貮
暗い!そして長い!ごめんなさい!!
雨が降らない5日程で皇都は粉を吹いたようにそこかしこが白茶けて見えた。
郊外から持ち込まれる水売りの荷車の数も減り、都の人々は干上がった財布に頭を悩ませながらも水を買う。水売りも水売りで商売物の水を汲む水場の干上がりが目に見えてきたのか、傷んだ水を売ってお縄を受ける者も出てきた。
干魃の年ではないと占が出たが皇国は早急の対策を迫られていた。
そんな最中の皇子の誕生であった。振る舞い酒と新鮮な水が国中から届けられ人々に振る舞われた。そのお陰か批判の声は鳴りを潜め、何よりも皇帝や皇子を言祝ぐ声は一晩中止む事は無かった。そんな歓喜の余熱も覚めやらない中、一人の少女が国軍の門を叩いた。
兵士という徴兵ではない志願制の専門職は幹部職以上の者以外は殆どが平民である。
食い詰めた者や農村から来た跡継ぎ以外の若者がその有り余った体力を質に志願しにやってくる。
日を決めて募っても気にしないで集まるものだから、入隊試験はその場その場の裁量で最上位者の判断に委ねられている。
元々の専門職である衛士は国軍の将官を兼ねている者も多く、有り体に言えば近衛衛士以外は常に将官としての職務が優先される立場にいた。
「おいおい~。よりにもよって俺が居るときに来るなんて嫌がらせかよ」
大柄な身体を二つに折って頭を抱える衛士が一人。幹部詰め所の二階から見下ろす『幻』に嘆き節が口を吐いていた。
丁度書類を持って入ってきた女衛士が何やっていると眉を顰めたが、衛士の手招きにほいほいと下を覗き込んで大いに後悔した。
「な、な、なんでこんな場所に!!
今?皇子は?何してるの後宮!!って、今は皇妃宮か」
飛び上がって右往左往する同期に、先の衛士・流風は長い溜息を吐き出して宥めるフリをしてトドメを刺す。
「以前から、次に産んだらお褥すべりをして国軍の兵士になるって宣言してたからな。
まあ、お前は出なくもいいだろう。
嫌だが、ものすごく嫌だが、今この時点で俺が最上位者だからな、俺が出る。
が、どうせ兵士に女は前例がないからってお前も借り出される事は間違いないからな。そのつもりでいろよ」
喜んだり驚いたり突き落とされたりと、女衛士はぐったりと床に懐いて流風に突っかかる気力も無い様子だった。流風の言うことは間違いないだろう。それならばお互い協力関係でいなければならない。そんな打算もあった。
「そうとう使うらしいからな。合格は陛下の横槍がなくても間違いない。
俺ののんびり兵士鍛錬記は潰えた。厄介事の予感しかしねえなんて・・・厄払いしてえ」
激しく本音しか吐かない口を縫ってやりたいと思うが、己もそれが本音だと思うのでこうなったら受け入れるしか道はない。女衛士は懐いていた床から身を引き剥がし持っていた書類を流風の目前に叩き落とす。
「暇があるうちに目を通して印を押せ。逃げてても休暇が無くなるだけだからな」
こほんと居住いを正し、女衛士は踵を返す。固まる流風に視線を遣ると頭を切り替え部屋を出て行く。
残された流風は今まで置物状態で嵐の去るのを待っていたお付きの文官に目を遣る。ふるふると首を振る青褪めた文官は結局すぐに呼び出されて部屋を出る流風に書類の束を投げ出されるのだが、意思表示だけはしたいのだった。
後宮には現在2人の側妃が在った。
先日第2皇子を産んだばかりの一妃以外の二人のことだ。
数日後の『お褥すべり』発表を控え、皇妃宮にて先に生まれた第1皇子や皇女たちと共に静養している一妃は後宮の自室を暖めたことが無い。腹の空く暇が無いほどに立て続けに皇帝の情けを受けて4人もの御子を産んだ寵妃だ。年も若く皇妃も後ろ盾となっている。
