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進化した剣士の放浪記  作者: 片魔ラン
第零章 亡命と覚醒
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冒険者ギルド

投稿順間違えましたあ!ごめんなさい!昨日の夜投稿したのは第四話です!

 街の中を甲高い金の音が三度鳴り響く。そろそろ、夜の帳も降りようかと言う頃、ちょうど空が紫色に染まっている。そんな中、エリンシア聖王国の首都を歩く四人の姿があった。


「三十時か…少し急ぐぞ。ギルドの登録は三十二時までだ。」


 その中の一人、マントを羽織った二メートル三十センチ越えの巨漢の男がそう言う。

 他の三人はその言葉に小さく頷くと、足を早めた。



「へえ、ここがギルドか。まるで異世界物のテンプレートだな。」


 タイシはギルドの中を見渡しながら呟く。聖王都の冒険者ギルドは、木造の三階建てであった。一階には、ぱっとみ二百坪を超える床面積の上に役所の様な受付と、酒場が入っている。意外にも中を埋めている冒険者は粗暴な容姿や振る舞いをしているものがおらず、ほぼ全員が気の良いおじさん、と言った感じだ。


「ター君異世界物ってさあ…ここ異世界だよ?」

「あっそうだった。」


 蘭はタイシの腕に抱きつきながら嗜める。その反対の腕には美桜が抱き付いている。三年以上勘違いされていた事を知り、二人は色々と吹っ切れた様だ。口元は笑っているが、目は猛禽類を彷彿とさせる。


「タイシさん!すごいです!マッチョばかりです!」


 いつもの冷静でおしとやかな大和撫子は何処へやら。美桜は冒険者を見て大興奮している。


「マッチョ好きだったのか…もしかしてだから記念日のプレゼントがいつもトレーニング用具だったのか…?」

「ん?そうだよ。でもそのおかげで身長は百八十超えてるし身体もがっしりしてるじゃん。もっと褒めて遣わしたもう!」


 美桜はタイシから腕を外し、腰に手を当て、胸を張った。


「はいはい。ありがとうね。」


 タイシはそう言って美桜の頭を撫でる。美桜は撫でられると、目を細めて気持ち良さそうにしている。


「むー!美桜ちゃんずるい!ター君!全員で幸せになるんだからね!私にも構うんだよ!」


 そう宣言する蘭にタイシは苦笑いを浮かべる。そもそも、既に諦めていた初恋に再度日が灯ったのが数時間前なのだ。そこでいきなり、初恋の相手から複数人愛せ、と言われても困惑するしかない。だが、タイシにしても二人の想いを無下にするつもりはない。初めて見た幼馴染二人の本気の涙だったのだ。今は答えを出せずとも、いずれちゃんと答えなければ、と気を引き締める。


