5 転生養女の特殊能力-薔薇の庭でー
一月の戦勝祝いはあっという間に過ぎた。
戦勝祝いの期間は、エリーゼは何度かハインツに連れられて王城に出かけたり、ハインツの知り合いの家に招かれたりとずっと忙しかった。戦勝祝いのパーティが全て終わった六日には、ベッドの上に倒れ込んでほとんど動けなかったほどである。
翌日の七日も、疲れがとれずに午前中はベッドの中でゴロゴロしていたが、午後からはちゃんと起きだし、ピアノを弾いた。
神聖バハムート帝国でも、ピアノは淑女のたしなみの一つであり、エリーゼは子どもの頃から教師をつけられて弾いていた。
実は、現代日本でも、騒動が起きるまではピアノ教室に通っていたので、最初から楽譜は読めた。
そういうわけで、今、エリーゼが弾いているのは、現代日本で、ピアノ発表会のときに弾いた曲である。
「エリーゼのために」
……自意識過剰なのかもしれないが、その日はなんとなく、日本で弾いていた曲の暗譜を弾きたかったのだった。エリーゼは、自分の部屋にある黒いピアノの上に巧みに指を踊らせ、しばらく、ピアノを弾く事に没頭していた。
突如、部屋の中で拍手が鳴り響いた。
びっくりして振り返ると、そこに、どや顔のハインツとゲルトルートがいた。
そして、--アスラン。どういうわけか、救国の英雄がそこに立っていて、エリーゼに拍手を送っていた。
「俺の知らない曲だ。エリーゼ、お前は音楽の才能があるのか!?」
「ち、ち、ちがっ……」
エリーゼは真っ赤になって口ごもった。
エリーゼのためには、現代日本でも、大勢の人々にこよなく愛されている曲である。だが、セターレフという異星においては、全くもって扱いが違う。しかし、その美しい旋律は、この国の大人にも心地よく聞こえたらしい。つっかえたりせず演奏すれば、たちまち耳から人を魅了してしまう。
「なんていう曲なんだ?」
アスランは親しみやすい笑顔を浮かべて、エリーゼの方に歩いてくる。そして当然のことを聞く。
聞き慣れない名曲にいたく興味を覚えたらしい。
(!)
エリーゼはたちまち言葉に詰まってしまった。まさか、ここで、「エリーゼのために」という、自分の名前がそのまま入ったタイトルを言う訳にはいかない。
「テ、テ……」
エリーゼのためには、テレーゼのためにというタイトルがいつの間にか変わったと言う話を聞いた事がある。それで、テレーゼのためにと答えようかと思った。だが、テレーゼって誰? と聞かれたらどうしよう。色々と考えが頭の中を巡って、エリーゼは酸欠の金魚のような表情になりながら、必死に、返事をしようとした。
「なんだ?」
アスランは不思議そうにエリーゼの小さな顔をのぞき込んでいる。
エリーゼは思わず目をそらしながら、どうしようもない答えを出した。
「幸せになろう……だった……はず」
前世、現代日本で、宇○田ヒ○ルがエリーゼのためにをリスペクトした曲がある。そのタイトルを言ってしまった。
その歌詞が、頭の中を、一瞬ひらめいた。『幸せになろう』の歌詞が。
「幸せになろう、いい曲だな」
アスランは満面の笑みである。
それに対して、ハインツたちは歯切れの悪いエリーゼの様子に少し困っているようだ。自分が弾いていた曲を、「だったはず?」とか、どういうことなのかわからない。
幸いな事に、アスランはそれ以上突っ込みはしなかった。
「あ……はい。ありがとうございます」
目をそらしてうつむき加減になりながら、エリーゼはやっとの思いでお礼を言った。顔がやけに熱い。
その熱さを、振り払うようにエリーゼはハインツの方に視線をうつした。そっと養父母の方を見て、助けを求める。
するとゲルトルートが笑って教えてくれた。
