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故郷
無我夢中で自宅に向かった。
街並みはどこか懐かしい。
最近立て続けにできた店や住宅街もなく、3年前の街並みの姿そのものだった。
もちろん3年前の世界に来たわけなのだから当たり前なのだけれど、それでも感動を覚えた。
今と比べても唯一変わらないことは、昔懐かしい故郷があることだけだった。
家までの坂を登ると町全体と港が見渡せる港も。
古くから、営業内容は変わりつつも、人々から愛され続けている店も。
こうして、古い趣のある街並みだけが残り続けていた。
そこで思い出した。
人の心は変わってしまうけれど、故郷や景色は変わらないという意味の歌を。
本当にその通りだと思った。
まるで、現代人に情景付きで伝えるべき言葉だとも思った。
故郷に比べて、自分はどれほど愚かな自分になってしまったことだろう。
この街ならではの自然に触れて育ったのに、私はろくな人間に育たなかった。
歌を通して、また自分の情けなさを痛感した。