「おい、三人とも。いちゃついてないでついてこい。俺らの番号が呼ばれたぞ。」

「「「はーい」」」


 三人は引率の騎士に大人しく従う。


「三百二番だ。今日はギルドマスターに話があってきた。」


 騎士はそう言ってギルドカードを提出する。受付の男性は、その金色のギルドカードを見て表情が固まる。


「り、リリヤ様!?」


 リリヤ、と呼ばれた騎士は慌てて男性の口を塞ぎ、耳元で囁く。


「今日は騎士のリリヤ・エリンシアではなく、Aランク冒険者のリリヤとして来ている。この意味、わかるな?」


 そう言われた受付の男性は慎重に頷く。


「ではギルドマスターに通してくれ。」



「おお!リリヤ!五年ぶりだな!なんだ?冒険者復帰してくれんのか?」


 ギルドの三階の最奥の部屋に入ってすぐ、四十代に見える大男がリリヤとタイシ達を出迎えた。


「バラン。暑苦しいぞ。こいつらが引いてる。」


 リリヤはそう言ってタイシ達に目線を向ける。バランはタイシ達を凝視する。


「こいつらが例のアレ、か?」

「なんだ。もう情報が入ってたのか?」


 リリヤは意外、と言った様子で目を見開く。



「ああ。今本部で聖王国からのギルド撤退が議論されてる。俺の見立てじゃ八割方通るだろうよ。」

「ああ…やはりそうか…この国ももう終わりかもな…」


 リリヤは悲しそうに目を伏せる。そんな会話に、タイシが割り込む。


「あ、あの。なんでギルドが撤退するんですか?」


 バランはそう尋ねるタイシに少し考えてから口を開く。


「お前さんらは勇者召喚で呼ばれたんだろ?」

「え、ええ。」

「その勇者召喚な、千後百年ぐらい前に一つの大陸滅ぼしかけてるんだよ。」

「「「えっ!?」」」


 これには質問したタイシだけでなく、美桜と蘭も耳を疑う。


「ああ、別に勇者が暴走した、とかじゃないぞ。」

「ではなんで…」

「あーなんて言うかな。不老不死を得れるんだよ。」


 タイシ達の顔にハテナが浮かぶ。不老不死、と言われても想像がつかないのもそうだが、それを得られる、と言われても更に意味がわからないのだ。


「千五百年前、ある大陸で異族との戦争で切り札として勇者が呼ばれた。が、実は勇者ってのは成長しても人類の頂点に行かない程度の戦力なんだよ。まあ当時で辛うじて上位三桁に入るぐらいじゃないか?って言われてたらしいな。ま、その代わり一度に1万人を害せる魔法を使えるらしいから戦場によっては頂点になるのかもしれんが…まあそれはおいておいて。勇者を擁した大陸の人間は戦争に勝利した。で、そこから二十年ぐらいは“平和”だったらしいんだがな?ある時勇者召喚された一人が殺害されたんだよ。だけどその殺害された男は蘇った。その事を知った当時の国はその男を捕らえ、研究し、遂には当時は数えるほどしかなかったステータスプレートを使って鑑定したんだ。その結果何が分かったと思う?」


 こう説明されれば猿でも答えはわかる。


「不老不死…」

「そう。不老不死、だ。しかもな?もう一つスキルがあったんだよ。それが恩恵授与。効果は自分の持ってるスキルを他者に分け与えることができる、と言うものだ。つまりその男は他者も不老不死にすることができたんだよ。それを知った王家は自分達を不老不死にする様に迫った。が、出来なかった。そして遂には男の仲間に助けられて逃げられちまったんだよ。その時点で情報が漏れたらしくてな?大陸の他の国々は男の身柄を求め、結局大戦争に発展した。」

「それで滅びかけたんですか?」


 タイシは人間の欲の恐ろしさを感じた。が、バランは首を横に振る。


「いや。結局滅びたのは異族を率いたその不老不死の手によってだ。その当時男と道を共にした天族の話によれば、男は自分を助け出してくれた恋人三人と共に戦場を駆け巡ったらしい。で、大陸はほぼ完全に滅びた。元々四億いた、と言われた人間は二千万にまで減り、大陸配属に支配された。まあ今となっては世界最初の異族人間族融和大陸、と言われてるな。今ではその男が築き上げた千年王国、と呼ばれる国が支配してるよ。大陸全てを一刻が支配してて異族差別が一切ないことから移住先としては一番人気だよ。」

「は、はあ。で、なんでそれがギルド撤退に繋がるんですか?」


 ガハハ、と笑うバランにタイシは先を促す。


「ああ、一つは二度と当時の戦争を繰り返さないために冒険者ギルド会議及び世界会議で勇者召喚は禁忌魔法に制定されてんだよ。それを破ったら当然撤退だろ。あともう一つは今のこの国の状況だ。」

「国の状況?」

「ああ、お前らは来た時に異族は敵だ、とでも言われなかったか?」

「ええ、言われました。」

「あれな、嘘だ。もう七十年ぐらい前かな。当時の世界会議で異族平等宣言がなされたんだよ。異族差別の禁止、異族の強制奴隷化の禁止、異族奴隷の解放。これが世界会議加盟国、まあ全国家の九割五分だな、で強制された。だけどここの王国は猛反対した挙句、世界会議から離脱してな。まあ既に周辺国家からの圧力でほとんどの異族奴隷が解放されてタックに亡命したあとだったんだけどな。で、以来周りに戦争仕掛けまくってんだよ。」

「な、なぜ戦争を…」


 バランはタイシに優しい目を向ける。


「この国の周辺国は全て世界会議加盟国だ。そのど真ん中に非加盟国、しかも徹底的に相入れない方針を持つ国がある。するとどうなる?」

「そうだ。まあ当初は貿易相手もいたんだけどな。六十年前に今の王になってからこの王国は生産加工流通に一人でも奴隷でない異族が関わってたら買わない、と言い出してな。周りはどこも手を引いた。」

