別れ
「そろそろ戻るか」
そう言われた時、私の身体はほとんどが透けていた。自分では気づかなかったが、想像以上に透けており、なんとも言えない気持ちになった。
だが、想太さんに透けた自分を見られた恥ずかしさは全くと言っていいほど感じなかった。
これこそ本当に心を許せた証なんだな、と思った。
「じゃあまたな。」
「またね。」
これから歩む個々の道の為にも、これ以上想太さんを苦しめないためにも無理矢理笑顔を作り、別れを告げた。
辛くないわけがなかった。
この別れが幸せに繋がる訳もなかった。でも、仕方がなかった。そうするしか私に出来る方法はなかった。
これが最高の決断だったんだ。
自信を持つためにも、自分の行動を無理矢理正当化した。
現実の世界ではまた困難の連続だろうし、不条理な世界に踏み出さなければならない。
でも、それが現実だった。
そして、これから生きる世界だった。
勿論、不安になる。
だからこそ頑張れる。
その中で何かを得るためになら。
想太さんと出会ったことで前向きに考えられるようになった。
私がそう言うと、想太さんが目を閉じた。
私も後を追うように無心で目を閉じる。
この世界での思い出を胸にそっとしまい、大切な人の名前を心の中でそっと言う。
お姉ちゃん、と。