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【第一章完結】300年国を支え続けた魔法使いは元教え子と共に大迷宮攻略に挑戦します  作者: 日之影ソラ
第一章

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17.第三の試練『知恵』

「クリアしたのは良かったです。さすが先生ですね」

「はい」

「ただ何の説明もなく飛び込むのはどうでしょう? もし間違っていたら落ちていたんですよ?」

「……そうですね」


 私の機転で第二の試練は無事にクリアした。

 のだが……

 向こう側へ渡ってすぐに、アレクのお説教が始まりました。


「あの一瞬で僕がどれだけ心配したかわかりますか?」

「ご、ごめんなさい……」

「次からは気を付けてくださいね?」

「はい……」

 

 まさかアレクにお説教される日がくるなんて。

 成長したね……


「それでは次の試練へ向かいましょうか」

「そ、そうね。気を取り直して行きましょう」


 壁には新たな扉が生成されていた。

 罠がないことを確認してから扉を開け、長く続く一本道を歩く。

 今度の明かりは緑色だ。

 そうして次の部屋にたどり着く。


「こ、これは……」


 同じく巨大な空間。

 二つ目のように橋や大穴はない。

 代わりに壁や天井、床の一面まで敷き詰められているものがある。


「扉だらけですね」

「ええ……」


 一面の扉。

 右を見ても左を見ても、同じ見た目の扉がある。

 列もバラバラ、向きもそれぞれ。

 数は多すぎて数えられない。


「やーやーやー! 第三の試練にたどり着くとは中々じゃな! さっそくじゃが次の試練を言い渡すぞ? 第三の試練は『知恵』じゃ!」

「今度は知恵の試練みたいだね」

「はい。問題でも出すのでしょうか? もっとも先生なら、答えられない問いはないと思いますが」

「それはさすがに買いかぶり過ぎだよ」


 魔法のことなら自信はあるけどね。

 それでも全ては無理だよ。

 だって出題者はドラゴンで、私なんかよりずっと前に生まれた存在なんだし。

 さすがに知恵で勝てるとは思えないな。


「それにたぶん質問とかじゃないと思うよ」

「ですね」


 私たちの視界には、おびただしい数の扉が見える。

 この扉が試練に関係しているのは間違いなさそうだ。

 

「目の前に扉が見えるじゃろう? それらは全部で千あるのじゃ! その中に一つだけ、次の試練へ向かうための扉がある。それを引き当てるのじゃ! ちなみに外れの扉は他の扉に通じておるぞ」

「え、それだけ?」

「意外と簡単そう――」

「ただし! 開けて良いのは千回までじゃ! それから外れの扉を開ける度、当たりの場所も変わるから注意するのじゃぞ!」


 少女の説明は以上で終わった。

 扉は千か所、内当たりは一か所のみで、外すたびに場所が変わる。

 加えて千回の回数制限付き。


「試しに一か所開けてみようかな」


 そう呟いて、近くにあった壁の扉を開けてみる。

 扉を開けた先は、紫色の幕で覆われていた。

 開けただけじゃ繋がっている先は見えないらしい。

 

「アレク」

「他の扉は開いていませんよ」


 尋ねる前に答えが返ってきた。

 さすがアレク、私が言う前に意図をくみ取ってくれたみたいだ。


「もしかしていきなり正解?」

「行ってみましょう」


 期待して扉の中へ。

 幕を抜ける感覚はちょっぴり気持ちが悪い。

 湿った空気の幕を通り抜けているようだった。

 そして肝心の結果は――


「「あっ」」


 不正解。

 しかも出た先は、天井にあった扉。

 つまり、真っ逆さま。


「わっ!」

「先生!」


 間一髪、落下のギリギリでアレクが体勢を立て直し、私を抱きかかえて着地する。

 

「大丈夫ですか?」

「うん。ありがとうアレク」


 咄嗟のことで魔法発動が遅れてしまったな。

 だいぶ実戦の感覚が鈍っている?

 それとも単に衰えたとか……それは考えたくないな。


「今のでわかったけど、扉を開けてすぐに別の扉に繋がるわけじゃないんだね」

「そのようですね。加えて出た先が同じ面とは限らない。あと上下左右もバラバラなので、感覚を保つのが難しい」


 扉を出た途端に重力の向きが変わる。

 初めての体験に身体が驚いてしまったけど、理解して挑めば逆に楽しいかも?

 なんて遊んでいる暇はないんだった。

 

「正解が移動してしまうなら、全て開ける方法は使えませんね」

「……そうでもないよ? 今回は魔法も封じられてないしね」

「先生?」


 実はとっくに気付いていた。

 この試練の攻略法に。


「【影握手(シャドウハンド)】」


 私が発動したのは影を自在に操る魔法。

 自身の影を媒体に、無数の黒い手を発現させる。

 手の数は火力量に起因する。

 魔女である私にかかれば、千や二千を生み出すくらい簡単だ。


「扉を開ける度に場所が移動するんでしょ? だったら全部開けちゃえば、正しい扉は逃げ道をなくすよね?」

「なるほど、その手がありましたか。さすが先生」

「ありがとう。でも正直これ、知恵って感じじゃないのよね」

「確かにそうですね。っと、ありましたよ」


 アレクが指をさす。

 開いた扉の一か所だけ、紫の幕がかかっていない。

 先には道が続いていた。


「第三の試練も難なくクリアですね」

「ええ」


 知恵の試練をクリアした私だけど、どうにも引っかかる。

 アレクにも言ったけど、この解決方法は知恵と呼べるだろうか?

 さっきの機転もそうだけど、迷宮の試練は名前と内容が微妙に合ってないような気が……


「もしかしてドラゴンって」


 かなり大雑把な性格なのかな?


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新作投稿してます!
婚約破棄に追放までセットでしてくれるんですか? ~職場でパワハラ、婚約者には浮気され困っていたので助かりました。新天地で一から幸せを手に入れようと思います~

最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

― 新着の感想 ―
[一言] たぶん。開けた回数って言ってるから。 陰で完璧に同時に扉を開けたら一回のカウントになるんじゃ?
[気になる点] 1回試しに開けてて次に1000ヵ所同時に開けたら1001回になっちゃってアウトなのでは [一言] 応援してます
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