本来ならば手も付いていない他の側妃に対し圧倒的な格差を鼻に掛けても良いくらいなのに、後宮に同じく上がってきた二妃三妃とは先ずもって交流自体が無かった。二妃三妃からすれば付き合いが無い為にその影すら踏むことは無かった為だ。
側妃同士の交流会と銘打ったこの茶会にも一妃は一度も顔を出したことはなかった。
(茶番よね。茶会だけに?ププッ)
おすまし顔で裳裾を整える二妃は笑いのツボまで父親譲りという豪商の娘だ。
その名を回鈴。知られたことではあるが、領地を持たない下級貴族が多い商人町衆には当然一族名を称することが出来る。回鈴の父親もまたその商人町衆の一人だった。
前提として、高位貴族は直接平民とやりとりをすることが無い。ために皇都における商人のヒエラルキーは最低が低位貴族位を持つと言うことになる。
回鈴である。艶やかな黒髪と小作りの顔は年若い年齢をより幼く見せている。これで皇都一との呼び声も高い豪商の父が認める商人の一人だ。
成人になれば仕度金と補佐を付けられ商団を作る。男女関係なく家から出され結果を出さねばならないその試練に、成人前の12才から衣装小物を扱う衣扱い『白鈴堂』を立ち上げた回鈴は、今では貴族家との取引もある勢いのある若手商団として名を馳せている。
中でも白粉小物と衣装の流行を生み出すその手腕には定評があり、国外からの渡来物の品揃えと目利きの高さに信を置く高位貴族もあった。
そんな商団の長である回鈴が何故側妃として後宮に上がったのか。有り体に言えば、煩わしさと命の危険からの避難に過ぎない。
凡庸だが長子という自己顕示欲だけは肥大した一の兄の執拗ないびりと、小知恵だけはある二の兄から受ける商団への洒落にならない妨害行為と物理的な命の危険。うんざりと捌いては来たが、それすら静観している父の視線に対策を講じていた矢先に、側妃への打診が来たのだ。
これは一の兄が補佐に吹き込まれた話で、自分で考えたのならば父も見直したかも知れないのにねと憐れみながらも飛びついたのだ。
二の兄は側妃になると言う意味を正しく把握し悔しがったが、回鈴の不在に頭を回す事に切り替えたらしい。和やかに見送る兄二人と、皇帝を釣ってこいと激励する父親という何とも言い難い見送りに残される補佐達の力強い頷きを確かめ回鈴は後宮に上がった。
『皇帝に5年情けを受けられなければ後宮を下がることが出来る』
先に述べた理由以外の余得と言えばこれにつきる。
この一文、逆に言えば一度でも手を付けられば一生後宮から出られない。皇帝が報償として下賜するという例はあるが、基本そう定められている。
『下がる者は皇帝に一つだけ望みを乞う事が出来る』
回鈴が狙うのは更にこの一文だ。一時避難と皇帝との縁。商人として再と無い好機さえ掴むことが出来る。残してきた店の支配人と商団の副団長には入宮前に『商機アリ』とだけ言い残したが、今のところとても良い仕事をしてくれている。
正妃入宮の衣装や皇妃制定の式典の衣装。第一皇子の産着に続いて御子全ての内着には力を入れた。
皇都で一番の宣伝媒体は現在皇妃と御子達なのだ。
恐れ多くも皇族に流行発信に一役買って貰らい、衣食住と安全の保証も得られ、何よりも情報と国の中枢との縁を得ることが出来た。今頃頭を掻き毟り悔しがる兄たちを思うと長年の不自由の溜飲も下がるという物だが、その兄たちもそろそろ尻に火が付いた頃では無いか?
