が、何かある度に「マジけ・マジけ」と連発していたので、それが何故か面白くて、俺自身それにハマり、事ある毎にそんな言い方をしてた。……しかし何で今、それが出た?


 「へ〜っ…漫画描いてたんだ」


 「うん。今話すつもりなかったんだけど、何か話しちゃった。テヘ」


 「いや、何故可愛い子ぶる…。どんなの描いてんの?」


 「ごちゃ混ぜ。恋愛、コメディー、それとシリアスなテイストを入れながらもちょっぴり泣けるような」


 「忙しいなオイ」


 「……昔から描いてた訳じゃないよ。高校生の時、自分の進路をそろそろ考えないとな…って時期に、進路を考えるのがイヤで、漫画好きだし漫画書いてやり過ごそうって思ってたら、そこからいつの間にかずっと描いてて、その時に、あ、私の進みたい道はこれだって。だからそのまま進路希望も漫画家がいいって。親にはダメ元で話したら、あっさりいいよって。でも自分で責任取りなさいって。ダメだったら遅くからでも大学行けばいいって言ってくれて。でも行く気ないけどね、大学」

 

 夢はずっと俺から目を逸らし、今の自分の状況を話した。久々に会ったばかりの幼馴染に自分のやりたい事を話すのが恥ずかしいのか、視線はずっと窓の外の道路に向けたまま。でもなんかその眼差しは真っ直ぐでー


 「そうなんだ。夢が漫画家って…以外」

 

 何か、口から出てしまった。

 いや、何が以外なんだ?


 「別に何目指したっていいじゃない。私は今それがずっと楽しくて今はその事以外考えられないし、やめるつもりもないし。でもやっぱなりたいけどね。漫画家」


 「……もう、なってんじゃん」


 「は?」


 「もうなってんじゃん、漫画家」


 「……えっ?どういう…?」


 「だから、もうなってんじゃんって。漫画家に。

ずっと描いてんだろ?楽しいんだろ?やめられないんだろ?もう夢は漫画家だよ。立派な」


 「うざ」


 「マジけ」


 「……でも今はまだ、誰にも見せてなくて、自分の納得できる物に仕上がったら、ゆくゆくは色んな所にアップしたり出来たらなって」


 「今度読ませて。今まで描いたの、何でもいいから。それは俺が決める事じゃないけど」


 「う〜ん……まあでも確かに、人に読んでもらわないとね。でも、悟ってのが」


 「おいおい、読者を選ぶなよ」


 「いいよ、わかった。兄貴に会ってくれたら」



 う〜ん、ちゃっかりしてる。

 そういうとこ、好き。

 


 「悟は?今、大学生?」


 「いや、実は俺も大学には行ってない……もうちょっと言うなら、高校を中退して……」


 そうなんです。ワタクシ、学力至上主義ではありません。人のこと勝手にイメージと違うとか何とか好き勝手な事を言っておりましたが、訳あって中卒でございます。かしこ。


 「なんで辞めたの?」


 「いや……まあ、自己都合で。どんな理由でも、こういうのって言い訳に聞こえるし……まあとにかく辞めたんす。」


 「ほーっ。そっか」


 「でもその後、高卒認定受けて一応合格して自分なりにケリをつけた、っていうか自分なりに落とし所をつけたというか、まあそんな感じ」


 「ふーん。色々あんだね」


 「色々って、学歴の話ししかしてないだろ」


 「まあ、とりあえず元気そうで何より、かな。じゃあ悟は今、何かやってんの?フリーターとか?就職してるの?」


 「うん、フリーターやりながら、実は俺もやりたい事やってて……」


 「なになに?」


 「言わなきゃだめ?」


 「そういう流れでしょ」


 「……動画クリエイター」


 「ん?」


 「動画クリエイターをやっていきたいなって」


 「あれ?あのYou Chubu的な?」


 「うん。あれ。そんなの」


 「マジけ」



 おい、パクるな。

 

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