1.8.開発
なんつー威力なんですかこれは。
こんなの当たったらひとたまりもないじゃないですか。封印しますね。
「クルセマ? ちょっとこれ……やばくない?」
「うん……多分使ったら浄化遺物だってバレちゃうね……」
「だめじゃん!」
バレちゃいけないっていう前提でしょ? 駄目じゃないですか……。てか結構簡単にバレちゃうものなんですね? なんで?
「浄化遺物は、混餓物の地を使うことが大半なんだ。地面を変形させたり、木を操ったり、岩を操ったり。その場にあるものすべて武器にできるからね。でも……操る力が強すぎると簡単に浄化遺物の恩恵を持ってるってバレちゃう」
あ。そうなんですねぇ……。
クルセマも浄化遺物だったころは強い力を持っていたらしいのだが……力を失ってからは操れる精度と距離が短くなったらしい。
ほとんどの浄化遺物は物だが、自分の身を守るために混餓物の地を使って抵抗をするようだ。他にも混餓物を使役したりして守るようにしているようだが、大体は恩恵の力を使って自分の身は自分で守ることが多いらしい。昔はそれを目安として浄化遺物かどうかというのを判断していたようだ。
「ん~新しい技を考えるしかないね~。使ってもそう簡単に浄化遺物だってわからないような奴を」
「あー……じゃあどういったものがバレにくい技になるんだ?」
「地面を使う技はすぐにバレちゃうよ。混餓物の地を利用している証拠だからね。岩も駄目かな。バレにくいのは空気とか木を使う技かな。何処にでもあるし見えないしで便利だよ」
空気か。空気も混餓物の地の一部なんだな。そう言えば藤のじいさんは空の風って言ってたけど……あっれ? もしかして藤のじいさんって……。
「藤のじいさんは浄化遺物だったのか?」
「なわけないじゃん。あの能力は混餓物を使役して得ている能力だよ」
違うんですね。空気って聞いたら藤のじいさんが使ってたあの技を思い出してしまった。空の風って名乗るくらいだしな。空気使ってんだろ絶対。
まぁ私はあそこまで精密な技は出せないだろうが……あれを参考に練習してみようかな? クルセマにそのことを話してみると、許可が出たので早速試してみようと思う。
狙うはなぜか目の前にある大岩。さっき地岩を使った時に地面から出てきたやつです。地岩は強力な攻撃だが岩を壊すことはできないらしい。ガッチガチの鎧を装備していたらあの攻撃も何とか防げそうだな。
よし、イメージだな。あの大岩に巨大な空気の塊を叩き込むイメージ……イメージできるかよ! 空気は見えないっつってんだろうが!
あ、待てよ? 段ボールを使った空気砲を想像しよう。確かタバコの煙を入れて空気の流れを見る番組を見たことがある。あれならイメージしやすそうだ。
えーっと、空気を正方形の空間に入れて、左右から思いっきり叩いて小さな穴から……空気を射出するイメージ……。名前何にしよう。空気砲でいいや。
「空気砲」
ボオオオオン!
「わああああああ!?」
「のわぁああああ!?」
発動させた瞬間前方から強烈な風圧が襲ってきた。構えていなかった私たちは踏ん張ることもできずに2mほど後方へと吹き飛ばされてしまった。
ちなみにクルセマは軽いので4mくらい吹き飛んでいる。
ボウン! ゴロン、ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
とりあえず狙い通り大岩の中心に当たったらしい。だが大岩の中心には大きなへこみができていた。あれ? これもしかしなくても地岩より半端ないんじゃないですか?
「ちょっと! どんなイメージしたの!?」
「い、いやすまん! 段ボールで作った空気砲をイメージしたんだが」
「段ボールでこの威力なの!?」
え、あ、すいません。あ。岩割れた。
「これも……セーフなんだけど……アウトだよね」
「バレないけど威力がやばいから人には向けれないってところか。えーっと……後は木がいいんだっけか?」
「そうだけど……」
すっごいクルセマがじーっと見てくる。いや仕方ないじゃん。私もまさかあそこまでの威力が出るとは思っていなかったんだからさ。
段ボールだからよかったけど大砲とかイメージしたらやばかったかもしれんな……。でも便利だなこの能力。イメージするだけで何でもできそうだ。
さて……大きな木で実験してみるのもいいのだが……さっきのことがあるので草にやってみることにした。草と言っても雑草とかではない。そう。タンポポです。流石にこれならどんなことが起こっても対処できる気がする。
「で、木を使う時はどんなイメージをすればいいんだ?」
「僕の場合は、枝をしならせて叩いたり、根っこを伸ばして捕まえたりするよ」
なるほど。そういう感じね。でも私が初めに使うのはタンポポだから……ん~どんなイメージがいいだろうか。タンポポだと戦ったりできないだろ流石に。とりあえず動けってイメージしてみるか。
動いてくださいタンポポさん。あ、技名どうしよう。んーーー……踊り草? 操草? 操り草でいくか。
「操り草」
ずるっ。
「は?」
タンポポの根っこが出てきた。草の根っこっていうのは結構深くまで埋まっている奴が多いが、タンポポは……くそ長い。それが湾曲して地面からはい出してきた。
しばらくしているとすべての根っこが地面から出て、とぐろを巻いてその場に停止した。
「きっも!」
「ええ……」
おいおいクルセマ呆れてるぞ! ほらお前なんかできないの? あーこれ指示したら動くとかそんな感じかな?
よし、じゃあ……そこの小さな石を持ち上げて、さっき私が吹っ飛ばした岩にぶつけてください。
するとタンポポは動き始めた。指示通り、地面に落ちていたその辺の石を根っこで器用に持ち上げた。とぐろを巻いて足場を安定させると、思いっきり石をぶん投げた。
おおよそ根っこが出してはいけない風を切る音を出してはいたが、気になるのは大岩のほうだ。
パコン!
割れた岩がまた割れた。嘘でしょ? タンポポは得意げにふんぞり返っている……気がする。よし、お前戻れ。地面に戻れ! こんなの植物と認めてなる物か!
そう念じるとタンポポは先ほどいた場所に戻っていった。土も綺麗にならして戻ったため、全く違和感がない。なんだこいつ……。
「…………クルセマ。これは……合格?」
「なわけないでしょ」
「はい。すいません」
どうしろっていうんだよ!!!