1.俺のポテトもクタクタです。
さと丸と申します。自身の体験と、想像エピ等も加えた、実話とフィクションが交じったストーリーを、皆様に楽しんで頂けるように書いていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
〜人は人生で一度だけ、本当の恋をする。〜
今、俺の目の前に退屈そうに足を組んで座ってるこの美少女は幼馴染の小山内 夢。
美少女過ぎて逆に誰も手を出そう、声を掛けようなどと思わないアレだ。あのレベルだ。
夢を見た日は「ああ、今日どこそこで見たあの子、すげえ美少女だったな。あんな美人はそうそう会えるもんじゃ…云々かんぬん…。」
などと夜な夜な思い出されて男性達にとって良い1日の締めくくりを飾る存在のような女性。
みんなもあるだろ?そんな美少女と出会う事。
人生で何度かは。
そんな夢は、エムドナルドのポテトには一つも手もつけず、アイスコーヒーのストローを飲むでもなくただずっと咥えながら、昨日出したゴミを見るような目で俺をみてる。
小学6年の時、夢に何も言わず引越してからその後ずっと、音信不通でメアドもわからないまま、当時SNSもなかった頃、俺はただ会いたい気持ちをずっと胸に秘め、夢に会う夢を何度も見てた。
あの頃伝えたかった事、19歳になった俺は自分では多少なりとも大人になった(と思う)から、一目夢に会えればきっと伝えられるはず、この気持ちを。
そして夢もきっと応えてくれるはず。
だから…だから。
〈俺から勇気を出して伝えればそれでもうハッピーエンドなんだ。この2人にとっての空白の時間はそれで埋まる、埋める事が出来る。〉
ーそう思っていた。
早くゴミ回収車が来ないかとイライラして待っているような表情の夢に俺は早く伝えたい。
謝罪 、そしてあの頃からずっと秘めていたこの気持ち、それさえ夢に伝えられればハッピーエンドだ。
ー君が待ってたのはゴミ回収車じゃない。
不器用でもなんとか暴れまわる白馬に乗ってきた、自他共に認めるこの3枚目の王子なんだと。
痺れを切らして今にも「帰る」と言いそうな夢の雰囲気を察知し、俺は心を決め、何故か妙にドヤ顔で夢をみてるのか見てないのか自分でもよくわからない眼差しで口を開いた ー 。
「ちょっとウンコに行きたいんだが。」
そう、多分この瞬間、自分が今一番この世界でやらかした人物だろう、それはわかってる。
ある意味ウンコ漏らしたよりも尊い羞恥感。そうそうこれは味わえないぞ。
誰もが羨やむ、初恋の相手でもある幼馴染との奇跡的な再会のシチュ、からのハッピーエンドストーリー…。にもかかわらず、それを全て無かったかのように、忘却の彼方へ墜えてしまうような「ウンコ行きたい」の提案。
本当に俺って…最高かよ。
その時の夢の顔は、一生忘れない。
こんな一生に一度あるかないか位のクリティカルヒットを出した俺を前にして、無表情なのだ、夢は。
幻滅するでも、怒りに狂うでも、憐れみの表情をするでもなく、ただ ー「無表情」ーなのだ。
おいおい、いつから俺はMになった?
そして欲しがるようになった?こんなに弱かったか?俺って。
しかし夢の顔を再度確認する余裕もなく俺はトイレに駆け込み、流れ出る一物達にさよならしつつ、至福の時を過ごした。
トイレから戻ると夢はまだストローを咥えていた。
昼過ぎのランチタイム、窓辺に差し込む逆光に照らされ、ポテトは相変わらず一つも手を出されずクタクタになりかけている。
夢は俺が再び席に着いても「待たされた」、という雰囲気を一切出さず、やっと口を開いたかと思うとー
「私の兄に会って。」
ーいや、俺はこの空白の7年間にケリをつけ、とりあえずのハッピーエンドを迎えたいんだが…。
今、頭が「?」な俺は楳野 悟。
動画作成でネットに名を轟かせたい自他共に認める三枚目のお気楽19歳だ。そこんとこよろしく。