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心の距離
いち早く空腹を満たすため、速足で歩く想太さんの横を必死に食らいつくように歩いた。
想太さんさんはよほど空腹感を感じているのか、速足で薄暗い路地に入って行った。
横幅2メートルに満たない程の路地には、今にもねずみの出てきそうな不気味さが漂っていた。
何かが腐ったかのような悪臭はなかったが、その路地の放つ異様な空気に背筋が凍った。
怯えることもない想太さんは、この状況に動じるわけもなく、せっせと歩き続けた。
想太さんとの距離にさえ、何とも言えない心の距離を感じた。
路地を一本入るだけでこんなにも世界は変わるものなんだ、と改めて実感した。
不気味さに足がすくむ中、想太さんを必死に追いかけた。