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25.夢の鉄板ルート part②

「……おいおい。勘弁してくれよ…」



 俺の渾身の思いを込めた「お好み焼きひっくり返しタイム」を夢に邪魔されてしまった。


「はははっ。 悟って本当面白い」


「意図せず取れた笑いほど自分が無価値に感じる事はないわ。……どうすんのよ、これ。……あ〜あ」



 まあ、俺が勝手に動揺してミスったんだが。



「大丈夫。もうこのまま半分に切っちゃって残りをひっくり返せばいいじゃん? 味変わらないし」


 俺からコテを奪い取った夢は手際良くお好み焼きを切り、裏返し未遂の残り半分を器用にひっくり返す。


 それぞれに焼かれる事になったお好み焼きを、離れ離れになってしまった母をたずねて三千里のマルコを思うような寂しい面持ちで見つめる。



……ああ。今からでもくっつけたいな。



 俺は真っ二つに分かれたお好み焼きが気になって仕方なく、再び一つにして焼きたい衝動に駆られるが、今、2つのコテは夢が握っている。



「ほら、私が美味しく焼いてあげるから、悟はもう何もしないで待ってなさい」



 今、俺は夢からコテを奪い取る作戦も度量もない。


 ここは大人しく、気分を変えて美少女に焼かれるお好み焼きを楽しみに待つとしよう。



「で、いるの?」


「ん?」


「好きな人。もしくは彼女。……う〜ん、彼女は今いないのかな? たまに連絡取ってても、何だかんだ忙しそうにしてるし、もしいたら今までのLaneでのやり取りや言動でわかるし」


「お前は何故そう決めつける? 超能力者か?」


「いや、女の勘だよ。でも悟、真面目そうだしもし彼女がいたら今日の事もきっとそわそわしてるだろうし、それなら私も気付くと思うから」



 う〜ん……なかなかに、デキる。夢の推理。


 確かに夢の言う通り、俺はわかりやすい人間だし? いつも見透かされている気もするので、きっとコイツに隠し事は出来ないだろうな。


 まあ、夢以上の女性は考えられないのだから彼女はいなくて当然、それは当たり前だ。



「まあ、その通りだ。彼女はいないよ。俺は理想が高いんでな」


「いや、あなたの理想は聞いてないんだけども。私にはわかるのだ。悟の事は何でも」


「まあそうタカをくくってればいい。心配されなくても彼女位作るし」



ー ふふん…俺はいつかお前に告白するんだぞ?



 その時はもう既に夢、お前は俺に惚れている……! あの時、悟に何であんな事言っちゃったのかしら……と後悔させてやる! しかし今はまだ、俺の気持ちを悟られる訳にはいかない。


 夢は焼かれたお好み焼きにソースをかけながら、ついでにマヨネーズ、青のりと鰹節をこれでもかとふんだんにかけてから、食べやすい大きさに切り分け、取り皿に移し俺に差し出してくれる。


……余談だが、鰹節と青のりは、どちらを先にかけるのが正解なんだろう……。



「おっ。ありがと。いただきます」


「心して食べられよ」


「おう」



 幼馴染とはいえ、こうして改まって2人で飯を食うのはある意味初めてだ。…だよな? 少し緊張するが、まあ飯くらい美味しく食べよう。しかし俺は猫舌。寒いだろうと気を遣って駅ビル内の店にしたが、正直俺にとってお好み焼き(しかも焼きたて)は少々レベルが高い。

 ハフハフしながらでなければきっと食べられない。俺は夢の切ってくれたお好み焼きをさらに小さく箸で切り、俺はなるべく涼しい顔を装いアツアツのお好み焼きを口へ運ぶ。



 その刹那 ー 夢は見逃さなかった。



「で、好きな人は?」



ー ごふっ……!!



 俺はまたしても夢にやられた。


 自分のハフハフ、その子供みたいな食べ方をからかわれないようにと、ただその一心だった為、まさかここに来て夢の追随に襲われるとは思ってもみなかった。


 俺は一度口に入れたお好み焼きを不甲斐ながらも取り皿に出してしまった。


 ああ……いくら夢と一緒とはいえ、

食べる時くらい、ゆっくり安心して食べたい。



「何だよ。ゆっくり食べさせろよ」



 俺は虚勢を張るように捨てゼリフを吐き、夢の顔を見ないように一度出してしまったお好み焼きを丁寧に箸で持ち直す。



「う〜ん……これは」



……無視して、しかしハフハフしないよう、お好み焼きを食べる。



「う〜ん」



(……美味い。お好み焼きって、こんなにも美味かったっけ?いや、正直よっぽど具材に凝らないと味の変化はそんなにないだろう。店で使うダシの違いはあれど、何だろう…この美味さは。

……はっ!?……これは!やはり……美少女補正!?)



「いやいやいや……」



 夢は出来上がったお好み焼きを一口も食べず、ずっと俺の顔を見て何か呟いている。初めは何となく恥ずかしかったが、小さく切った2つ目のお好み焼きを食べ終わる頃には、何故かもう恥ずかしくなくなっていた。

 


ー からかわれているとわかっているからか?



 冷水で口の熱さをリセットしつつ、3つ目を箸でつかもうとした時 ー



「やっぱり!!」


「うるせえ! だまって食えよ!」


「悟、あんたはまだ好きな人いないね」


「ふっ ー ?」




 俺は今日この日 ー 初めて夢に()()()気がした ー。








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