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トキ
高台を下る坂道の途中でふと我に返る。
常夜灯はまだ見えない場所にあるというのに、何故か目の前にあるような気がした。
時間が止まればいいのに。
本気でそう思った。
常夜灯に着いてしまえば想太さんと別れなければならない。
想太さんのいない世界で生きていく自分が怖かった。
闇に染まり、自分が自分ではなくなることを想像するだけで寒気がする。
想太さんと出会えたことで向き合えた自分の過去。
想太さんのいない現実で、果たしてそんなことはできるのだろうか。
これが甘えだということは分かっていた。
だが、どうしても認めたくはなかった。
後悔しないために、今は足を止めるわけにはいかなかった。