異変
翌朝、ご飯の用意も終わり、
いつもなら弟も起きてきてもいい頃なのだが
まだ起きてこない。
仕方ない、と部屋に起こしに行くと
弟は辛そうに横たわっていた。
姉「どうしたの!?」
弟「…あ、おねえ…ちゃん…」
虚ろな目をして掠れた声で返事をした。
顔も青白くて一目見て
普通じゃないと思えたほどだ。
姉「いつから!?昨夜は元気だった
じゃない!?」
弟「…寝る…前まで…は…はぁ…げ…げん…」
姉「! あぁ…ごめんね…喋らなくていいから」
姉は弟の様子を見て咄嗟に我に返った。
明らかに「病気」である。
ここ数十年、村ですら見たことがない。
姉(どうして?何故弟だけが…)
自分に何もないのもわからない。
何より弟が辛い様子を見ていられない。
弟「おね…え…ちゃん…」
震えながら弟は姉の手を弱々しく握った。
熱い…、熱がある。
病気の事はわからない、親もいない、
自分に出来ることはそうなかった。
姉「…待ってて、村長を呼んでくるから」
そう言って弟の手を胸元に戻した。
そのまま、姉は飛び出すように家を出た。
村長の家までの途中、ずっとうつむきながら
走った。両親がいなくなって以来、
久しく忘れていた不安が頭をよぎる。
両親との別れも突然だった。
何の前触れも、何も告げられることもなく、
二人共いなくなってしまった。
泣くしかなかった、ただ泣くしか出来なかった
立ち直るのにも時間もかかった。
でも、私よりも小さいあの子がいたから。
まだ幼く状況もわからない。
私が何とかしないと…
あの時と同じように走って村長の家に
向かった。