「つまり略奪しないと物資が足りない、と。」

「ああ。あとは大陸制したら異族をまた自由に出来る、とでも思ってるんだろうな。まあそう言う事で元々冒険者ギルドの上層部、特に異族の方々が撤退を訴えてたんだけどな。まあ、今回の件で決定的だ。逆に反対票が入ったら真っ先に賄賂を疑われるだろうよ。」


 バランはそこまで言うと、説明はもう良いな、とタイシに確認し、リリヤに顔を向けた。


「で?こいつら保護でいいのか?」

「ああ。あと亡命も頼む。出来るだけ早くな。実はこの坊主、進化のスキルを持ってんだよ。」

「っ!」


 リリヤがタイシを指差しながら発した言葉にバランが顔を歪める。


「本当か?」

「ああ。嘘判定機を使って聞いたから間違いねえ。バレるのも時間の問題だ。俺もすっかり不老不死のこと忘れててな。多分近いうちに聞き取りがある。不老不死なんてスキル持ちがいた、なんて話は聞いてないからな。よく考えたらそうだな。あの兄貴のことだから不老不死求めて召喚した方が勇者召喚した、って言われるよりしっくり来るわ。」


 バランはリリヤの言葉に頷く。正直、数時間前に王城の密偵が勇者召喚をした、と聞いた時、不老不死になられる前に抹殺すべきかもしれない、とすら考えていたのだ。


「他の奴らはどうするんだ?」

「それは後だな。少なくとも勇者はまんまと騙されてた。パッと見た感じ殆どが賛同してたし、自発的に亡命させるのは難しいかもな…」

「そうか…まあいい。じゃあ登録しちまうか。ステータスプレート出してみ。」


 そう言われたタイシ達は素直にステータスプレートを取り出す。バランは三枚とも受け取ると、背後の執務机にあった箱に一枚入れる。すると、ブオン、と言う音と共に、ステータスの画面が空中に投影された。


”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””

タイシ・オオバ 15 男 ヒューマン

職業:剣士 魔法適性:雷

筋力:D

魔力:E

スタミナ:E

敏捷:E

物理防御力:E

魔法防御力:E

スキル:進化、剣術I、言語理解、雷魔法I、感情耐性I

”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””


「なんか生えてるぞ…」


 タイシは投影されたステータスを見て呟く。何やら感情耐性、と言うスキルが生えていたのだ。そのスキルを見たリリヤはタイシに哀れみの目を向ける。


「そのスキルは…劇場に駆られながらも制御した時に生えると言われるものだ…あの部屋の中でお前らに何があったのかは知らんが泣き腫らしてたろう?多分それが原因だ。」


 タイシ達はああ、と納得する。


「ではいいな?このステータスだと…Eランクスタートだな。他の二人も出すぞ。」


”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””

ラン 15 女 ヒューマン

職業:聖女 魔法適性:回復

筋力:F

魔力:B

スタミナ:E

敏捷:E

物理防御力:C

魔法防御力:C

スキル:棒術I、回復魔法I、再生魔法I、言語理解

”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””


”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””

ミオ 15 女 ヒューマン

職業:魔女 魔法適性:風/炎/水

筋力:E

魔力:C

スタミナ:E

敏捷:E

物理防御力:E

魔法防御力:C

スキル:拳闘術I、風魔法I、炎魔法I、水魔法I、言語理解、錬金術

”””””””””””””””” ”””””””””””””””” ””””””””””””””””


「こ、これは…恐ろしいポテンシャルだね…正直現時点でもDランク上位ぐらいにはなれるんじゃないか?数年も修行すれば上位冒険者にすらなれる…」


 バランが何やら呟いている一方、蘭と美桜はキョトン、といった表情を浮かべていた。


 そして、美桜は何やら切り出す。


「あ、あの…私城で見たときは魔法少女だったんですけど…」

「あっ私も!回復魔法使いだった!」


 バランはそんな二人の言葉に顔を顰める。


「職業が一日も立たずに変わった……?いや、そう言えばあのエルフのジジイ、助けたい、と心から願うことで勇者の仲間は覚醒する。とか言ってたな…なあお前ら二人共、最初に職業測ってから誰かに覚悟を捧げるようなことしたか?」


