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現実
眩しい光に仕方なく目を開けると、傍には姉がいた。
クリーム色の天井、鼻をつくような薬品臭。
硬いベッドの上。
身体中に刺さっている管。
瞬時にここがどこなのかを悟った。
「星っ!」
「お…姉ちゃ…ん。」
「よかった、よかった、よかった。」
姉は目に大粒の涙を浮かべ、ただ、『よかった』と連呼していた。
静かに頬をつたって流れ落ちる姉の涙。
それは、姉が握っていた私の手にも流れ落ちた。姉の涙は暖かく、姉の心の温度のように感じた。
「ごめんね…。」
自分の身に何が起きたのか、今の私には分からなかった。なぜこの場所にいて、なぜ姉が泣いているのかということも。
「無事でよかった。」
『無事でよかった』
正直、意味が分からない。
無事ではない状況でもあったのだろうか。
一度はそうも思ったが、ひとまず考えることはやめよう、と思った。
姉に手を握られたまま、天井の一点を見つめていた。
気づけば、涙がこぼれ落ちていた。
この温かさに、もう一度眠ってしまおうと思った。
そして、この温かさが続けばいいと思った。