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re.time  作者: 新屋はる
An unusual world
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「グゥーッ。」




「あはっ(笑)」




「ごめんね…。」




真剣な話をしていた時、私のお腹がついに駄々をこね始めてしまった。



人の前。

それも異性の前で恥ずべき行動をしてしまった。


空腹感は薄々感じていた。

だが、一人で過ごすならば腹が鳴ろうが関係ない、という考えから何も口にしてはいなかった。

1日の断食は余裕だろうから我慢しよう、と。

どうせ『普通ではない世界』で誰かと関係を持つことはないだろうから、と。


想太さんに出会うことなど、だれが予想しただろう。

この件で街頭インタビューでもすれば、全員一致で「ありえない」と口を揃えて言うはずだ。

そんな確信のようなものがあるほど信じられないことだった。


突如静かなに夜にこだました腹の泣き声。

正確にその音を覚えてはいないものの、過去最大規模の音だったような気がする。

音の大きさや鳴り方はどうであれ、想太さんに聞かれたことに変わりはない。


だが、それも不幸中の幸いだった。

恥ずべき自分を見られたのが想太さんさんで良かった。


また、この世界で良かった。

想太さんとはこの世界だからこそ出会っただけに過ぎない。


ならば、どうせすぐ別れる次第なのだ。

別れてしまえばこの件でからかわれることもない。

不安も和らぎ、ほっと胸を撫でおろした。






グゥー。




そんな時、また同じような音がした。



だが、私には自覚はなかった。

私が状況を掴めていない中、また想太さんが笑い始めた。

二度にわたり同じ失態をしてしまったのか、と焦った。私はそこまで食べ物を欲しているのか。


想太さんには食い意地の張った人間だと思われたに違いない。

そんな誤解を招いてしまった。


そんな人間ではないんだ。


ただ、断食をしていたんだ。

そう言いたかった。

私は食い意地の張った人間ではないんだ、と。


「ごめん。俺もお腹すいてきたわ。星さえよければ一緒にどう?」



想太さんのお腹が駄々をこねていたのだ。

私ではなくてよかった。

ただ、そうとしか思えなかった。


それと同時に、別の疑問も浮かんだ。

最後の一言、それはお誘いのような気がした。



これが世のナンパというものなのか。

いや、ナンパとは少し違うか。

ナンパのために、これまでこんなに話さない。

生まれてこのかた16年。


ド田舎で暮らしてきたせいもあってか、このような現象はテレビや小説の世界でしか遭遇したことがなく、正直分からなかった。


ナンパというものは都会で美女がされるものではないのか。

よく分からなかったが、そんな考えがあった。


最低でも私とは縁のないものだった。

単なる誘いであったとしても、私とは無縁のもの。


しかし、たかがご飯だ。

それに、私も空腹で倒れそうな次第だ。

ならば、想太さんとご飯を食べてしまえばいいと思った。


「私で良ければ是非。」


「いいの?!じゃあ俺についてきてな!」



私が答えた途端、想太さんが感情を包み隠さず表に出した。


その時、私は想太さんとなら『普通ではない世界』を少しでも思い出が作れると思った。

だから、この希望を想太さんに託す思いで大きく頷き、立ち上がった。

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