 バランの問いかけに蘭と美桜は揃って頬を染める。


「そ、その…ター君の事を愛すると宣言を…」

「わ、私も…」


 バランはそんな様子の二人を見た後、タイシに視線を向ける。そして、ニチャアと言った感じの笑みを浮かべた。


「お前こんな可愛い子ちゃん二人もたらし込んだのか。何人まで同時に相手できんだ?」

「ヤ、ヤッてない!俺はまだヤってないぞ!」


 タイシはバランの意地悪に顔を真っ赤にして叫ぶ。バランは慌てているタイシを無視する。


「まあ、そんなことはどうでもいいんだが回復魔法ねえ…」

「何かまずいんですか?」


 顎を抑えているバランに蘭が問う。


「いや、不味くはねえんだが…確かこれ、今まで一人しか確認されてねえんだよな…別大陸のオルガって街にいるAランクパーティーのAランク冒険者だったっけなあ…五百年ぐらい前に登録したエルフなんだけどそいつ以外に今まで使用者が確認されてなくてなあ…」

「よ、よく知ってますね…」


 蘭はバランの知識に驚く。が、バランはその称賛を笑い飛ばした。


「ハッ、アイツの旦那に一回のされてるからな。お前らも“血の盟約”ってパーティーは覚えてても損はないぞ。リオってやつとその嫁四人で構成されたパーティーなんだがあれは規格外だ。ほぼ毎年のようにSランク昇格の議論がされてる。リーダーの旦那は一人で大国ニ、三個同時に相手取れる、って評されてるし嫁達も全員Aランクだ。まあ大陸違うし滅多なことがなけりゃ会うことはねえだろうが。奴らは異世界からの転移者だ、って噂がある。まあ眉唾もんではあるがな。もしかしたら故郷は同じかも知れねえぞ?」


 バランの話にタイシ達は興味を持つ。そして、心の中にいつか会いに行ってみよう、とメモをする。


「ああ、話が逸れたな。まあお前ら二人もEランクスタートだ。だがいつでもDランクへの昇格試験を受けられるようにしてやる。じゃあ、冒険者カード作るからしばらく待ってろ。その間はこの冊子でも読んでろ。」


 バランはタイシに“冒険者とはなーに!?”と書かれた薄い冊子を投げよこした。


タイシ、美桜、蘭は、冊子を読み込むことにする。内容は要約するとこうだ。


 冒険者にはランク、と言うものが存在し、そのランクによって受けられる依頼が決まる。規定されている冒険者ランクはG〜Sまでの八段階である。しかし、冒険者ギルドの存在している九大陸で、Sランク冒険者は五人しかおらず、実質的な最高ランクはAである。が、Aランク冒険者は全部で七万人以上いるらしく、当然同じAランク、と言っても差がある。

 Gランクの冒険者は戦闘手段を有している、と判断されればなれる。なお、嘘判定機で犯罪歴は調べられるらしい。

 また、Fランク以上になると防具装着時に露出している部分に紋章が刻まれる。この紋章は、色によって冒険者のランクを示すとともに、冒険者死亡時にギルドに報せが飛ぶ仕組みになっている。色はFとEが青、Dが赤、Cが銅、Bが銀、Aが金、Sが虹である。

 依頼は現在のランクの一つ上まで受けることができ、下限は自分のランクより二段下だそうだ。受付の脇にある掲示板から依頼用紙を受付に持ってきて受理される事で依頼の受付が完了となる。なお、討伐系の常時以来に関しては討伐証明部位を持ち込む事で依頼達成となるらしい。

 基本、ランクアップは条件達成時に受付から伝えられるが、Dランク及びBランク以上のランクへランクアップする際は、試験があるらしい。

 パーティーを組んでいる場合は、初期ランクはメンバーの平均ランクで定まる。が、その後のランクはパーティー実績によって変動するらしい。このパーティーランクは冒険者ランクと違い、下がることもあるのだとか。依頼はパーティーランクの二ランク上の依頼まで受注可能。が、無理をして依頼を失敗すれば報酬の二割を違約金としてギルドに支払う義務が生じるので注意。

 冒険者登録は精霊銀貨一枚で行えるが、冒険者カード紛失時は再発行手数料として精霊銀貨十枚が必要。

 また、冒険者としてのステータスは九大陸で有効で、ここ数千年の間に築き上げた信頼のおかげで、どの大陸でもBランク以上の冒険者は歓迎されるらしい。そして、ほとんどの町がDランク以上の冒険者は街に入る際に税を取られないのだとか。

 貴族との諍いについては冒険者ギルドは認知しないが、罰することもない。基本は滞在している国の法律遵守である。冒険者同士の諍いは殺人や重傷にまで至らなければ関与しないらしい。



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