2.2.転移先
ボゴッ……もぞぞぞ……。
「ぶわぁあ!!」
暗い土の中から地上を目指して何とか脱出することができた。
どうやらあの後、そのまま地面に取り残されてしまったようで自力で脱出するしかなかったのだ。
土を操る能力をなんとか使いこなし、数十分かけて地上に脱出することができた。
「また地面かよ! はぁー……疲れた……。てかどこだよ……またわっけなのわからない場所に飛ばしやがって……」
ここに来て二度目の土の中だ。
また体が汚れてしまって不快であるが……今は安全確認をしておかなければならない。
とは言っても私の脅威になるような敵はいないとは思うのだが……さて、一体どうしようか。
まずは周囲を確認してみよう。
周囲は……一言でいえば森である。
人工物などはないようで、自然豊かな森だという事が見て取れる。
耳を澄ませてみるが、大きな混餓物や水の音などはしない。
混餓物がいないという事には安心して良いのだろうが、水がないというのは致命的である。
それに、今は敵がいないというだけで危険がないとは言い切れない。
なので……とりあえず地面からあの硬い棒を作り出しておく。
地玉……だったか。
それはこの土地にもあるようで、すんなりと作り出すことができた。
別に減って困るようなものではないはずだし、石自体も大きいだろうから問題ないだろう。
「よいしょっと」
今回作り出されたのは銀色の棒だった。
槍にしてもよかったのだが、今はこれで問題ないだろう。
もし硬い敵が現れた時は槍や薙刀の形にして戦うことにする。
とりあえず何処かに歩いていきたいのだが……さて、どこに行けばいいのだろうか……。
そういえば……あの混餓物、ロッズアイクだったか。
あれは何を言っていたのだったか……。
どちらにもついてはならん。
それが何故か見て回れ……だった気がする。
そんなもの言われたって私にわかるはずもない。
自分が浄化遺物ってだけで妙なことに巻き込まれているが……今度あいつが出てきたときはさっさとぶっ飛ばして話を聞くことにしよう。
自分で考えてもわからないことなどいくつもあるのだから。
とは言っても、まずはこの状況から生き延びなければならないだろう。
さて、どうしたものか……。
「とりあえずー……動くか」
森とは言ってもここは随分と平らな土地なので、どっちが麓なのかはわからない。
という事は、この辺りは海外のような広い森林なのだろう。
坂道を下っていればいいという訳ではなさそうだ。
こういう時は、棒を立ててからそれを離す。
すると……。
「よし、あっちか」
行先を教えてくれる。
意外と馬鹿にならないのがこの行先の決め方である。
勘というのは時に重要な要素であり、こういう時は勘で行先を決めるに限る。
ということで、棒が指示した方向へと歩いていくことにしたのだった。
◆
なーんにもない!
なーんにもない!
森しかない。
ていうか混餓物もでてきやしねぇ。
正直歩きすぎてお腹が空いてきた感じがある。
出来れば何か……食べるものを恵んでほしいのだが……。
混餓物も何も出てこない今、頼りになるのはその辺に生えている木の実や魚だよなぁ。
とは言っても川も見てないので、木の実しか当てにならなさそうではあるが。
流石に私の技能では食べ物を生成することはできないだろうし、これは地道に探していくしかなさそうではある。
結局収納風呂敷ももらえなかったしなぁ……。
零の地で回収する予定だったのだから仕方がないことかもしれないけど。
「まじでどうしよう……。私ここで死ぬんか……」
未知の土地。
そして食料ゼロ。
ついでに言えば遭難中。
頼りになるのは持っている武器だけである。
なんでいきなりハードコアになっているのだろうか。
あのクソ物め……こんなところに飛ばしおってからに……。
せめてもっと人の居るところに飛ばしやがれよマジで。
心の中ではそう言って愚痴をこぼしているが、今の状況では口にするだけで体力を消耗しそうなので、殆ど喋ることなく歩き続けている。
これは先ほど決めた棒の行き先は間違いだったかもしれない。
そう思ったので、とりあえずもう一回棒を倒して行先を決める事にした。
このままでは流石にどこにもたどり着けそうにないと思ったからだ。
棒を地面に垂直に立てて……パッと離す。
すると、今進んでいた向きから左の方向に倒れた。
私は棒を拾って、棒が示した方向へとまた歩く。
遠くを見てみはするが、結局鬱蒼と茂っている森しか見ることができず、思わずため息が出てしまった。
流石にこれは堪えそうだ。
何か地形を見渡せる能力とかがあったらいいのだが……。
「……ん? それって何とかなるんじゃね?」
風を使えば自分の体を上にすっ飛ばすことができるのではないだろうか。
そうすれば周囲の状況もわかるはずである。
着地はまた風の力を使えばいいことだし、何とかなるはずだ。
そうと決まれば即実行。
地面から風を起こして俺の体にぶち当てる!
加減は……おそらくこんなもん。
「のおおおおおおわああああああ!?」
加減を完全に間違えてしまったようで私は空高く飛ばされてしまった。
体がぶんぶん回転してしまって周囲を見るどころの話ではない。
とりあえず回転を止めるために逆方向に風を発生させて回転を止める。
だが今度は逆回転してしまった為、また逆に風を起こしてその回転を止めた。
次は回転しないように風を調整して体を安定させる。
すると空中に浮遊することができていた。
「おお!! 私空飛んでる! おおぉ~こんなことできんのか~!」
だが少しでも気を緩めると、体制を維持できなくなってしまうのでこれは集中しなければいけない様だ。
自由に飛び回れるようになるのは相当な時間がかかりそうだ。
だが、これで周囲の地形を見て取ることができそうだ。
周囲をくるりと回転して見渡してみると、一つの方向に大きな壁があることに気が付いた。
どう見ても人工物であるし、あそこに人がいるのは間違いない。
とりあえずあの方角へと行ってみることにしよう。
ついでに空を飛んでいく。
めっちゃ楽しいけどこれ……人が見たら驚くよなぁ……。
あの壁の近くに行ったら降りることにしよう。
とっと!
制御が……せっ、制御……制御がむずかしいなあああああああ!
私は飛んでいこうとした瞬間に地面に落下したのであった。




