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自分勝手
「じゃあ、想太さんは…。」
言葉を選びながら言おうと思った。
でも、途中で言えなくなった。
考えたくもない最悪の事態を想定してしまったことで、姉からの言葉がただただ怖かった。
住む世界も歩む未来もかけ離れていたっていい。
想太さんの記憶から私の存在が消えてしまっても構わない。
たとえ想太さんに会えなくても、想太さんが生きてさえいればそれでよかった。
そんな覚悟で姉の言葉を待つ。
姉も、言葉を選ぶように言った。
姉の表情が徐々に和らいでいく。
「星よりも少し前に意識を取り戻したみたいだよ。」
私はその言葉を聞いた瞬間、胸を撫で下ろした。
ただ嬉しかった。
そして、その言葉を聞いた瞬間、想太さんに会いたいと思った。
直前までは想太さんが生きてさえいればそれでよかった。だが、想太さんが生きていることを知ってしまった以上、欲張ってしまうのにも無理はない。
自分でも都合のいい奴だと思った。
だが、今はそんなことなどどうだっていい。
ただ、想太さんとの再会を願うばかりだった。