「元旦にエリーゼが、ジグマリンゲンの若様を助けたでしょう。その正式なお礼にいらしゃったのよ。エリーゼ、あのときは母様も驚いたけれど、お前はよく頑張ったわね」
「え……そんな……」
エリーゼは口ごもった。貴族同士の訪問で、突然現れるなどということがあるのだろうか。
エリーゼもまだ子どもだが、アポイントもなしで当日来訪するなど、爵位を持った人間がするのは滅多な事ではない。
焦ったエリーゼは口を滑らせかけて、気がついた。
--寝ていたのだ。
昨日はパーティ疲れで一日中、ベッドに横たわって、ゲルトルートがドアの外から声をかけてくれても、生返事ばかりして起きなかった。今日も午前中は、ぐったりしていて、ろくろく朝食も食べずに寝ていたのである。それで、ゲルトルートが知らせる事が出来なかったのだろう。寝ている養女に気を遣いすぎたのかもしれない。
それでは、どうしようもない……。
「エリーゼ」
アスランは、エリーゼの名を呼んだ。その声に、緊張を解きほぐすような甘さがあった。
思わずエリーゼは振り返って、アスランの顔を見上げた。身長差はかなりある。エリーゼはアスランを見上げなければならなかった。
アスランは、浅黒い顔にまた、笑みを浮かべて言った。
「俺が今、生きていられるのはお前のおかげだ。ありがとう」
「え……は、はい……」
エリーゼは真っ赤になって、またしても、アスランから目をそらしてしまった。恥ずかしくて彼の顔を見ていられない。
「こちら……こそ……」
ぼそぼそと、ありがとうと礼を言うエリーゼ。
その二人にまだるっこしさを感じたのか、ハインツが両腕を広げて言った。
「エリーゼ! お前が面倒を見ている、冬薔薇が今見頃だろう。ジグマリンゲンの若殿に、薔薇の庭を案内してきたらどうかな!?」
「…………………………」
エリーゼは愕然とした。
彼女は、新年のパーティ期間、王城にいるか、ハインツの知り合いの挨拶回りに付き合わされていて、六日目の昨日は敢然ノックダウンだったのである。そして今日の午前中まで寝ていた。当然ながら、シュルナウの屋敷の庭の事など何にもわからない。あえていうなら、執事がアンハルト親子に屋敷の案内をしてくれた時、庭の薔薇の花壇がよく手入れされていたので使用人達を褒めたぐらいである。
「庭まで綺麗に手入れしてくださって、ありがとうございます」……と。
要するに、庭の薔薇の面倒を見ているのは使用人だ。エリーゼではない。それなのに、養父がそういうことを言うということは、何か理由があるんだろう。
自分たちを、薔薇の庭に出したいという。
いきなりアスランと二人きりで庭で話せと言われたって、話す事なんかない。緊張して、またおかしなことをしてしまうかもしれない。
しかしここで、エリーゼは、日本人らしい曖昧な笑顔になって無言になってしまった。
……引き取ってくれたハインツとゲルトルートに遠慮した。とりあえず、養父母に恥をかかせない振る舞いをするのが自分の勤めだと思った。
「……わかりました。あの……こちらへ……」
ぼそぼそとした声で、アスランの顔も見られないまま、エリーゼは先に立って歩き出し、彼のために、部屋のドアを開けた。
冬の薔薇は、純白からピンクまで淡く色づき、艶やかに咲き誇っていた。
とりあえず、侯爵家の庭の薔薇としては及第点、客人に自慢していいほどだと思う。エリーゼの感性ではそうだった。
エリーゼはたどたどしいながらも、使用人のまねをして、薔薇の花を紹介している。
「こちらが……黄色いのがマルクアントンシャルポンティエ、今は黄色ですけれど、やがてクリーム色に色が薄まって、春先には真っ白になります……」
ぼそぼそとした声は、考えようによってはしずしずとおしとやかともいえるかもしれない。
凜として冴える冬の空気、白い息を吐きながら、エリーゼは一つずつ薔薇の品種をアスランに紹介していった。
