喫茶店で
私が二か所目に立ち寄った場所は姉のバイト先である喫茶店だった。
私は喫茶店に着くや否や、マスターに話しかけた。
私の息は既に切れていて、マスターには一番に心配された。
マスターは相変わらずコートを着ていた。
この喫茶店のマスターは、年中コートを着ていることで有名なのである。
真夏の炎天下でもコートを着ているものだから、不思議というレベルを超えて変人だった。
私は自分の息が切れていることよりも、マスターが年中コートを着ていることの方が気になるのだけれど、マスターにとって年中コートを着ることは当たり前のことらしいので、その件については何も言わなかった。
「マスター、お姉ちゃん来た?」
残りの時間も配慮した上で余計な談笑などは省き、一番聞きたかったことだけを聞いた。
「お姉さんなら来てないさ。それより、見ないうちに星ちゃん大人びたね。」
マスターが真面目な調子で尋ねてくるものだから、私も少し気にしてしまった。
何故大人びたのだろう。
マスターはマスターのまま。それなら私も私のままだと思った。
通常なら、疑問に思ったことは深く考えるけれど、今、ゆっくりしている時間など私にはない。
なんせ、この世界に入れる時間は24時間しかないのだから。
「変わったのかな。それより、急がなくちゃいけないからごめんね。」
そう言い、最低限の用事を済ますと喫茶店を後にした。
喫茶店の滞在時間は短かったけれど、喫茶店を満喫することが真の目的でもないので、その件については1ミリたりとも気にもならなかった。
ただ、姉との関係修復だけに必死だった。