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混餓転生  作者: 真打
第二章 波達
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2.1.報告

第二章です!


─Side柳刃─


 やられた。

 肆の地にいる混餓物を完全に侮っていた。


 俺の攻撃が効かず、黒珠もそれに驚いていたようではあったが、あれは恐らく伍陣の風でなければ太刀打ちできない奴だろう。


 だが今はそんなことより、天地君を助け出さなければならない。

 とは言っても奴はどこに行ったのかもわからないし、何処に天地君を持っていったのかもわからない。

 分かっていることといえば……。


「くそ! やっぱり駄目か!」

「もう逃げられちゃってるみたいね」


 黒珠の感知能力でも引っ掛からないところを見るに、相当遠くに離れてしまったのだろう。

 それか感知を阻害する能力を持っているかの二択ではあるが……前者の方が可能性は高いだろう。


 だがこんなところでじっとしていても意味がない。

 今は天地君を探すために行動を起こさなければならないが……天地君の能力は強大だ。

 なので危ない目にあっても自力で何とかできる可能性がある。


 それに、俺たちが探しに行ったところで出来ることなどほとんどない。

 何処に居るかもわからないので、無暗に探し回るのは時間の無駄だ。


「仕方ない……黒珠! クルセマ君! まずは零の地に戻ってこのことを風に報告するぞ!」

「うえぇ!? 天地兄ちゃんはどうするのさ!」

「天地君なら一人でも生きていける力がある。それに、奴もさっきの話し方からして殺しはしないだろう。だからまずは増援を呼んで捜索に当たったほうがいい。また奴が出てきたら俺たちでは太刀打ちできないから、伍陣の風に捜索を協力してもらおう」

「わ、わかった!」


 今俺ができるのはこれが精いっぱいだ。

 浄化遺物である天地君が攫われたとあっては、風たちも黙ってはいないだろう。


 問題があるとすれば……帰り道である。

 あと少しの所まで来て入るが、仮に巴口が襲ってきたら相当な時間を消費してしまう。

 それは何としても避けたい所ではあるが、見つけてしまえば必ず対応しなければならない。


 しかし、鈴の風が拾の地に向かっているのを見たことだし、その可能性は少ないと思いたい。


「いくぞ!」

「うん!」


 何はともあれ、この現状を報告するために俺とクルセマは同じタイミングで走り出した。



 ◆



「……なんと……」

「んぁ? どした花葉ー。なんか悪い事でもあったか?」


 花葉と呼ばれた男は植物を撫でながら驚いた表情をしていた。

 その表情を見たもう一人の男は、これはただ事ではないかもしれないと思い、寝転んでいたソファから降りてその植物の前まで近寄った。


「花葉。お前何を見た」

「浄化遺物……のことは荒政も知っていますよね」

「あー……今柳刃がこっちに送ってきてくれてるって言ってたな。それがどうした」

「攫われました……」

「なにぃ!?」


 花葉のその返事に荒政と呼ばれた男は思わず叫んでしまった。

 しかし、花葉の能力はその長けた情報収集能力にあり、それが間違いではないという事はよくわかっていることである。

 だが間違いでないという事は、それが緊急事態という事になってしまう。


 浄化遺物がもし波達に奪われでもしてしまった場合、取り返しのつかないことになってしまうからである。


「花葉ぁ! 柳刃の様子は!?」

「今こちらに向かってきています。という事はもうすでに攫ったやつは近くにいないのでしょう」

「何故分かる!?」

「黒珠の感知能力の高さを知らないのですか?」

「知らんな!」

「いいから早く報告しに行ってください! 私は柳刃君をサポートします!」

「わぁったよぉ!」


 荒政はすぐに部屋から飛び出して周囲にいるはずの風たちに報告をしに行った。

 花葉はそのまま柳刃のサポートに回ることに徹し、巴口と鉢合わせしないように能力を通して柳刃に話しかける。


「柳刃君、聞こえますか?」

『!? 花葉先生!』

「状況は把握しています。その前に草を」

『はい!』


 柳刃はその辺にあった草を根っこごと抜き取ってそのまま懐に仕舞った。

 花葉の能力は草木を操る能力であるため、話しかける対象が離れてしまえば、話しかける草木を変更しなければならない。

 なので一掴みほどの草を所持しておくことで、花葉は常時その草から柳刃に話しかけることができるのだ。


 それを知っていた柳刃は、言われる前に草木を掴みにかかっていたのだった。


『おっけいです!』

「有難う御座います。状況を説明してください」

『浄化遺物である天地君が混餓物に攫われました。混餓物は恐らくロッズアイク! 肆の地の混餓物です!』

「伍陣の風でないと手が出せそうにないですね……暇なのは五十三さんでしょうし、私から連絡しておきます」

『お願いします! 俺はどうしたらいいですか?』

「ロッズアイクが出現している以上、少人数での行動は愚策です。零の地でパーティーを構成しますのでこのまま戻ってきてください」

『分かりました!』


 そこまで話して花葉は柳刃との通信を切った。


 花葉が覚えている限り、今活動が可能な伍陣の風は三人。

 なので、その三人を中心に三つのパーティーを作って捜索をすることにすると考えた。


 それに、波の地にもあの二人が出動している。

 なのであの二人にも話を付けておいた方がいいだろうと思った花葉は、すぐに二人を捜索する。


 能力を使えばそんなに難しい事ではないのだが、どうにもあの二人の足取りは掴むのが難しい。

 探すこと数分、ようやく見つけ出した。

 すぐにその辺にある草を使って通信を試みる。


「谷塚さん。聞こえますか?」

『む、花葉か』


 無事につながったことに安心した花葉は、一度息をついてから今までのことを報告する。


「浄化遺物が混餓物によって攫われました。ロッズアイクだそうです」

『……何つーめんどくさい……。で、俺たちはどうすればいい』

「もしかしたらそちらにいる可能性もあります。なのでその浄化遺物の詳細を説明しますので、捜索をお願いいたします。谷塚さんであれば簡単でしょう?」

『……まぁな。で、詳細は』


 それからは今まで見てきた天地の姿や、能力などを谷塚に説明した。

 これでとりあえずは混餓物の地の捜索に集中できるだろう。


 だが風たちの地にはいないような気がしていた。

 零から拾の地を探しても恐らく浄化遺物は見つからないだろう。


 とは言っても、すぐに波の地に捜索に行くのは危険すぎる。

 谷塚には悪いと思っていた花葉ではあるが、谷塚がその位置を確実にこちらに報告をしてくれなければ、こちらから援軍はだせないのだ。


「申し訳ありません」

『しゃーねーよ。とりあえず俺は捜索に行く。こっちからの連絡を待てよ』

「善処します」


 そう言った後、通信は強制的に切れた。

 おそらく谷塚が通信に使っていた草を千切ったのだろう。


 全く荒い扱い方をすると思いながら、花葉自身もこのことを風たちに報告するためにその部屋を出て外に行くのだった。



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