「こちらは、アイスバーグ。こちらも、今は薄いピンクですけど……春には純白に色を変えます……この色を楽しめるのは今の時期だけですので……どうぞ、よくごらんになってください……」
密やかな声で、顔を伏せながら、エリーゼは薔薇の名前を告げる。
アスランは興味深そうに、冬にも美しく咲くという有名な品種の薔薇を、エリーゼの手元からのぞき込んでいる。
小さな手。
冬に白く咲く、大輪の薔薇。
マルクアントンシャルポンティエ、アイスバーグと言っているが、それは現代日本の似た品種を探すとそれになるという話である。四季咲きの薔薇は冬にも咲くが、現代日本では、冬は、薔薇の株を休ませる事が多いと言われている。だが、セターレフでは、薔薇は春に休ませる。春に咲いているものは、冬から咲いているものがいくらか咲き残るだけだ。
薔薇の盛りは初夏、それから秋までずっと咲いていて、寒さに強いものは冬も咲く。
「よく知っているな。薔薇の花に詳しいんだな、エリーゼは」
「え……いえ、それは……っ」
エリーゼは、慌てた。
自分の秘密がばれるかと思ったのだ。エリーゼには、まだ、アンハルト侯爵夫妻にも話していない、今は自分だけしか知らない秘密がある。
慌てているエリーゼを見て照れていると思ったのか、アスランは笑って彼女の事を見つめている。
ごまかすようにエリーゼはつんと横を向いて、そこにあった白薔薇を紹介しようとして、手を伸ばし……息をのんだ。
(ウ、ウエディングドレス……)
念のためだが、薔薇の花の名前である。エリーゼは自意識過剰と思われるんじゃないかと思った。英雄アスランに、薔薇の花壇に連れて行って、ウエディングドレス見せたとか。だが、念のためだが、それはエリーゼの自意識過剰ではあるが、自意識過剰に見えるんじゃないかという自意識過剰である。
「あ、あの……これは、ウエディ……」
「ウエディ?」
「な、なんでしたっけ……」
そんなふうに口ごもって見せたものの、エリーゼの頭の中は薔薇の花の知識と、アスランの手前と、養父母に恥をかかせたくない一心のごたまぜで、飽和状態であった。
エリーゼの秘密……それは、その異常な記憶力と知識量である。
麻疹で前世の記憶を取り戻した当初から、その傾向は強く、ハルデンブルグ伯爵にその能力を発見されて以来、どんどん研ぎ澄まされていった。エリーゼは、その能力を、自ら「カメラ」と名付けている。
本当に、彼女は意識を集中さえさせれば、カメラかスクリーンショットのように、一瞬にしてあらゆる情報を記憶する事が出来た。五感にまつわる情報だったら、あらゆる事を何でも。
しかも、エリーゼは生まれつき手先が器用で、覚えてしまった情報を、イラストや文章に、本当にカメラのような再現率で復元することが出来た。
五歳や六歳の時は自分でなんとも思わなかったが、生母のエミリアは、この子はなんとなく他の子と違うと言うことに気づいていた。はっきりしたのは、六歳からデレリンの貴族学院の幼等部に通い始めた後で、その異常な記憶力は、明らかに「違う」と担任を言わしめた。 それで三者面談、知能テスト……などを経て、エリーゼの異常な記憶力は特殊能力レベルということが確定したのである。その後、ハルデンブルグ伯爵は、半信半疑で、自分の持っていた百科事典を、エリーゼに読ませてみた。エリーゼは難なく読みこなした。それどころか、50巻ある百科事典を全て暗唱出来るレベルで丸暗記してしまったのである。
ハルデンブルグ伯爵は、娘の異様な能力を喜んだ。将来は優秀な官吏か学者になれるだろうと喜んだ。
その上で、「父さんがいいというまで、その力の事は黙っていなさい。世の中には悪人という人種がいるんだから」と諭したので、エリーゼは現在も、言われた通りにアンハルト養父母にも自分の特殊能力を黙っているのである。
