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変化。
「ねぇ、君。起きてよ。」
私は自分を呼ぶ人の子の声で、ふと我に返る。
どうやら、寝てしまっていたらしい。
とはいえ、今いる状況は先ほどまでとは違う。
私を包み込むかのように暖かくて明るかったのだ。
少し前までとは正反対だった。
だが、これは寝ぼけただけかと思い、その人の話に耳を傾けることにした。
私は、迷うことなく声のする方向を向いた。
状況が掴めず、その子と向き合うことだけで精一杯だった。
ずっと見られていたのかと思うと恥ずかしくてたまらない。
そのせいもあってか、どんな表情をすればいいのかすらわからなかった。ただ、無理矢理笑顔を作り、笑って見せた。
そんな私の胸の内を知る由もないその子は、ずっと笑顔を保ったままそこに立っていた。
もはや、可愛いという感情よりは恐怖心を覚える程だ。
そこでとある疑問が浮かんだ。
それは、なぜ理想の世界のような場所に自分がいるのか、ということだった。
何度も頬を叩くも何も起こらず、夢ではなかったことに気付くと、さらに恐怖心と疑問が増した。
なぜ、私がこんな世界に迷い込んだのだろう。
嬉しさの反面、信じがたい事実に頭を抱えた。