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事実
ようやく一般病棟からリハビリ病棟に移れるという知らせを聞いた時、姉は私の身に何があったのかを教えてくれた。
姉との喧嘩直後に家を飛び出した私は、当時、連日ニュースで取り上げられていた連続ひき逃げ事件に巻き込まれた。
車は横断中だった私ともう一人をひいた。
そして、そのもう一人こそが想太さんだったのだ。
それから三年間、私は眠り続けた。
事故の状況は最悪で、医師からも『星さんの意識は戻らないでしょう』と告げられていたらしい。
だが、姉は私を信じ、寄り添い続けた。
きっと姉の事だから、私が事故にあった原因を、自分のせいだと思っていたに違いない。
ただ、その思いから寄り添い続けただけなのかもしれない。
たとえそうだとしても、姉妹の絆が起こした奇跡に変わりはない。
その話を聞くや否や、想太さんのことが気になった。
あの時、「普通ではない世界」で想太さんと出会えたのは同じ事故に遭ったからで、想太さんも事故の直前の出来事が関係していた。
私は生きていた。
ならば、きっと想太さんも生きている。
会えなくてもいい。
ただ想太さんが生きてさえいれば。
ただ願うばかりだった。