父は『親子の情』で目を曇らせる人物では無い。血を分けた子であっても、断ずる。
事前に自分は跡目を継ぐことは無いとはっきりと告げてあるし、父も娘が自分の商団を継ぐ事は無いと知っている。塩扱いの大店は親族の中で認められた者が継ぐ。兄たちが継ぐことは無いだろう。それだけは分かっている。
「ねえ!聞いているのかしら!」
癇性な声が回鈴の意識を浮上させる。どうやら我知らず物思いに耽っていたらしい。
「申し訳ありません。聞いておりませんでしたわ」
正直に微笑みながら応える回鈴に相手はぐっと声を飲み込む。
後宮のお茶会。しかも側妃同士の交流という茶番に付き合わされてるんだよと物言う笑顔に、反論する言葉が無いところに己の学の浅さを恥もしている。
回鈴は相手の動揺ぶりに『可愛いこと』と呟く。
「三妃様には何をお心掛かりに思われているのか、率直にお話しいただけないでしょうか。
第二皇子誕生の言祝ぎもまだ数日前のこと。皇都もその熱の覚めやらぬ今、後宮に控える私たち側妃に求められるのは『待機』のみですわ」
繻子の団扇で口元を隠し、言わずもがなのことを敢えて言う。面白尽くで三妃の言動を煽る。面倒な人間を押しつけられる恨みはその元凶に返す。それに限ると思っている回鈴だった。
一癖どころか何癖もある二妃の明らかな揶揄に、三妃正恵は怒りよりもじくじくとした妬ましさのような物を覚えた。
この皇国に於ける流行の発信者でもある回鈴は、同じ側妃で無ければ無邪気に憧れの存在としていられた人物だ。
正恵の実家と言えば、貴族位はあれど平民が呆れるくらいの貧乏ぶりに、迎えに来た後宮の官が実家に辿り着くまで何度も家の前を迷っていた事は近所連の語り草にもなっている。朽ちていたとしても門を構えられない程の貧乏貴族は我が家のみと言う理由からだった。
回鈴の実家は豪商で貴族位は同じでも、父親の当主自身は一代伯爵位を賜っているほどの傑物。本人は若手商人達の中では一歩抜きん出た存在だ。
足を悪くし書では一廉の人物と評される父親は、5人の子を持つ一介の小役人だ。
母親を亡くした後は弟妹と身の回りのことにさえ疎い父親を抱え、正恵は一人何役も熟して家を守ってきた。それ故に文の家にも拘わらず必要最低限の文字と算術を独学したのみで、日々を内職と家族の世話に費やしてきたのだ。
何か言いたげな父親には何も言わせず、心配するすぐ下の弟には出世してねと発破をかけて、近所の女衆には金持ちの縁談話を乞うては日々を働きづめに暮らしてきた。
もうそろそろ適齢期も近付き、弟たちの迷惑にならないように、父の助けになるようにと縁談を求めた日々の先。その話が舞い降りてきた。
『皇帝の側妃選定』
仕度金は全ての候補者に下賜される。側妃になれれば本人と実家に側妃としての仕度金が払われ、側妃の父親には様々な余得や年金が加増される。
その上で前述の後宮を辞すときの一文。事前に何を望むと問われ、実家への送金が潤沢に出来るようになった正恵は『良き伴侶の紹介』と答えていた。
皇帝の側妃などという恐れ多いことは微塵も考えなかった。況してや次期皇帝の実の生母など夢にも思わない正恵だった。
そして、彼女は恋をしてしまった。
皇帝清以にお目見えした瞬間、正恵は皇帝に恋をしていた。
環境が少女からその感情を奪ってきた。大人になったら否応にもしなければならないと、結婚を家族を守るための契約としか捉えていなかった正恵が、初めて年頃の少女達の持つ感情に晒されたのだ。
『あの方』の手が触れることを想像し、夜も眠れぬ日を過ごした。
慣れない作法や手習いの苦行も、もしかしたら・・・と思うと耐えられた。最早、年季が明けたら縁談を紹介して貰うのだという願いなど忘れ果てていた。
正恵の希望を潰したのは一妃と成った蓮歌だった。
容貌も肢体も肌の白さも、手入れをすることは無かったと言うのに3人の側妃の中で正恵がずば抜けていた。
