出会い
「お姉さん、そこ禁煙だよ?」
「は?」
「だーかーらー、アパートのベランダ禁煙でしょ?」
「はー、はいはい火消すから早く帰んな、ガキンチョ」
「ため息つくと幸せが逃げるんだよ?それにはいは1回!」
私は口うるさい子供に背を向け手を振り、部屋へ戻った。
背を向けてからも何やら叫んでいたがそんな事を気にする余裕なんて私にはなかった。
「幸せが逃げる…ね、とっくに逃げてったわよ、ため息なんてついてないのに」
夕飯を食べる気にもなれないまま布団に潜り込む。
しばらくして襲ってきた睡魔に身を任せ眠りについた。
「昼間からお酒なんてお姉さん仕事してないの?」
「はー、うるさいなぁ、つかなんでまた来たの?あんた友達いないの?」
「いるよ?りゅうと君とか。それに公園に来たのはお姉さんのほうでしょ?」
「はぁぁー」
いっそう深いため息がでた。
~30分前~
「あー!またタバコ吸ってる!禁煙なのにぃ」
「また、お前か…」
「人にお前って言っちゃダメなんだよ?」
「あー、はいはいごめんね」
「あ!またはいはいって言った!」
「うるさいなぁ、わかったわかった今度から気をつけるから」
「もー、なんにも分かってないじゃん!あ!ねぇ!お姉さん暇でしょ?遊んでよ!」
「はぁ?失礼なガキだなぁ、勘弁してよ…」
子どもは感情も行動もジェットコースターすぎる。
嫌いではないが、今の私には子どもの相手は向いていない。
背を向け部屋に戻ろうとした
「あー!お姉ちゃんひどーい!弟の僕をおいておうちに入っちゃうなんて!」
「ちょ、ちょっと!静かにしてよ!てかあんたの姉になった覚えはないんだけど?!」
「えーんひーどーいーよぉ」
「もう!わかったから!」
「やった!お姉さんの家いれてくれるの?」
「こんのクソガキっ…家は無理、近くの公園ね」
そして今に至る
「ぷはぁー生き返りますなぁ」
「おっさんくさ…それ飲んだら帰んなさいよ」
「えー、つまんないのー」
「えーじゃないのよ、全く…てか、知らない人にそんな簡単に気を許してもいいものかなぁ…」
「で?お姉さん仕事してないのー?」
「またその話?今はお休み中なのよ」
「ふーん、にーとだ!」
「ほんとに失礼なヤツねあんた…」
「あ!ねぇお姉さん鬼ごっこしよう!」
「は?嫌よ…」
「いくよ?お姉さんが鬼!よーいドン!!」
「あ!ちょっと!まっ、もう…」
「はぁ、はぁ、はぁ、あんた足速いのね…」
「お姉さんもうバテちゃったの?歳かな?アイテッ」
「ちょっと身体がなまってるだけ、昔はもっと速かったわ」
「昔って…笑」
「なによ、笑ってんじゃないわよもう1回デコピンされたいみたいね?」
「ゴメンナサイ」
「ふふっなぁんだやっぱりまだまだガキね」
「…」
「あ、ノースポール」
「のーすぽーる?」
「花の名前、あそこに咲いてる白い花」
「へー、お姉さんがお花に詳しいなんて意外」
「失礼ね」
「…恋人が好きだったの、特にあの花が1番好きだった」
「ふーん、でもお姉さんいつも1人じゃん、振られたの?」
「あんたはほんとに随分ド直球に聞くのね」
「…亡くなったの半年前に」
「て、こんなことガキンチョに話すことじゃないわね」
「いいんじゃない?人に話すって大事なことだと思う。自分の気持ちに整理がつくからってお母さんが言ってた。」
「そう、そうね、確かに彼のこと久しぶりに人に話した気がする。彼がほんとにちゃんと存在してたんだって思えた。ありがとね、ガキンチョ」
「…僕の名前、さとる、ガキンチョじゃないから!」
「えっ、今そこ?…わかったわよガ・キ・ン・チョ」
「わかってないじゃん!!」
「ふふっはははっおもしろ」
「もー!」
「さ、もう帰んな、暗くなる前に」
「はぁーい、じゃまた明日!この公園でね!」
「え?あ、ちょっと!」
パタパタと走って行くガキンチョの姿を見届け、部屋へ戻る。
「はぁ、久しぶりに笑った気がする、また明日…か、まぁ気長に待ってやるか」
何日かぶりのまともな食事をとって、少し満たされた気持ちになりながら眠りについた。どれくらいぶりだろうか、とてもよく眠れた気がする。




