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珈琲2
自分の過去に向き合えているかととわれれば、即答で首を横に振るだろう。
そんな私が、まだ現実の世界に戻って良いわけがない。
『普通ではない世界』で何を学んできたのか。
きっと現実の世界でこの24時間を振り返った時、そう思うだろう。
最悪の場合、この件をきっかけに自分自身を追い詰めかねない。
そして、何よりこの世界でチャンスを与えてくれた人々に見せる顔がない。
自分と向き合うためにあるこの世界をそんな形で忘れたい記憶にはしたくなかった。
ならば、一つでも多く思い出を作ろうじゃないか。
想太さんといることで、より自分と向き合えるかもしれない。
この機会をどうしても逃したくなかった。
向き合う手段も浮かばない今、私はこれにかけるという選択肢しか残っていない。
最後の珈琲をゴクリと飲みきる。
珈琲独特の苦味が一気に流れた。