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旅路
会計を済ませ、喫茶店を後にした。
想太さんは私の分まで払う気でいたらしいが、そこまでの関係性ではないためにに申し訳ないと思い、割り勘をお願いした。
喫茶店を一歩でも出れば、喫茶店に長居しすぎたせいか、夕日が沈む準備をしていた。
「どこに行く?」
想太さんはそう言うと、私を覗き込んだ。
行き先を決めてはいなかったため、慌てて想太から目を逸らす。
この街は絶景が売りなだけの街で、それらを取ってしまえばただの田舎でしかないのだ。
だからこそ、行く場所も限られていた。
絶景スポットだとか常夜灯だとかカフェだとか。
だが、満腹感を感じている中、カフェに入る気にもならず、また、先程までいた常夜灯に戻る気にもならず、選択肢は自然と1つに限られた。
「あの高台に行かない?」
私から少しでも気分を上げなければという思いで、丘を指差し、声のトーンを上げた。
「そうするか。」
想太さんは即答し、すぐに高台へと出発した。