人里離れた森にて
「風よ!我が敵を貫け!ウィンドスピアー!」
ズバッ!「ギャウッ!!」
「ふぅ、なんとかなったわ」
草木生い茂る森の中、
今日も彼女は変わらず森と共に過ごす。
食糧を求め森を歩き、
たまに現れる魔物を退治しては
変わらぬ日々を過ごしていた。
「さてと、このくらいで村に戻ろうかな」
「帰りは最近出来た魔法で…」
「風よ!共に歩む足に加護を!
ウィンドウォーク!」
…フワフワ…
「お~、軽くなった!
私にはまだ少し速く走れる位が限界だけど、
帰りが楽だよね♪」
木漏れ日混じる自然豊かな帰り道、
普段は動物や自然の声が聞こえるこの時間も
楽しい。自然と足取りも軽くなる。
「お姉ちゃん!お帰りなさい!」
「ただいま~、いい子にしてた?」
彼女には弟が1人いる。両親はいない、というか
ある日から帰ってこない。何の音沙汰もないまま
もう15年も経つ。
彼女たちは長命な種族であった。人間とは違う
エルフと呼ばれる「亜種」である。
ちなみに人間との関わりはほぼない。
弟「今日は何を取ってきたの?」
姉「色んなキノコあったから取って来たわ。
なかなか見ないキノコもあったけど…」
弟「えー、キノコ?ヨセミテ草は?」
ヨセミテ草とは癒し効果の高い薬草で、
味もかなり美味しいため
よく食されていたのだが、今ではその数も少なく
貴重なものとなっていた。
姉「最近見ないわねぇ、キノコの種類も変わって
来てるみたいだし」
弟「そうなの?村はいつもと変わらないのに」
弟は村から出たことがなかった。というのも
村には外から見えなくするために特殊な結界が
張られているためである。これは中からも
魔法の素養が開花したものしか出入り出来ない。
弟「ボクも魔法が使えたらなぁ…」
姉「私もやっと最近出来るようになってきたから…
でも焦らなくて大丈夫よ!
それより、ご飯にしましょ!」