再思
年間1万人が訪れるというこの高台。
それは急斜面を登り終えた先に広がっていた。
それほど高くもない木の柵のおかげで、視界が遮られることなく、絶景が容易に一望できる。
絶景好きには持ってこいの場所だった。
水平線に沈む夕日を初めて目の当たりにした私は、自分の過去を恨んだ。
夕陽に照らされ、光り輝く水面。
空に映える、遠くに広がる幾多の島々。
飛び交う鳥たちの鳴き声。
こんなにも美しいものが存在していたというのに、散々自然が嫌いだと言い張ってきた。
私を見下しているような気がして、自然が憎かった。
それらを知ろうともせず、自分勝手な思い込みから一方的に避けていた。
ただ、逃げていただけだった。
自然を悪者にして、自分の過去や現実から。
何にも邪魔されることなく、美しすぎる景色に見入っていた。
この景色に埋もれることのできる自分が幸せ者のように思えた。
この景色で過ごしたい。
本気でそう思った。
だが、それも長続きはしなかった。
夕日はあっという間に顔を隠す。
やはり自然は儚かった。
そこで冷静になる。
儚いのは人間も同じではないか。
分かっていたことなのに今更ながらに痛感する。
自然を憎んでいた後悔と景色の魅力に気付けた嬉しさが交錯する。
そして、今だけはどうしても景色に見入りたい気分になった。だからこそ、想太さんのことなど忘れた同然でその様子に終始見入っていた。
惜しまれながら姿を隠す夕日に心を奪われた。