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混餓転生  作者: 真打
第一章 人間の世
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1.29.反省会


「はーい、反省会しまーす」

「「はーい」」

「はいはい……」


 今私達は先ほど模擬戦をした辺りで、円を描くように座っている。


 戦闘訓練の後の反省会は……まぁ大切なことなのだろう。

 相手の悪い所、いい所を言い合えるし、何よりそれによって改善点を見つけることができる。


 だが私は今回、初めての模擬戦という事であまりいい動きはできていなかったと思う。やったことと言えば向かって来た氷をひたすらに打ち壊し続けただけだ。

 個人的には良く動けた方だとは思うのだが、それでもまだ実践経験は少ない。

 絶対に何かを指摘されると覚悟し、司会役の柳刃が口を開くのを待った。


「まずはクルセマと東雲兄弟の模擬戦ね。クルセマは縛りのある状況でよく勝てたと思うよ。今回は土だけで戦うって縛りだったね」

「うん、でも得意な奴だったから何とかなったよ」


 いつの間にそんな縛りを設けていたのだろうか。

 他に何を使って攻撃するのか期待していたが、土地しか使わなかったのにはそういう理由があったようだ。


「だけど最後の方、随分と危険な動きをしていたね。土の中に隠れたのは良かったと思うけど、一歩間違えたら生き埋めだったんだよ? ああいう戦い方は相手が格上の場合に使うような動きだ。今度から土に潜るのは無しね」

「わー! また縛りが増えたー!」


 なんとなく、クルセマが模擬戦を嫌がっている理由がわかったような気がする。

 戦う度に柳刃は注意をしてくれるが、次から次へと縛りを設けていくようだが……なぜそこまでして縛りを設けるのだろうか。

 クルセマが自由に戦えれば、俺よりも強いはずである。

 周囲には土をはじめ、石や草が転がっている。これらを使えば戦闘を有利に進めれるのに、わざわざそれを縛って模擬戦をするのに意味があるとは思えない。


 仮にそれが東雲兄弟の為であったとしても、それではクルセマが混餓物と戦う時に本当の力を発揮できなくなってしまうのではないだろうか?


「なぁ。なんでクルセマの力をそこまで縛るんだ?」

「いい質問だね。それにはちゃんとした理由があるんだ。これは対人戦闘用の戦い方で、クルセマには今それを覚えてもらってるの。勿論混餓物と戦う時はそんなもの必要ないから自分の持ってる能力全部使って戦ってもらってるんだけどね」

「対人戦闘用? 波との戦いで使う奴のことか」

「ピンポーン」


 クルセマは本来の力が失われているとはいえ、元浄化遺物。

 クルセマが一番得意とするのは土を操る事なので、土だけを操って浄化遺物であるとバレないように日々訓練をしているのだとか。


 確かにクルセマが土以外に物を操ったところは見たことがない気がする。

 混餓物と戦う時も土を使っていたが、これは単純に使いやすいからと言うだけで使っているのだろう。

 もしかすると土以外の物は補助的なものとして使っているのかもしれないが……。


「波達は力を失った浄化遺物でも何かしらに使うようだからね。クルセマは随分力をなくしているけど、浄化遺物には変わりないんだ。だから土を操る風、土の風として活動しているんだよ」

「へー」

「あー、天地兄ちゃん興味なさそう」

「いや、クルセマが土の風ってのは少し驚いたぞ?」


 クルセマが土の風であれば、私は風の風になりそうだ。

 頭の中で復唱してみるが、やはり響がよくない。もう少しかっこいい感じの名前にすることはできないのだろうか?

 もっとも浄化遺物ってくくられてしまいそうではあるのだが。


「で、今度は東雲兄弟ね。一番の課題は氷塊の制作速度だね。作ってしまえば二人の能力はとてもいい物だが、作るまでに時間がかかってしまったらその間にやられちゃうぞ。まぁこれは藤屋君と戦った時にわかったと思うけどね」

「「時間かけると強いのができる。短くすると、弱いのできちゃう」」

「もし、あの戦い方を極めるのであれば、辰馬がもっと速く水を作り出せるようにならないといけないね。主軸は辰馬なんだし、もっと水を作り出す速度と操る制度を向上していかなきゃ、いつまでたっても巴の拮抗から出してもらえないよ」

「うー……」


 今回は珍しく辰馬だけが俯いて唸った。

 確かにあの攻撃は強力で安全な戦い方であるし、援護には最適な攻撃方法だと言えるだろう。


 しかし、柳刃が指摘した通り、攻撃準備に時間がかかりすぎているのは事実だ。

 それに作った氷塊を使い切ってしまえば、また作り出すのに時間がかかって守りが薄くなる。

 あの攻撃は攻撃をし続ける事によって、自らを守る戦法であるため弾切れを起こしてはいけないものだ。

 そのおかげで私は勝つことができたのかもしれないが、柳刃からすればまだまだ及第点、といったところなのだろう。


 厳しい先輩ではあるが、注意する点に関してはとても的確だ。

 そして今度は私に向きなおった。ついに私が評価されるようだ。


「藤屋君はね……」

「お、おう」

「良くて加減できた、と言っておこうかな。道中混餓物相手に容赦ない一撃を繰り出していたから正直心配だったんだけど、攻撃は的確に狙えていたし、得物を使った動きもよかったと思うよ。訓練の成果が出てきていると思うし、威力も十二分だね。欲を言うのであれば東雲兄弟が二回目に展開した氷塊を全て撃ち落としてほしかったけど、初めての模擬戦であそこまでできればいい方だね」


