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走
朝になればすぐに行動しようと思っていたが、案外疲れていたようで、予想以上に睡眠をとってしまった。
携帯電話の画面に表示された時間は8時だった。
この時点で『普通ではない世界』で過ごせる残りの時間は16時間を切っていた。
あと16時間で何ができるのだろう。
もしも会えなかったらどうすればいいのだろうか。
先回りのことを予想すると不安を隠せなくなった。
だが、こんなことを考えている時間もない。
なぜなら、残り16時間未満しかないからだ。
その時間で何かを成し遂げなければならない。
そんな衝動に駆られていた。
だから、走った。
ただただ走った。
まるで、我が身を捨てるかのように。
この時点で遅れをとっていたから、予め決めていた目的地へ一心不乱に足を回転させた。