50/55
自然
絵に描き表せないような群青の背景と、それ華やかに引き立てる純白の粒。
人間や動物の声もなく、次へ次へと移り変わる情景にただ触れたくて、気づけば手を伸ばしていた。
景色に触れられるわけもなく、手は儚くも持ち場に戻る。
自分勝手な理由で自然を貶し、それらを見ることすら苦痛だった「自然」も、いつしか心の拠り所となっていた。
時には、やり場のない怒りや先行きの見えない不安をも軽減させてくれる、私の救世主のような存在にもなった。
この景色をもっと近くで見たいと思った。
自然に触れて居たいと思った。
そして、何より、誰からも愛される自然になりたいと思った。