 てっきり手厳しい言葉を投げつけられるかと思ったが、逆に結構普通に褒められて驚いてしまった。

 そんなに良く動けた自信はなかったのだが……まぁ柳刃がそう言うのであればそれなりにできていたのだろう。


「ただ」


 柳刃はそう言うとズイっと顔を近づけてくる。その顔は少し恐ろしい。


「あの得物を作り出す能力。あれは見られちゃいけない。クルセマ君の真似をしたのだろうけど、君が使っていいのは風だけだ。それだけは覚えておくように」

「……おう……」


 ふっつーーに怒られた。

 武器を作り出すのも、私が浄化物だとバレる要因になるらしい……。


 風は基本的に一つの能力しか持っていない。

 工夫して様々な能力を所持しているように見せかけることもできるが、結局は一つの能力から作られるものであるため、私のように風を操っているのに地面から武器を取り出すといった行為はしてはいけないと注意されてしまった。


 確かにそのことを波が認識しているのであれば、確実に目を付けられてしまうだろう。


「どうしても使いたい時は、事前に準備しておくことを強くお勧めするよ」

「気を付けるわ……」


 とりあえず初めて作ったあの棒は今でも持っているので、これを愛用していこうと思う。

 出来れば鋭利な物にしたかったけど持って回るのは危険なため、これは防衛用であって攻撃用ではない、という事にしておく。

 攻撃に転じたとしても、これであれば致命傷は避けやすそうだ。


「しかしこれ……何で作られてんだろ」

「天地兄ちゃんはどんなのをイメージしてそれを作ったの?」

「あー、とにかく氷塊を砕けるような硬いものをイメージして作ったな」

「天地兄ちゃんが硬い物をイメージしたんだったら……どんな鉱石が使われているかわからないね。黒珠はわかるー?」

「先生に見せてみなさい」

「そのノリ、ウザイからやめろくそ珠」


 そう言って黒珠に私の持っていた棒を渡した。

 黒珠がそれをパクッと食べてしまい、体の中に仕舞い込んでしまった。


「むぐむぐむぐ」


 黒珠の中に入って棒がどんどん短くなってきているのがわかるのだが、これは中に入っている鉱物を解析するために少し齧っているのだろうか?

 あれを齧れるとは思えないのだが……混餓物なら何でもありなのだろう。もう驚かない。


 しかし……齧っているにしては長い。というか二メートルあった棒が半分の長さにまで小さくなっている。

 これはまさか……。


「え? 食ってね?」

「食ってるよ? 多分もう帰ってこない」

「私の愛棒!!!!」


 そんな簡単に死刑宣告されるなんて思ってもみなかった。

 短すぎる……短すぎる生涯だった。ありがとう愛棒。お前のことは忘れない。


 黒珠てめぇ覚えてろよ。


「解析できたよ」

「……まぁいいや……じゃあ早速何が入っていたかを教えてくれるか?」

「あの中にはねー、地玉(ちぎょく)が入ってたね。てかあれぜーんぶ地玉」

「「「「は!!?」」」」

「え、なに……」


 地玉ってなんですのん?

 柳刃やクルセマはともかく、東雲兄弟までもが驚いているのでびっくりしてしまったが……その反応を見るに相当珍しい物のようだ。


「えっと……地玉ってなんだ?」

「「地玉は地ごとに眠っている幻の鉱石。ここで作られたのでであればそれは地玉・巴(ちぎょく・ともえ)っていう地玉」」

「藤屋君……君はなんでそう規格外なものを作り出してしまうんだ……。いいかい? 地玉・巴はこの地でしか作られない珍しい鉱石なんだ。言ってしまえば混餓物なんだよ。地玉にはそれぞれ能力があるらしいんだけど……まだ解明されていない」

「まじかよ!? 生きてんのあれ!?」

「「生きてる」」

「うっそだろおい……」


 もう驚かないと思っていたが……隙あらば出てくる混餓物には対処することができない。


 あの棒をもう一度作っておきたかったが……流石にあれをもう一度作るのは気が引けたので、いざという時に作ることにする。

 能力はとても気になるが、その能力がわからない状態で作るのは危ない。いきなり炎が出てきたら洒落にならん。


「ま、あれはあんまり作らないようにね。イメージをもう少し柔らかくするとかしたらいいかもしれないからね。よし、じゃあ今日は帰って休もうか」

「さーんせーい」

「「さんせー」」


 賛成多数で宿に戻ることになった。

 それには私も賛成なので、皆で宿に戻ることにした。


 何故か東雲兄弟も私達についてきたが、私達の泊っている宿に東雲兄弟も泊りたいらしい。

 宿屋の店主に話をすれば、別に問題がないという事だったのでクルセマと同じ部屋に泊まることになった。


 言葉は通じなくても近い年齢であるため、一緒に居ればそれなりに楽しいのだろう。

 三人共楽しそうで、先ほどまで模擬戦をしていた戦士とは思えない。


 この光景がいつでも見れればいいのにと思いながら、自分の部屋に入ってベッドに体を沈めるのだった。


実は宿に向かっている時に黒珠を踏みつけました。意図的に。 by藤屋

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