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進化した剣士の放浪記  作者: 片魔ラン
第零章 亡命と覚醒
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プロローグ

 視界の全てを覆い尽くすかの様に迫り来る牙。避けようにも横たわっている身体は既に動かない。大場タイシは、欠損した四肢から流れ出る血とともに、加速度的に薄れゆく意識を必死に引き留めながら、自らの短い人生の終焉を悟る。


 猿轡を嵌められ、叫ぶことすらままならないまま、生き餌と化しているタイシがその目に宿すのは、失望の闇と復讐の炎だ。


 その感情を向ける相手は、亡命中にタイシを襲い、現在の状況に陥れた犯人。つい二日前まで互いに友、と呼び合っていたその人物との仲は、与えられた称号一つで豹変する程脆かった。


 タイシは最後の力を振り絞る気力も失い、意識を手放す。そして、刹那の間に夢を見る。自分が家族と別れを告げ、訪れた地に於いて晒された人の本性を。選べぬ運命を元に逃走を余儀なくさせられ、死へと続いた経緯の夢を。



 秋も終わり、日本特有の乾燥した寒気が風と共にタイシの身を襲う。午後から降ると予想された雨に備え、トレンチコート姿で登校していた大志は若干の身震いをしながらも、通う中学の校門を潜っていく。


 そんなタイシが手に持っているのは、先日発売されたばかりの大衆向け小説。受験生であり、一日の予定のほぼ全てが学校と塾で埋まっているタイシにとって、心を休めることができるのは移動中だけである。


 大好きな歌手の曲のリズムに歩調を合わせ、歩むタイシは、器用に周りとの接触を避けながら、やがて自分の所属する教室に辿り着く。読んでいた本を閉じ、耳からイヤホンを引き抜き、教室のドアにを開ける。


「おっ、タイシ!おは!」

「あっ、ター君おはよう!」

「タイシさんおはよう。」


 教室に足を踏み入れたタイシに真っ先に声をかけたのは、光堂院勇気。声と共に席を立ち、タイシに寄っていく彼は、見目秀麗、成績優秀、運動神経抜群の人気者だ。


 短く刈り上げた質の良い黒髪と優しげな瞳、百八十センチメートルを超える長身に痩せているのではなく、筋肉で引き締まっていると制服の上からでもわかる身体。


 タイシとは中学一年で出会い、以来友人として接している彼は、三年経った今でも毎日の様に告白されるモテ男である。そんな彼は、同性から妬みや嫉妬の感情を向けられることが多く、友として接しているのはタイシだけである。しかし、嫉妬を覚えられていても周りを導く様に振る舞う彼は、常に集団の中心にいる。実際、現在彼が担っている生徒会長の役には、満票で選出されているのだ。


 次にタイシに声を掛けたのは篠田蘭。タイシの幼馴染である。長い黒髪を携え、何処か日本人離れした美しさを齢十五にして持つ彼女は、日本人とアメリカ人のハーフだ。その端正な顔立ちに、彼女が天真爛漫な笑顔を浮かべるその様は、思わず見惚れてしまうほど美しい。


 百七十センチメートルと女性としては高い身長と、これまた日本人離れした天性のスタイルは、外国のモデルを彷彿とさせる仕上がりである。


 実際、彼女は中学二年の時からモデル業を行なっている。また、その性格からは想像もつかない聡明さを買われて、深夜ではあるが。バラエティデビューもしているまさに学校の華である。そんな彼女は既に学年のほぼ全ての男子から告白を受けている。が、その全てを好きな人がいる、の一言で粉砕している。


 最後に挨拶をしてきたのは萬田美桜である。彼女は蘭と並び、学校で二大美姫と呼ばれる美少女だ。臀部まで覆い隠すほど伸びた艶のある黒髪、メガネの奥から覗く切れ長の目は鋭く、しかし温かさを感じさせる為、非常に理知的な印象を与える。大和撫子、と形容するに相応しい整った顔立ちは、常に引き締まっている。


 それもそのはず。彼女は日本人ならば誰でも知っている大企業の令嬢なのだ。その立場上、常に周囲の目を気にする必要があり、だらしのない姿を見せる事は出来ない。何故そんな人物が公立の中学校に通っているのかは誰も知らないが、既に入学してから三年が経つ今では、誰も気後れする事なく接しており、その冷たいながらも相手を思いやる心が垣間見える彼女の姿勢に惚れている生徒は多いらしい。しかし、彼女には許嫁がいる、との噂があり、告白されることはほとんどないと言う。そのためか、校内ファンクラブのメンバーは百人を超えるとか。


「おお、おはよう勇気、蘭、美桜さん。」


 タイシはそう返しながら、自分の席に着く。


 その瞬間であった。教室の内部が光り輝く。一瞬で生徒達の目を襲った光は、彼ら、彼女らの視界を奪い、全員がその場で目を押さえて金縛りにあったかの様に固まってしまう。そして、鳴り響き始めるのは黒板を引っ掻いたかの様な音。それは叙々に大きくなり、タイシが自分の鼓膜が破ける、と思った瞬間、終わる。


 全てが収まった後、教室に残ったのは椅子や机に、開き掛けの本、床に音を立てて落ちるスマートフォンやイヤホン。その場にいた二十八人の中学生達は、消えていた。







えー、毎日暇な時間を二十分ぐらい使って殴り書きして推敲もせずにそのまま乗せていますので誤字、変な表現、文章構成がおかしい箇所、テンション/展開がおかしいところは多分多々あります。なんかあれば是非報告よろです。他者の目線は大事なのでどんな感想でもいいのでおねげえしますだ。誹謗中傷なんでもござれ。

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