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re.time  作者: 新屋はる
First and last encounter
54/55

自然

屋上には、大きな木を中心に常緑樹が美しい自然が広がっていた。

モノクロの外壁が、芸術要素を付け足している。

休憩用のベンチも景色と調和するように存在していた。

ここは、心が癒えると有名な庭だろうか。

少なくとも、ここが病院内だとは思えなかった。


外気は冷えきっていて、吐く息で顔が隠れてしまいそう。

肌を刺すように冷えた空気に耐えきれなくなった手は凍り、慌てて手を服へ引っ込める。

久しぶりに寒さに触れた私には、かなり過酷なものだった。

だが、それ以上に自然が造り出す芸術に引き込まれていく。

それは自制できるようなものではなかった。

その世界の餌食となることにすら快感を覚え、心の底から欲望が溢れ出していく。

思いよりも先に身体がそれらを欲していた。


そんなことを実感していると、寒いという感覚も次第に消えていた。

美しさに囚われてしまえば、寒さは気にならないどころか、寒ささえも美に見えてくるのか。

新たな発見に喜びが込み上げてきた。

ここで粉雪でも舞えば芸術味もさらに増すのだろうけれど、大気もそこまで冷え切ってはなかったらしい。一向に粉雪の気配はなかった。


だが、それだけで十分だった。

わずかな幸せも全てが一生ものの思い出だ。

少しの発見でも、少しの喜びでも沢山の幸せに変えればいい。

自分の考え方次第なんだ。

この景色だって、偶然にも自然が作り出した全く同じものなどない奇跡の塊なのだ。

たった一瞬で変わってしまうが、その景色に遭遇できることが幸せなのだ。

いつしか、そう思えるようになっていた。


そして、今日の自分は昨日よりも前向きになれたような気がした。


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