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re.time  作者: 新屋はる
An unusual world
19/55

あの

「あの。」


声のした方を向き、立ち上がってみると、同い年くらいの男子が立っていた。

私は、その男子とは面会もなかったため、本当に私を呼んでいるのかが分からなかった。

周りには私しかいないようだったけれど、念のためと思い、聞き返した。


「私ですか?」


「はい。名前が分からなかったので。」





この人はなぜ私に声をかけてきたのだろう。


私はそう思った。


第一印象は憎めない温厚篤実な人。

その人は私何の用があるのだろう。


その人には半信半疑でいたつもりだった。

でも、この出会いを捨てたくはなかった。


心の奥で誰かをを欲している自分もいた。

それがこの人なのかもしれない。

孤独な心をこの人となら癒し合えるような、そんな気がした。


私の勘ではあるが、この人も何か訳があって『普通ではない世界』に飛び込んできた人だと思った。




「大丈夫です。ちなみに、私は(あかり)です。」


「俺は想太です。」



尋ねてくれたのに名乗らないのは失礼だと思い、簡単にではあったが名乗ることにした。


その人はは想太さんというらしい。

身長がかなり高く、スタイルも抜群。

私とは全くの無縁。

だから、話しかけられた理由が気になった。

ただ、冷やかしではないような気がした。


「どうかしたんですか?」


「いや、同じ境遇のような気がしたので。」


私はその言葉に大きく反応してしまった。

同じ境遇ならば、誰かを探しに来たのだろうか。

いや、私と同じようにやり直すために来たのだろうか。


こんな美少年が私と同じ境遇なわけがない。

だとしたら、やはりからかわれているようにしか思えない。

何度見ても、私と同じ境遇のようには感じられなかった。


「想太さんも誰かを探しに来たんですか?」


「そうです。一応…。」


しばらく沈黙が続いた。

その言い方には少し裏があるように思えた。

これは、本当に私と同じ状況なのかもしれないな、と思った。

想太さんも会いたい人に会えていないのだろう、と。


そう思うと、何と言えばいいのかがわからなくなった。

共通であろうこの件について会話することも、今は違う気がした。だからこそ、何と話せばいいのかわからなかった。




長時間にも及んだ沈黙を破ったのは想太さんだった。



「それが、会えていないんですけどね。」


「えっ、私も探したんですけど会えなくて。」


想太さんからこの言葉を聞いた時、『普通ではない世界』における、私の勝手な予想が確信に変わった。


3年前とこの世界が一致していないことに、私は疑問しか浮かんでいなかった。



私が自宅に着いた時刻。その時間には確実に姉は家にいた。

だが、姉は家にいなかった。姉の居そうな場所を何箇所も探してもいなかった。

まるで、この世界から消されたかのように。


「俺、気付いたかもしれない。この世界の秘密に。」


この言葉に耳を疑うことはなかった。



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