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混餓転生  作者: 真打
第一章 人間の世
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1.10.風達


「お前かー!? ここを荒らしている波って奴は!」


 うっわ。明らかに面倒くさそうな奴がやって来たな。誰が波だ。こちとら転生して一日目だわ。


 とりあえず寝転んだ状態で襲われるのも敵わないので起き上がって話を聞いてやることにする。


「えーと? とりあえず私は波ではないけどあんた誰?」

「波じゃないだとぅ!? じゃあさっきの爆音は何だったんだ!? ていうか人の名前を聞く前に自分の名前を言え!」


 言ってることが滅茶苦茶だ。俺が訪問したわけではないのに名前を先に言えとは……クルセマの言うとおり結構馬鹿かも知れない。言いたいことはあるけど面倒くさそうなので言う通りにしてやることにする。


「……あーまぁいいや。私は藤屋。で、あんたは?」

「俺は大峰(おおみね)だ! さっきの爆音を聞いてすっ飛んできた! 波の襲撃の可能性があったからな!」


 いちいち大声で言わないと気が済まないのだろうか? 声が大きすぎるので耳を塞ぎたくなるレベルだ。

 常にふんぞり返って上から目線で話してくるので地味にイライラする。結局何しに来たんだこいつ。


「残念ながらその波とか言う集団は来てないよ。でもさっきの爆音は私のせいだ。騒がせてしまったのなら謝ろう」


 て言うかもうこれで可及的速やかに帰っていただきたい。説明するのが面倒くさい……。


 大峰は周囲を見渡して首をかしげている。本当にこいつは人の話を聞く気があるのか疑問なのだが……。その態度は何なのだ。


「……にしては……爆心地がないな……」

「あ。それは私が直した」

「え。あ、え? あ、そう……? いや、は!?」

 あ。やっべ。余計なこと言わなければ良かった。


「おいおいそれはどういうことだ!? そんなことができるのはクルセマくらいなものなんだぜ? お前なんかができるわけないだろ?」


 大峰は私に詰め寄ってきて問い詰めてくる。近い。しかしそう言われても実際にできてしまった。私にもこんなことが出来るとは思っていなかったので少し驚いてはいるのだが……。まぁ勘違いしてくれているならそれはそれでいい。とりあえずここはクルセマが直したということにしておこう。


「あーうん。クルセマが直した」

「えっ」

「だよな! そんな嘘つくんじゃねぇよ~」


 マジで信じたのか? 騙されないぞ? ……いや、だがなんか上機嫌になっている……。え? 本当に信じ込んだのか?


「ね、馬鹿でしょ?」

「ああ、そうだな」


 クルセマの言葉は大峰にはわからないらしく、何を話しているのかはわからない様だ。良かったなクルセマ。怒られなくて。多分こいつ短気だから悪口言った途端に殴りかかってくるぞ?

 だがこの大峰という人物はクルセマの言う通り確かに頭が悪いらしい。それは今の短い会話の中で嫌というほどわかった。逆にここまでの短い時間でそう思わせることができる大峰はある意味天才なのかもしれない。


 そうして数秒の時間が流れるがなんとも気まずい空気になってしまった。別にこいつと話したいことなんてないし、話したとしてもあんまり良い情報とかもってなさそう。

 とはいっても聞くこともほとんどないんだけどな。何にもないならそれでいいし。


「──ぁ」

「? なんだ?」

「んー? 天地兄ちゃんどうしたの?」

「いや今なんか聞こえた気が」


 随分小さな声だったがいったい何だったんだろう。座った状態のままで探してみるが特に変わった様子はない。首を傾げているとまた先ほどの声が聞こえた。今度は数倍大きく。


「ぉぉぉぉぉおおみねぇえええ! ごらぁあああ!」


 先ほどまで何処にもいなかったと思ったのに、男の人がいきなりに出現して大峰の腹をぶん殴った。大峰は全く抵抗できずに思いっきりぶん殴られてしまい、放物線を描くことなく真っすぐ吹っ飛んで木に直撃した。


 飛んできた人物の腕は赤く燃え上がっており、顔は怒りの形相を浮かべていた。目は細く、何故か僧侶のような見た目の……革で作られた服を着ている。それもジャンパーの中に。なんだかセンスを疑うような服装をしている。


 細めの男性は赤く燃え上がった腕の火を消すように横に凪ぐ。すると火は消え去って人間らしい人の肌が現れた。本当に燃えていたわけではない様だ。


「フーシ……」

「……クルセマ、あれ誰?」

赤山(せきやま)だね……仲悪いんだよ大峰と赤山って」


 相手に超えないように小声でクルセマに聞いた。しかしクルセマは声を抑えることなく普通に俺の質問に答えてくれた。いくら言葉がわからないって言ったって名前くらいは聞き取れるだろうから少し自重してほしい。


「爆音が聞こえたからって何の考えもなしに突っ込むな馬鹿! 確かに波の襲撃の可能性は高いけど爆音だけで判断するとは何事だ! まず仲間を置いていくな!」


 うわーお優しそうな顔してめっちゃ怒るじゃん。本当に仲が悪いんだな……。


 赤山は言いたいことだけ言って今度はこちらを向いた。私が何か言われるということはないと思うが、先ほどの怒り具合を見てしまったのでちょっと引いてしまう。

 だが赤山はパッと怒りの表情から一変して謝罪をしてくれた。すごい勢いで私に向かって頭を下げる。


「すまん!」

「えっ」

「あのバカが失礼なことをしていなかったか!?」

「え、いやあの大丈夫だ──」

「後でしっかりシバいておくからこの通り許してやってはくれないか?」


 話聞いてくれないんだけど。てかあれ以上シバくの? ちょっとやめておいた方がいいのではないかと思うのだが……。でも別に私に何かされたわけではないので……許すとは違うかもしれないけどとりあえず許しておこう。


「あ、え、はい」


 その言葉を聞いて安心したように頭をあげてくれた。だがすぐに何かハッとして急に姿勢を正した。


「す、すまない! 自己紹介がまだだったね。僕は赤山啓二(せきやまけいじ)。爆の風だよ」

「ああ、藤屋天地……だ」

「みない顔だね……新入り? ってわけじゃなさそうだけど……」


 そうか……一番最初から一々説明していかないといけないのか。面倒くさいな……。でも説明しておかないとな。若い人なら転生とかパラレルワールドとかも理解してくれるだろうし、この人は……うん、それなりにまともそうだから話しておこう。


「えーっと、信じられないかもしれないけど、今日転生した浄化遺物です」

「へー…………へ? え? 浄化遺物? 今更!?」

「おう、新しい反応」


 今更とはどういう意味だろうか。と思ったけど、風達にとって浄化遺物はもう必要のないものだったはずだ。今更と言うのはそう言うことだろう。

 赤山は随分と動揺してしまっているようだ。私とクルセマを交互に見ている。クルセマが元浄化遺物だということは知っているのかもしれないな。


「え、浄化遺物って……もう作られることがないはずじゃ……ないの?」

「そうなのか? っていうかこの世界のことについて俺は全く理解がいないんだ。教えてくれないか?」

「そ、そうなのか……わかった。僕もちょっと君のことを聞きたいしね」


 とりあえず腰を下ろせる場所に移動して、いろいろと聞いてみようと思う。藤のじいさんはほとんど何も教えてくれなかったからな。

 移動しようとしたときクルセマが土で椅子を作り上げてくれた。気が利くじゃないか。三人はそれに腰を下ろして会話をすることになった。



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