百科事典50巻に比べれば、使用人が庭で冬の薔薇を、貴族のお嬢様にすすめてみる仕草をまねっこするなどお茶の子さいさい、エリーゼは本当の意味で歩く百科事典なのだ。現時点で。
「白くてクリーム色で、綺麗な薔薇だ。エリーゼの肌の色に似ている」
緊張してうわずるエリーゼの前で、アスランはそんな事を言ってのけた。
「……!」
エリーゼは声も出せずに硬直してしまった。
とにかく、この間、使用人が自分に失礼のない仕草でしてのけた、薔薇の紹介をしてみようとするが、手がこわばって口がうまく回らない。
ウエディングドレスという白薔薇の前で、アスランに甘く見つめられながらそんなことを言われてしまったと思うと、足が地に着いていないような、頭が煮えてしまいそうな、凄く変な心地になる。気持ちが悪い訳では全然ないんだけれど……。
「エリーゼは何をそんなに緊張して、遠慮している?」
真っ白な肌を真っ赤にして棒立ちしているエリーゼに向かって、アスランは優しい声で促した。
薔薇の名前がウエディングドレスという事をごまかしているエリーゼは、その声を聞いて大分落ち着いてきた。自分が自意識過剰である事に気がついたのだ。いくらなんでも、まだろくに話した事もないのに、何を考えているのだろう。だが、薄々感づいている事はあるのだ。ハインツだって、歴戦の騎士であり侯爵、自分の縁談の事を気にしているのだと……。政治感覚がまるでない騎士で侯爵などいる訳がない。
薔薇の庭にこの花が咲いている事を、ハインツだって知っている。そっちの方に、二人だけで行くように仕向けたのは、そのためだ。ハインツは、自分の家に英雄か、名うての武将をを入れたいのだ……。やっとそのことに気がついたエリーゼだった。
(父上ったら、気が早すぎるでしょ!)
現代日本の感覚では15歳は中学から高校、今すぐ結婚などと考える娘はほとんどいない。
だが、バハムートでは、18歳で結婚して子どもがいることはそんなに珍しくないのである。本当に、なんで新年早々あちこちのパーティやゲストに出回る羽目になったのか、今更わかったエリーゼだった。
「あ、あの……すみません。私、話すのは……そんなの得意じゃなくって」
とりあえず、アスランと二人きりの時間を、短縮したくて、エリーゼは遠回しにそう言ってみた。
アスランは、目を瞬いた。
「話すのが、得意じゃない。何でだ? あれだけ、勇気のある行動も、大胆な行動もとれるのに」
アスランからグラスも皿も奪い取って、水槽に放り投げる事が出来たのは、自分が、前世で一家心中をしていたからだ……。その苦しみを考えればとても黙っていられなかった。
まさかそんな話をするわけにはいかない。したところで、バハムート人に理解出来ないだろう。
それでエリーゼは、また、日本人らしく曖昧に笑ったが、アスランはごまかされず、じっとエリーゼを見つめていた。
アスランの蒼い双眸に魅入られてしまいそうで、エリーゼはわずかに一歩後ずさりをした。どうしても、アスランの視線から逃げてしまいたくなる。
「そんなに……褒めないでください。私、そんなたいした事ないんです。あのときは、偶然話を聞いてしまったから、なんとかしなきゃと思っただけで……私だけじゃなくて、誰だって、人が死ぬと思ったら、勇気出すと思います」
ぼそぼそと途切れ途切れにエリーゼはそう話した。
「そうだな。誰だって、人が殺されると思ったら、勇気を出す。それは間違いのないことだ」
アスランは、重々しくうなずいた。
「だが、エリーゼ。自分の事を、たいした事がないと思うのは、間違っている。たいした事がない人間なんていない」
