高校にて
次に向かったのは姉の高校だ。
今日は休日だから、授業自体は休みのはずなのだけれど、念のため向かった。
姉が部活動で学校に居ても不自然ではないからだ。
高校には、熱心に部活動に励む生徒の姿があった。
姉は家庭のことを優先するために部活動には入部していないが、助っ人として部活動に参加することは少なからずあった。
私は入ったことのない校舎に入り、職員室へ向かった。
どこに職員室があるのかすら分からなかったが、とにかく明かりがあり、人の声のする方へ歩いた。
すれ違う先生方に何度も見られたが、視線など関係ない。
そんな中、すれ違う先生方に声をかけられなかったことが唯一の救いだった。
大きな校舎に多少迷いながらも、やっとのことで職員室に着くや否や、大きな声で叫んだ。
「山田先生いらっしゃしますか?」
山田先生とは、姉の担任の先生のことだ。
案の定、山田先生は私が誰かわからない様子だった。
口を開け、目を丸くしている。
その対応にも無理はない。
なんせ、1度も顔を合わせたことがないのだから。
「どうかした?」
誰か分かっていないことは確からしく、キョトンとした顔をしている。
「あの、藤井さん来てますか?藤井の妹なんですけど。」
私がそう言ったところで、誰かが分かったらしい。
急に高速でうなずき始めた。
「お姉さんね。お姉さんなら今日は学校に来てないよ。」
「すみません。ありがとうございます。」
私はそう言うと、山田先生を置いて走り出した。
山田先生には大変失礼なことをしてしまったのだけれど仕方がない。
なぜなら、この時点で時間を沢山使い果たしていたのだから。
元を言えば、くよくよしていた私が悪いのだけれど、だからこそ私には走る義務があった。
そんな中、姉を見つけられるのかという不安はより一層募るばかりだった。
それでも、私はまた走り出した。
僅かな希望にすがるように。