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一歩
そんなことを話していると、すぐに屋上へ到着した。
「ねぇ。ここから一人になりたい。」
精一杯の力で振り返り、姉に頼む。
姉の表情は固まっていた。
私の予想外の発言に状況を飲み込めていない様子だった。
「屋上」「一人」
その言葉が姉を不安にさせたのだろう。
申し訳なく思い、発言を訂正しようとも考えたが、とりあえず余計なことは言わず、姉の返事を待つことにした。
「分かった。おかしな真似だけはしないでよ。あと、帰る時はちゃんと言うこと。それに、寒いんだからなるべく早く帰ること。いい?」
「分かった。ありがとう。」
姉は余程心配だったのか、私を送り、屋上から出るまで何度も何度も念押しをした。
突然、心がホッと温まった。
ここまで姉が心配してくれることが何よりも嬉しかった。
一度は壊れかけた姉妹の絆は着実に元に戻るどころか、より一層強まるための一歩を踏み出した。