蓮歌は草原の民の垢抜けなさが目立ったし、何よりものんびりとした性格に独特の訛りが洗練からはほど遠かった。
回鈴は誰もが知る流行の発信者らしく洗練された所作に映える化粧術、裳裾の先まで気を遣われた衣装の見事さで目を引くが絶世の美女かと問われれば、地の顔はどちらかと言えば愛くるしい。
そんな中正恵は、細面で美しい眉を持ち、白く長い首の下にはたわわで形の良い双実を具えている。くびれた腰はプルリとたわわな美尻へと続き、すんなりと長い足は白鹿のように躍動的で好き者で無くても十分男の目を引く魅力があった。
惜しむらくは長年の労働に荒れた手が色が沈着する程に酷く、未だに袖から出すことを躊躇う気の弱げな風情は日頃から女官長から注意を受けている。
他の側妃を見、美しく着飾った己を見た正恵が、恋い焦がれる皇帝からのお言葉を期待することを責めることは出来ない。
後宮に上がり初めて皇帝が正恵の部屋を訪なう夜。
侍女の手で磨き上げられ、教えられた作法を諳んじ、胸を震わせながら待っていた正恵に皇帝から掛けられた言葉は残酷に尽きた。
『お前の望み通りに後宮を下がるときには良い縁を約束しよう。
その時までは思うように過ごしなさい』
何を言われたのか。呆然と見返すばかりの正恵に、気まずくなったのか出された酒に手も付けず皇帝は部屋を出た。
慌てて遠慮していた侍女や女官が部屋に入ると、そこには一糸乱れぬ夜衣を握りしめ見開いた目から止めどなく涙を流す正恵が在った。
それ以来、皇帝の訪いは無い。
それではやはり回鈴なのかと問えばそれも無いと返される。
何のために皇帝は側妃を迎えたのか悩む間に、正妃が皇帝の横に立ち、時を置かず皇妃と成った。
このまま後宮は閉じられるのかと思う頃に側妃の懐妊が発表される。
回鈴の元へ走った正恵が見たものは想定外の物だった。
国の内外から取り寄せられた祝いの品々。やはり回鈴がといきり立った正恵に、溜息一つこぼすと、回鈴は和やかに説明した。
『御子を懐妊された蓮歌様へのお祝いよ。
正恵様の分も用意しているから選んでくださいな』
回鈴の言葉に正恵は絶句する。
自分で無いのならば回鈴だと勢いづいて来たものが、回鈴はきっぱりと否定した。ならば誰なのだと本気で訴えると、回鈴は呆れたように答える。
『貴女や私で無いとしたら後はただ一人、蓮歌様しかおられないではないですか。
めでたきこと。言祝ぎに後れを取るわけには行きません。貴女は余り礼事にお詳しいご様子では無かったので僭越ながらこうしてお品物を準備していたのです。
皇帝陛下の初子、しかも男子に在らされれば下手な物はお目見えさせることは出来ませんからね。
我が商団の総力を挙げて集めた逸品ばかり、どれを選ばれても格と時節に見合った物ばかりですよ』
微笑みながら披露する回鈴の言葉も耳に残ることも無く滑り落ちてゆく。何故何故呟くばかりの正恵に、回鈴は息を一つ置き、正恵の女官や侍女に命じていくつかの品を選んでいく。
後宮が祝賀に浮き立ち国中が沸き立つ中、皇帝の御子のお披露目の宴で女官長や側妃が言祝ぎ全ての官や仕える者が唱和する中も、正恵はまるで夢の中を漂うように過ごした。
時が過ぎ気を取り戻した後、次こそはという淡い期待も続け様の蓮歌の懐妊に打ち砕かれた。
しおしおと後宮の部屋で無為の日々を過ごす正恵に、その報せが舞い込んだのは春も終わる頃のことだった。
「この度の御出産を終えられて後、蓮歌様がお褥すべりをされることは間違いないのかしら」
遠回しに匂わせて直截な言葉は避けて、回鈴に確認しようとしたが見事に撥ね除けられたものだから、慎重に、聞きたいことを直接問う。
気弱にだが自分の意志を見せた正恵に、回鈴はしたり顔で団扇を下ろす。
「それは間違いないですわ」
回鈴には珍しく何も含まない率直に答えを返す
