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秘密
それから、ゆっくりと想太さんは話し始めた。
想太さんは両親と3人暮らしで、「ある日」の数か月前から、離婚問題で論争を繰り返していたという。
想太さんの過程では父親の権力が格段に強かったらしく、離婚後の資産もほとんどを父親の手に渡ることとして話が付いたらしい。
想太さんの母親は先天性の疾患で大金の医療費がかかる。
だからこそ、その条件に納得できなかった母親も、問題の長期化と父親の暴力を恐れて承諾せざるを得なかった。
その後、離婚は成立し、想太さんは父親に引き取られ、母親と会うことはなくなった。
そして、離婚から1年後、母は医療費を稼ぐために働き続けたものの、その生活に耐えられず自殺したという。
その前日、想太さんは偶然母親と再会し小話をする。
『俺はなんとかやってる。』
母親からの質問に、そう答えた。
想太さん曰く、その発言が母親を苦しめた原因だと後悔しているのだ。
この一言で母親が自分の存在意義を完全に失ってしまった。
それが、自分がとどめを刺したと思っている原因だった。