月は恥じらい、花は顔を隠す
おはようございます、遊月です!
今週も始まりましたね、『殺伐感情戦線』! 今回のテーマは「霧」ということで、「霧」っぽい雰囲気の恋物語を書いていけたらと思いました。
本編スタートです!
「よろしくね、国木田愛莉さん」
高校に入学して数日。
本が好きだという理由で所属した図書委員の顔合わせでその微笑みを見たときから、わたしは、白凪 泉先輩に惹かれた。たぶん初恋だと言ってもいいと思う。
誰かに対してこんなに心が動くことなんて、今までなかった。それが同じ女である泉先輩になるとは思ってもみなかったけど、彼女の存在はそれだけ鮮烈に、わたしの心に焼き付いてしまったのだ。
そして、月日が経つにつれて、更に強く惹かれていった。
泉先輩は、とにかく綺麗だ。
もちろん見た目も綺麗で、羞月閉花なんていう言葉すら生易しいくらい、まるで奇跡みたいに美人だ。けど、彼女はそのひとつひとつの仕草とか動きまで、“美人”そのもので、美しいという言葉の意味全部が泉先輩に詰まっているんじゃないかって思ってしまう。
それに、頭もかなりいいらしい。
聞いた話だと、試験ではどの教科も学年5位以内には入っていて授業中に指されたときも先生が説明するよりもわかりやすく解答するって聞いた。
何よりも、本当に優しい。
特別目立つ特徴もなくて、できることだって人より少ないわたしに苛立つことなく、丁寧にわかりやすくいろいろなことを教えてくれる。一緒に委員会の仕事をしているときも、せっかく傍にいるからととりとめもなく話してしまっているわたしを、笑って受け入れてくれている。
あと、頑張ったときに本当に嬉しそうに目を細めながら、頭を撫でてくれる。最初は恥ずかしかったけど、そんな経験なんて今まで全然なかったから、頭に置かれた手の温もりがだんだん嬉しくなって、もっと頑張りたくなってしまう……。
* * * * * * *
「ね、すごくない!? 泉先輩ってね、他にもね?」
「わかったわかったって、愛莉がどんだけ白凪先輩のこと好きかは、俺にもよく伝わってるからさ」
「たーくーやー、ちゃんと聞いてよ~」
たぶん、わたしの高校生活が恵まれていたのは、泉先輩に出会えたことと、小さい頃から一緒だった梶井拓也と同じクラスになれたことだった。知らない人ばかりだった高校に拓也がいたことで、わたし自身はかなり救われていた。拓也を通してクラスの人たちとも仲良くなれたし、そもそも図書委員に入るように勧めてくれたのも拓也だ。
「まぁ、愛莉がそんだけ気に入るってことはほんといい人なんだろうなぁ、俺は白凪先輩ちょっと遠くから見たくらいだけど、美人だし」
「ね、ねっ! もう、なんであんな綺麗なのかわかんないよ~」
「そりゃ生徒会長も付き合いたくなるわけだよな」
「え?」
「え、って、知らなかったのか? 白凪先輩、生徒会長と付き合ってんだろ? そういう話しない?」
「し、しない……」
生徒会長……泉先輩と同じ学年で、男子テニス部の部長さん。それくらいしか知らなかったけど、え、そうなの、泉先輩の彼氏さん……?
「おーい、どした?」
「ん、……なんでもない」
「そ? あっ、やべぇ次理科室じゃん、急ぐぞ愛莉!」
「う、うん……!」
そういえばわたし、泉先輩のこと全然知らなかったんだ……。心が締め付けられるように苦しくて、初めて、今日のお昼に委員会があることが憂鬱に感じた……。
前書きに引き続き、遊月です!
たまには男の子の出ない百合ものを書こうかと思っていたのは先週のこと、我ながらどうしてこうなった状態ですが、安心してください、これは百合のお話です。
ということで、次回お会いしましょう!
ではではっ!!