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【第一章完結】300年国を支え続けた魔法使いは元教え子と共に大迷宮攻略に挑戦します  作者: 日之影ソラ
第一章

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6.魔法とドラゴンの国

 森を抜け、広大な自然が眺める崖の上へ。

 気持ち良い風を浴びながら、澄んだ空気を大きく吸って吐き出す。


「すぅーはぁー……それで? 結局これからどうするの? 私と一緒に帝国の追手から逃げ続ける? アレクが味方してくれるのは心強いけど、きっと今まで以上にしつこくなるよ?」

「でしょうね。実を言うと僕以外にも先生を追う部隊はあったんです。他に先を越されないかヒヤヒヤしていました」

「そっか。そういえば今日まではアレク以外の部隊が追いかけてきてたわね」


 我ながらこの数年、よく逃げ切ったものだ。

 酷い時は三日三晩追われ続けて、寝る暇もないほど慌ただしい毎日を送っていて。

 決して弱い相手ばかりじゃなかった。

 下手に傷つけたら今より追手が増えると思ったから、やり過ぎないようにセーブして、戦うことよりも逃げることを優先してきた。

 今から思えば、もっと強く追い返すべきだったのかもしれないな。

 反省しよう。

 今日からは私一人じゃないんだから。


「そろそろ行きましょう。彼らも直に動けるようになります」

「ええ。って待って、どこに行くの?」


 出発しようとした彼を呼び止める。

 最初に質問した答えは、未だ聞けていなかった。

 これからどうするのか。

 私の逃避行に彼が加わるだけなのか、あるいは別の方法があるのか。

 立ち止まった彼は自信を匂わせる表情で答える。


「魔法とドラゴンの国、アフタリアですよ」


  ◇◇◇


 アフタリア王国。

 その誕生は、世界でも唯一と言えるだろう。

 始まりは二千年ほど昔。

 一人の魔女と、一匹のドラゴンが出会ったことをきっかけに、かの国は誕生した。


「世界でただ一つ、魔女が作った国……アフタリア王国かぁ」

「同じ魔女の先生なら、アフタリアにも訪れたことがあるんじゃないですか?」

「ううん、名前だけは知っているけど、実際に行ったことはないわ。私が生まれた時にはもう、あの国に魔女はいなかったみたいだし」


 誕生から二千年経過した現在、アフタリアを統治しているのは魔女ではなく、その末裔だ。

 今の王族は魔女の血を引いているらしい。

 とは言え、その血も長い年月で薄れているから、魔女らしさは残っていないとか。

 私とは直接関係もなかったし、関わる機会も生まれなかった。

 宮廷魔法使いとして働いていた期間も含めて。


「そんな所に行って大丈夫なの? 確かにあそこは魔女狩り令にも従ってない珍しい国だけど、私は世界中に指名手配されてるし……」


 数年逃げ続けている中で、私の名前は世界中に広まった。

 もちろん謂れもない罪とセットで。


「さすがに追い出されちゃわない?」

「大丈夫ですよ。もう事前に話はついているので」

「え? 事前に?」

「ええ」


 自信満々な表情でアレクは頷いた。

 驚きと疑問を同時に感じる。

 私でも行ったことのない国、交流のない場所なのに。


「話をつけたって、誰に?」

「それはもちろん、アフタリア王国を統べる者ですよ」

「そ、それってまさか……国王に?」

「はい。まぁ正確に言えば、最初にコンタクトを取ったのは国王ではなく王女のほうですが。彼女は少々読めない性格ですが、魔女に対しても理解のある人物でして……先生聞いてますか?」


 あまりに驚きすぎて、言葉を失っていた私。

 彼にトントンと肩を叩かれたお陰で現実に引き戻される。


「はっ! え、ええ聞いてるわ。で、でもどうやってつながったの? 場所は大陸の反対側だし、接点なんてなかったでしょ?」

「それはまぁ、頑張ったんです」

「頑張ったって……」

「先生と合流した後、行く宛がないんじゃ困りますからね。せめて少しでも安心できる場所を見つけたかったんです。幸い僕は先生から魔法を教わっていましたし、他の者たちに気付かれず探すくらいは出来ましたよ」


 彼はそんな調子で淡々と教えてくれた。

 さっき言葉を失ったばかりだけど、改めて彼が歩んできた道のりの壮大さを痛感する。

 私が逃げ回っている間、彼も奮闘していたんだ。

 魔法使いとしての力を付けながら、私を探して、私を守るための準備を入念にしてくれていた。


「本当……大きくなったわね」

「このくらいで褒められても困りますよ。僕の成長はこれからたっぷり見ていてください。きっと驚きますから」

「今より驚いたらきっと倒れちゃうわ」

「その時は僕が抱きかかえて運びますよ。あの頃は子供だったので無理でしたけど、今は先生よりずっと大きくなりましたから。力も強いですよ」


 そう言ってあざとく力こぶを見せるアレク。

 少しおかしくて笑ってしまった。

 身体もたくましく成長しているのに、言動は時折子供みたいに聞こえて。

 なんだか昔を思い出す。

 宮廷魔法使いとして働き、子供だった彼に指導していたあの頃を。 


「さて、行先も共有できましたし、そろそろ本格的に急ぎましょうか」


 私たちは街道を歩いていた。

 彼はそう言ってピタリと止まり、指をさして目的地を示す。

 方角というより、方向を。

 彼が指を刺したのは雲が穏やかに流れる青空だった。


「ここから王国までは遠いですからね。歩いていくのは骨が折れる。だから僕らは、僕ららしく行きましょう」

「ふふっ、そうね。私たちらしく」


 私は魔女、彼は魔女の弟子。

 長所は言わずもがな魔法なんだ。

 歩いていくより、空を飛んでしまえと。


「風よ」

「大気よ」

「「我が身を包み運びたまえ」」


 私たちは重ねて詠唱を始める。

 これくらいの魔法なら、詠唱を唱えなくても発動できるけど。

 今はお互いに、あえて唱えたい気分だった。


「「――【微風羽靴(ウィンドブーツ)】」」


 同じタイミングで飛び上がる。

 風を纏い、味方につけて、大空を舞う。


「魔力の制御も上手くなったね」

「まだまだですよ。先生はもっとすごいです」

「そうかな? アレクにそう思い続けてもらえるように頑張らないとね」

 

 私たちは空を飛ぶ。

 当たり前のように、穏やかに会話しながら。


 目指すは大陸の東の果て。

 魔法とドラゴンの国アフタリア。

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新作投稿してます!
婚約破棄に追放までセットでしてくれるんですか? ~職場でパワハラ、婚約者には浮気され困っていたので助かりました。新天地で一から幸せを手に入れようと思います~

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