21.インテルメッツォ
「結局のところさ、まほリンが出前中の隼人を捕まえちゃったから のんちゃんが待ちぼうけくらったんだよなー 俺の徘徊ルートに間違いはなかったと思うんだけど まあしかしその前の選択からちょっと危いとこもあったし? 今回の『限界スプラッシュ』に関してはまあここが落とし所なのかもね とにかく、次回はもう一回出前ルートの見直しをしつつ、美容院でオシャレレベル上げてからもっかい公園の方に行ってのんちゃんを待とうと思います! じゃあ今回はこの辺で! どうもさと寸でしたーっ! また次の動画でっ!! ご視聴ありがとうございましたーっ!」
「ふう。」
俺はマイクのスイッチを切り、録画ボタンをストップしてヘッドホンを外す。
慣れてきた配信作業。
必要な場面、カットするべきトークとシチュ、ある程度先を予測した上での選択シーンでのコメント。嘘はないが、なるべくその時の感情を臆する事なく前面に出しながら動画全体の流れをイメージしながらゲーム収録が出来るようになってきて、この週3〜4回の動画配信も小慣れてきていた。
そろそろ、一本ずつのゲームを配信するだけじゃなくて、他のゲームも同時進行でアップして行こうか。
何かしら配信の仕方に幅を持たせてチャンネル自体をもっと成長させたい。
「さあ、風呂に入ってパパッと編集しちゃいますか」
全裸になり浴室のドアを開けようとした瞬間、携帯が鳴る。
夢からのLane。
風呂から上がってから読もうかと思ったが、この前の件以来、初めてのメールだ。しっかり読んで風呂に浸かりながら返信メッセを考えるかと思い、そのままLaneを開く。
「こんばんは 先日はどうもありがと 遅ればせながらだけどお礼言っとこうと思って 兄貴とはあれから特に何も話してないんだけど まあ何かあったら兄貴から話してくると思うからこっちからは聞かないようにしてる また兄貴から悟に連絡があった時はよろしくね とにかくありがとう」
特に、思っていたほど重くない、差し障りのない程度のお礼メールだったので、俺は早々に手短に返信した。
「こちらこそありがと 久しぶりに晃弘君に会えてよかったよ 色々間に入ってくれて申し訳なかった
了解 改めて晃弘君の連絡を待つよ どうも」
さっそくの返信
「うん またねー」
これで、よし……と。
さあ、ひとっ風呂 ー。
……いやいや! 待て待てい!!
俺はもう一度スマホを手に持ち、夢にLaneする。
「おい、何か忘れてはいやしませんか?」
夢は特に忙しくないのか、チャットばりの既読スピード&返信メッセで俺に対応する。
「何? 何を?」
「いや、漫画だよ! マンガの件だよ! 晃弘に会うって件と引き換えに夢の漫画を見せるって」
思わず晃弘なんて、呼び捨てで送ってしまったがそこは夢も特にお咎めないだろう。
すぐに既読にはなったが、先ほどのようなスピードで返信はこない。
「あーあれか」
「そだ。あれだ」
「何か あれだけウチの兄貴に優しくしてくれたのに 私としても今は少しながらでもあんたに感謝してるのに またそういう事ぶり返すんだ」
……何を言っているんだ、こいつは?
どうやったらそういう思考回路になる?
「いや そもそも俺は約束した時点で晃弘君から何の話があるかも聞かされてなかったし 夢もその約束と引き換えに漫画見せるっていってたよな? 今俺はお前に対してどんな寛大な心を持てば夢の漫画を見る事が出来るのかな 教えれ」
直接電話を掛けてどなってやりたい衝動にかられながらも、努めて冷静に、というか静かな怒りをLaneに載せる。
ー 返信。
「わかった そんなに見たいんだ? いいよ」
……。
何か、腑に落ちない感が満載だが、そうだ。奴はきっと俺をからかって楽しんでいるんだ。そうに違いない。
ここで大人気なく怒っていてもしょうがない。俺の目的は夢の漫画を読むことだ。相手は夢だ、無理目の夢だ。一筋縄では行かない事はわかっていた。
ここはひとまず大人の対応で夢の挑発には乗らず、スルッとやり過ごす事にしよう。そうすれば夢も「つまんね」とシラけるだろう。
「ありがとう 何かごめんな無理言って 大人気もなく約束約束ってうるさかったな 悪い」
「ほんとだよ」
しばく! 次会ったらしばく!!
素っ裸で怒る俺はいつもの如く、夢のペースに乗せられていた。風邪ひくぞ。