正恵は沈んでいた眼を見開き、ある可能性を妄想する。やや病んだその様に回鈴は再び団扇で口元を覆う。
回鈴は内心迷った。面倒くさい事この上ないこの同輩のこの様に、己のやり過ぎた煽りが僅かでも関わっていることは間違いない。常から女官長からも眼差しによりお控えをと言う意志を受けている。
賢く立ち回り冷めた観察眼で後宮の仮住まいを楽しんできたが、自惚れから足下をすくわれることは避けたかった。また、正恵が愚かな女から哀れな女へと身替わりしたことにも在庫が無かったはずの罪悪感に変じていた。
「三妃様。どれほどお待ち申し上げても皇帝陛下が私たち二妃三妃にお情けを下される日は来ないのですよ」
声音の変わった回鈴言葉に、寸の間正恵は何を言われたのか分からなかった。
徐々に浸透するその意味に、顔は蒼白となりはくはくと息を求めて喘ぎ出す。
「二妃様私から・・・」
三妃付きの女官が申し出る。が、回鈴は手を上げて押しとどめる。
正恵はそのやりとりを見、回鈴の言葉が真実で、それは自分の女官や他の者たちも承知の事実だということに気が付く。
己だけが知らなかった。いや、回鈴の眼差しを見ればそれが知ろうとして来なかった来し方の己を自覚した。
何故?何度も何度も絞り出すように問うた言葉が口を突く。
無音のまま身を捩り震え出す正恵に、女官や侍女たちが取り縋るが払われ悲鳴が上がる。
見栄を張る事も出来ない相手、見てほしい方の目にも止まらないというのに着飾った自分が哀れだった。何もかもが恨めしく憎かった。愛し育んだ弟妹達さえも憎いと、叫んだ。
狂人の加減を知らない力は止めようとする者の身を打つ。唖然と恐れが場を支配していた。
「ごめんなさい」
すっと遠くなっていた耳に、その言葉が流れ込んでくる。
正恵の動きが止まる。
「ごめんなさい」
温かい物に包まれ、いつの間か正恵は床に座り込んでいた。
「貴女の気持ちを考えてあげられなくて、こんなに傷つけていた。
本当にごめんなさい。
後宮は貴女のような純粋な人間が耐えられる場所では無かった。貴女の来し方は知らない。けれど、貴女の『無知』は知っていたのに・・・」
正恵に覆い被さりその身を暖めるように回鈴は語りかける。
後宮の中は涼しと言っても体温を重ねれば流石に暑い。だが、正恵の身体は氷のように冷たかった。
「貴女が実家を助けるためにここに来たのは知ってる。家族のために働いてきたことも調べれば分かる。
でも、正恵という名の少女が内に何を秘めているのか、何を感じるのかまでは分からない。
人は誰しも己を元に考えるでしょう?
私は『生き残る』ことに執着してきた。この耳も鼻もそれだけのために鍛えてきたわ。
・・・誰かを愛することはこんなにも愚かで哀れで・・・愛しいものなのかしら」
最後は消え入るように呟く回鈴に正恵はぼうとした瞳で見つめる。
私は愛されたかったのか。私は愛したかったのか。熱の上がってきた頭でぼんやりと考える。
私は恋をした。この皇国で最も高き存在に。正恵は初めて気がつく。求めても得ることが出来なかった人。私は皇帝に恋をしていた。
「わ・・たし、陛下・・・をお慕いしていたの」
漸く絞り出した微かな声に、回鈴が頷きながら抱き締める。盛り上がった涙は止めどなく流れ落ち、溺れる者のように回鈴に縋り付く。二人の側妃はそのまま長い刻を抱き合っていた。
台風接近!外が煩いです。こんな中15日故か久しぶりに街宣車が高速を賑やかに走っているみたい。主義主張はともかく御奇特様!気をつけて!
皆様も自然災害は避けようもありませんが、ご無事をお祈り申し上げます。
蓮歌以外の側妃ちゃんず。まあ、清以は蓮歌からのお仕置きコースですね。女官長から報告されて、産後の筈なのに大立ち回りの上大説教です。流風は余計な軽口で主を救おうとして巻き込まれかな?
読んでいただき感謝感激!