エリーゼはびっくりして、思わず顔を上げた。
確かに、エリーゼは、特殊能力を持っている。今では、自分以外、誰も知らない能力だけど。
その力があるから、エリーゼは、余計に人と隔たりを作っていた。世の中悪人だっているんだから、自分を悪用されないように、黙ってなさいと。……カメラ能力の事を知られたくなくて、慎重に振る舞ううちに、いつの間にか、人と話す事さえおっくうになっていたといえる。
だが、もちろん、アスランはカメラの力の事を知っている訳ではない。
それでも、本当に、冴えない陰気な15歳の女の子にそんなことを言う。
「お、お世辞でも……嬉しいです」
当然、エリーゼはそういうふうに受け取って、控えめにそう告げた。
「お世辞じゃない。人間は誰しも、特別な存在だ。戦場に出ていれば、それがわかる。本当に、たいした事がなかったり、”使えない”人間なんていない。……エリーゼは、知らないかもしれないが」
そこでアスランははっと気がついたような顔になり、話し込むのをやめて、エリーゼの肩に触れてきた。エリーゼは飛び上がりそうになったが、必死にこらえた。触られるのが嫌なのではない、羞恥で死にたくなるほどなのだ。
「俺は、まずい事を言ったか?」
切なそうなアスランの表情を見て、エリーゼは慌てた。恐らく、戦場でなくなったハルデンブルク伯爵の事を言いたいのだろう。エリーゼが実の両親の死を思い出したのではないかと……。
「い、いえ、違いますっ」
うわずって跳ね上がった声でエリーゼは返した。
「エリーゼは気丈で、勇気のある娘だ。そのことに自信を持っていい。……もっと自分に自信をもっていいんだ。自信があると、何もかも違うぞ」
「え……」
何でそんなことを言われたんだろうと、エリーゼは考えて、ふと笑いを漏らした。
鏡の中に移る自分は、いつも、色素が薄くて顔色が悪くて体も細くて、幽霊の人形を思わせる。その自分の事を、可愛いと褒める人もいるけれど……。
アスランは、幽霊のような女の子に、勇気があるとか自信を持てとか、そういうことを、平気で言う人なのだろう。まして、自分はそんな容姿で、人と話すのが下手とか言ってしまったのだし。
(優しい人なんだな……言うべきははっきり言うし……。嫌な男だったら、もっとずけずけと、無自覚に傷つける事言うんだろうけど……この人は、決めつけるようで決めつけないし、褒めるところは褒めてくれるし)
父と同じ政治感覚なんだろうか、とも思うが、そうとも違う気がする。そうであってほしいという、小娘らしい願望かもしれないけれど。
「エリーゼは春から、シュルナウ帝国学院に通うのか。侯爵から聞いたが」
「あ、はい」
コミュ障らしい小さい声で「あ、はい」と言う。そこで会話が途切れそうになったので、慌てて次の言葉を探して、なんとか言ってみる。
「四月からなんです。シュルナウは初めてなんですけど……帝国学院の高等部に編入するんです。そ、その前は……デレリンの貴族学院で……」
「そうか。シュルナウ帝国で、いい友達がたくさん出来るといいな。そうすれば、話すのも上手になる。特に、女の子には話し上手の聞き上手が多い。きっと大丈夫だ」
か細い声で照れくさそうに自分の事を話すエリーゼ。
それをアスランは受け止めて、そう言ってくれた。
「は、はい……」
そんなことを言ってもらえればやっぱり嬉しい。英雄が励ましてくれているんだと思う。そう考えると、希望が持てる。
どうせ、明日もあさっても、代わり映えしない、灰色の一日が過ぎるのだと、そう思い込んでいたけれど。
(帝国学院で、何かいいことがあるといいな……)
やっと、そう思う事が出来た。--前世の記憶を取り戻してから……前世で、エゴサーチをしてしまってから……初めての事だったかもしれない。